CHILL OUT SESSION vol.5 Yuuukizm(Video Creator)×Yuma Konishi/KONY(Journalist/Documentary Filmmaker)
異なるカルチャーシーンで活躍する2名がチルタイムを共有し、お互いのカルチャーや人としての共通点を探す対談企画。リラックスした空間でコミュニケーションを深め、カルチャーの融合、新たなクリエイティブの創出を目指す。
第5弾の今回は、ビデオクリエイター/カメラマンのYuuukizmとジャーナリスト/ドキュメンタリー作家の小西遊馬の2人を迎え、お互いの共通点、また異なる点を探ってもらった。映像という共通のコンテンツを通じ、異なる作品をつくり出す2人が語る映像の本質とは。
Yuuukizm
ビデオクリエイター/カメラマン。
20歳にしてHIPHOPアーティストのMV監督、ストリート系ブランドとのタイアップ、ダンスイベントやアーティストライブの撮影など様々な仕事をこなす。主な監督作品としてはSHINGO★西成『かかってこんかいfeat.漢 a.k.a GAMI』
般若『いつもの道』Sui『Take u away』Queen B a.k.a 君島かれん『Can’t handle it feat.MAYA 』など。今注目の若手プロクリエイターとして躍進を続けている。
Official YouTube https://www.youtube.com/channel/UCyqmfGE5tfziwlR3PQmDIjA
*Yuuukizmの【PERSONAL FILE】インタビュー記事はこちら
小西遊馬/KONY
ジャーナリスト/ドキュメンタリー作家。
「人を動かすジャーナリズム」を掲げ、ドキュメンタリー映像・写真に加え、取材道中の出来事や撮影者自身の日常をInstagramを中心にSNSで発信。
今まで、ロヒンギャ難民や香港デモ、売春婦などのドキュメンタリー映像をを制作し、国内外で賞を獲得。「愛が発生する刹那」を求めてカメラを回し続けている。
Official HP https://adococt.myportfolio.com/
*小西遊馬の【PERSONAL FILE】インタビュー記事はこちら
――お互いに自己紹介をお願い致します。
Yuukizm 僕は本名橋本ゆうきっていうんですけど、Yuukizmという名前で映像制作をしています。PVとか、商品のCMとか、たまにインタビューとかの依頼も入るんですけど、主に9割くらいPVやってます。
KONY 小西遊馬といいます。あだ名がKONYで、ドキュメンタリー作家としてやってます。撮り始めたのはちょうど2年前ぐらいかな。一番最初にロヒンギャ難民っていうバングラデシュの難民について撮って、この間は香港の民主化運動とかを撮りました。今はそんな感じでドキュメンタリーを撮ってて、逆に言うとプロモーションとかそういうの全然わからないし、撮ったことも無いので今日色々聞けたらなと思ってます。
――何をしているか、活動内容について教えてください。
KONY 「いかにして他者の痛みに想いを馳せられるか」っていうこと。その実験かな。そういうことをやってるんだと思う。伝えたいことっていうか…映像を通して実現したいことだな。要は全然知らない誰かの痛みとか悲しみとか願いとか。そういうものを想像する栄養に映像はなったらと思ってるかな。逆にどんな感じ?
Yuukizm PVとか撮るってなると、アーティストいてこそのビデオになってくるんですよね。アーティストの良さをそのまま引き出しつつ、そのファンの人も「おぉ!」ってなってくる映像を作りたくて。個人的には「(自分の味を出して)撮りたい!」っていう欲はあるので、それを作品に埋め込んでいきたいです。なんか3分が一瞬で過ぎるみたいなPVあるじゃないですか、中に入って行っちゃう感じ。そんな作品の量を増やしたいっすね。「Yuukizmが作ってるから見よう」って思ってもらえるようになって、僕もアーティストじゃないですけど僕だけで集客できる人を増やしていきたい。
KONY なるほどね。撮り手にもやっぱり自我があるんだ。PVっていうと音楽とビデオがあるけど、ビデオの重要度っていうのは何%くらい入ってると思う?撮ってて。なんか下手すれば悪くもするじゃん、曲を。
Yuukizm そうですね。(PVは)良くて当然なものではあるじゃないですか、そのファンにとっては。その期待を越えつつ、自分の自我を出せればベストなんですけど。そのアーティストの姿を見れるのってライブ以外だとMVくらいじゃないですか。だから5割以上は大切なものだと思います。
KONY なるほどなー、俺は無いなそういうところは。もちろん似てるところはあると思うんですけど、その「他者を撮る」という側面においては。ただドキュメンタリーを撮る場合においてはこっちに自我は無いというか。(自我を出すことで)、彼らが生きてる社会とか人生とかを歪められないから。でも制作してて“見たいもの”はあるな。例えば、自分自身を愛したりとか誰かを愛したりとかそういう瞬間ってものすごく美しいから、常にそういうものは見たいし、そういう瞬間がドキュメンタリーの中にあるとすごく輝く。人間的になるというか。でも“撮りたいもの”っていうのは無いな。むしろ、そういうのを無くしたいって感じ。

Yuukizm 最初は「行こう!」からなったんですか?「撮りたい!」からなったんですか?
KONY あ、それは「撮りたい」かな。で、気づいた。一番最初に気づいた。こういうの撮ろう、こういうの撮ろうって色々決めて行ったら、「あ、俺最低だな」ってなった。そんなちっちゃな自分のものにはめ込むっていうのは。
Yuukizm たしかに。やっぱ日本にいるからそう考えちゃうじゃないですか。すごいレアだから撮ろう的な。僕もあるんですけど。こうなんか日本のドキュメンタリー見てて思うのは、絶対オチがある。「ホームレスだった人が就職しました!」みたいな。でもそれを望んじゃってる自分もいて。
KONY うん。うん。そうだね。そうだね。
Yuukizm でも海外のだと、ゴミの川みたいな中に女の人がいて「身体痒い」みたいなこと言ってるので終わったりするじゃないですか。
KONY うんうん。まさにそうだよね。それが現実だよね。
Yuukizm やっぱ構成があるわけじゃないからずっと回してなきゃいけないじゃないですか。
KONY そうだね。ずっと回してなきゃいけないし、ずっと感じてなきゃいけないから。だからこう、「自己破壊をどれだけ繰り返せるか」っていうものすごくきつい仕事だなって最近思う。自分の固定概念っていうかそういうものを持って触れられないから。それはめちゃめちゃあると思うな。
Yuukizm 毎回現場で勉強ですよね。
KONY 勉強だねー。ドキュメンタリーで現地に行って初めてだったとしても、こっちにいる期間でどれだけ自分がそこに魂費やしたかっていうのを一瞬で彼ら(現地にいる人々)は見抜くからさ。そしたらアティチュードは変わるよね、自然と。こっちのことをただ取材に来たカメラマンと思うのか、もちろんそうだけどもオープンマインドでどんどん心を開いていってくれるか、っていうのはこっちの在り方(次第)みたいなところはあるよね。
だからPVも一緒なんだろうなとは思う。ほんとにラップを愛してたりとか、そこに対するリスペクトとか、そういうものってやっぱ出るよね。自分が現場に行ったときに出てさ、それによって彼らも自分の見せ方変えてくるから。そういう意味では同じなんだろうね。
Yuukizm ほんとそうですね。
――始めたきっかけについて教えてください。
KONY あぁやろうってなったのは、、潜在的にあったのは16歳くらいのときからかな。でも映像っていうのはその時はわかってなかった。ドキュメンタリーなんてもっとわかってなかった。
もともときっかけは、自分イタリアに高1の時一年間くらい留学してて。たまたま俺の超親友が、モロッコの方から来た難民で。で、彼にさ、生い立ちとか親が殺されちゃったとかっていう話を涙ながらに聞いたときに、なんか何も答える言葉が無かったというか。要はどうしたらいいかわからなかった。でその時になんかすごく反省した。今まで自分が勉強してきたのは何だったんだろうなっていうこと。隣にいる大事な人の痛みも癒せないということってのは何なのかなっていうのを考えて、それはずっとぐるぐるしてた。社会人になるために勉強とか言ってるけど、何の役に立つのかなって。歴史の年代が答えられて点数が取れても、いざそういう人に出会ったときに言葉もかけられない。それに悔しさを覚えて、どうにかしようと思ってたんだよね。自分の中でトラウマだったから。そしたら、たまたまカメラ買って、そういうの(どうすればいいか)とにかく聞きにいこうと思ってたらドキュメンタリーっていうアイディアに出会ったんだよね。
Yuukizm 僕は中学、高校入るくらいのときに先生とかに「しっかりしてる?」みたいなことを毎日言われるような感じで。そこからなんか、ちょっとおかしいぞみたいな感じになって。そういうちょっと世間とずれたタイミングで、別にこれは間違いではないっていうのに気づき始めて、ちょっと一本外れて、大人とかに変な目で見られても発信するものが欲しい、みたいになったんですよ、いきなり。で発信するなら言葉か写真か映像かなってなったんですけど、言葉も写真も見れなかったり動いてなかったりで伝えきれないと思って、じゃあ映像が一番いいんじゃないかなってなってそこから始めたっすね。
KONY なるほど。Yuukizm君にとっては映像を発信するっていうのは、生きづらい社会に対する一種の反抗みたいなところがあるの?なんかラッパーの人を多く撮るっていうのも偶然ではないのかなって聞いてて思った。ラッパーってそもそもカルチャー的にそうじゃん、ベースが。そういうのもあるのかなって。
Yuukizm そうですね。なんか、僕の地元はラッパーとかスケボーやってる人と結構いて。で身近にあったから最初友達の撮ろうってなって。で、そこからラッパー界を上がっていったんですけど。
――プロと素人の違いは?
KONY それは立ち位置かな、やっぱり。「あり方」じゃない?製作者の。だからどんなに綺麗に撮ってたとしてもあまり関係ないとは思うかな。製作者としてどれだけプライド持ってるかとか、そういうことじゃないかな。
Yuukizm でもやっぱお金もらえるようになると、偉い人とかも出てきて、それに合わせなきゃいけなくなるじゃないですか。
KONY そうだね、それはあるなー。
Yuukizm やっぱ素人の方がいいもの撮れると思うんですよ。プロはフィルターかかっちゃうから、ちょっと「あぁああ!」ってなっちゃう。
KONY そうだね、そう言われてみるとたしかにそうだなぁ。
Yuukizm まぁでもプロになんなきゃなぁとは思いますけどね。ずっと素人っていうのも意味わかんないですし。結局自分自身が「あの人は見えてる世界が違う」みたいにリスペクトされるようになれば任せてもらえるじゃないですか。そうなったプロが一番強いと思いますね。なんなきゃ素人の方がいい、とか思っちゃう。
KONY いやー、実際一番最初に出した作品が一番良かったりするからね。
Yuukizm あー、ほんとそうっす。
KONY そうだよね(笑) 不思議だけど。なんかたぶん全身で感じてたよね。
Yuukizm なんかプロ目線になっちゃったから、例えばこれは画質暗くなっちゃうからダメかなーとか。でもそれって結構意外といらないものだったりって気もしますよね。
KONY あー俺もそう思うわ。まさにドキュメンタリーとかもそうやって歪められていくから。だからフリーでやってるってのもある。そういう意味ではずっと立場としては素人的な立場だな。そういう権力とかお金とかのしがらみが無い場所にはいるわ。

――映像業界の未来について。
KONY 作り手が増えるから、残るのはたぶん色んな分野と掛け算ができるやつだなとは思うかな。映像だけじゃなくて、音楽とか、絵とか、声とか、文字とかそういう色んなものと掛け算できる人は強いなとは思う。
Yuukizm PV撮影だと、リサーチが半分くらい占めるじゃないですか。ここに行ってこう撮ろうとか。結局中身っすよね。よく撮れる人はいっぱいいると思うんですよ、画質的に。だけど結局評価されるのは、ちょっと画質悪くてもおもしろい方だと思うから。
KONY そうだねー。でもそうやってあふれるから、逆に明確になると思うな、本物は。多くのものはそのまま消費されて記憶にも残らないと思うけど、数があるから逆にきれいに見えるんじゃないかな、本物がくっきり。視聴者の目が肥えてくるんだと思う。
Yuukizm でもドキュメンタリーはあんま増えないと思うっすね、日本は。行けないひとがほとんどですもんね。「俺行こう」とかなかなかなんないっすよね。
KONY まぁ食えないからなぁ。
Yuukizm あぁー。でも世の中にはすげぇものを残せますよね、行けば。日本の人々に対して。
KONY そう願ってるけどね。
Yuukizm こういうのがあるって。価値で言ったら相当なもの。だから僕はもっと評価されていいと思うんですよ。テレビでももっとやったりしてほしいですよね。なんかあんまりやんないですよね。みんな見ないか。
KONY うん、まぁ現実と向き合いたくないんだろうなとは思う。そんな余裕は無いんだろうな。消化しきれないんだと思う。
Yuukizm そこまでいくキャパが無いのか。
KONY これ一つむちゃくちゃおもしろい話があって。
俺らの団体で、コロナ期間中の風俗の人のドキュメンタリー撮ったのね。風俗で働いてる学生で、お母さんにも頼れないから妹のためにって働いてる人のドキュメンタリー。
でそれをコロナ禍に出した。そしたらすっげえ拡散されて、ネガティブなフィードバックほとんど無かったの。でもコロナが一旦収束しかけたらむっちゃネガティブフィードバックが増えてきた。
これなんでだろうって考えたんだけど、単純にコロナの最初の時は「死ぬかもしれない」みたいな恐怖がみんなの中にあったじゃん。「死」とかっていう感情が近くにあったから、そういうグロテスクな映像に対する耐性もあった。でも収まってきてまた平和になればなるほど、どんどんそういうのを拒否し始めるんだよね。今の平和な社会では汚いものとか醜いものをどんどん排除していってる。
Yuukizm 綺麗になりすぎてるんですね、日本社会は。
――将来の展望。理想の映像について。
Yuukizm やっぱ「この人が映像作ったから見よう」って思われるようになりたいっすね。ラッパーと同じくらいフォーカスを当ててほしい。それくらいの映像を作れるようになりたいっすね。
KONY “理想の”っていうとそれはめちゃくちゃあって。一番最初にバングラデシュ行ってロヒンギャ難民撮ったときに思ったのは、意外と何も感じられなかったのね。例えば、両親が目の前で首切られてそれを見ててトラウマになって寝られないみたいな話を話されても、意外と何も感じられないってのはやっぱ思って。生身の人間が現地に行って話を聞いてそれなんだから、映像にしたら解像度ってもっと低くなる。だからむちゃくちゃ解像度は高めたいとは思ってる。どうしたらリアルに近づけるくらい解像度高められるかっていうことは理想だし、今もやってるし、今もできてないなとは思う。
――本日の感想を教えてください。
Yuukizm 今日ドキュメンタリーを撮られてるKONYさんとお話できて、僕は臆病者なので行けないなっていうのを改めて実感したのと、あとやっぱこうもっと楽しくなれたらなってのは思いましたね。より直感的にいきたいなって思いました。
KONY Yuukizm君自身がすごい優しい子なんだなってのを感じたかな。社会の汚さとかグロテスクさみたいなものに対して寛容性があるっていうか。変に言うと慣れてるというか。そういうものを受け入れられる度量みたいなのがすごいあるなとは思ったから、逆になんか優しい社会というか、広がりを持った、色々な人が住みやすい社会みたいなものを映像を通して発信していく力があるのかなっていうのはすごく感じました。

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HP
構成 Nozomi Tanaka
撮影 Shun Kawahara, Charlie Ohno