インタビュー Rapper SHO-SENSEI!!
兵庫県出身、カナダでの留学を経て、現在は東京で活動している注目の若手アーティスト。2020年には1stアルバム『Find me』をリリースし、キャッチーなフックとどこか切ない歌詞は若者を中心に人気を集めている。先月新曲の”Thinking”を発表したばかりの彼に、制作のインスピレーション、共感する楽曲や、海外で活躍する野望について訊くことができた。
等身大の自分を映す音楽を目指して
──自己紹介と現在の活動について、教えてください。
SHO-SENSEI!! はい、SHO-SENSEI!!っていいます。東京で活動しているアーティストで、今23歳です。活動としては、基本的には家にいて、曲を作って、聴いての繰り返しです。
──音楽、HIPHOPとの出会って、曲を書き始めたタイミングは?
SHO-SENSEI!! 一番はじめHIPHOPを聴いたタイミングとしては、小学校5,6年生の時。担任の先生が、イベントごとかなんかで使うBGMとして結構HIPHOPなアルバムを用意していて笑 それを初め聴いて、めっちゃいいなと思って…でもその時はそれHIPHOPやと思ってなくて。中学のときも音楽は好きで、忌野清志郎とかを聴いてました。高校入って、海外の音楽聴くようになった時に、たまたまHIPHOPを聴いて、「あれ?これ昔聴いてたな」ってなって。そこからHIPHOPめっちゃ聴きはじめて、気づいたらどっぷり好きになってました。リリックを書き始めたのは、あんまり覚えていないけど多分15歳ぐらいからです。もともと本読むのが好きで、小学校のときから小説とか書いてたんですよ。で、その延長戦やったというか…自分なりにそれが歌詞やと思ってた、みたいなところからがスタートだったと思います。
──なるほど、SHO-SENSEI!!というアーティストとして確立した曲はあるんですか?
SHO-SENSEI!! それはないかなと正直思います。毎回曲作る度に「これが俺やったんや」っていう発見があるというか。『Thinking』出したときは『Thinking』が僕の中でベストの曲やと思ったけど、先週ぐらいに僕の中で『Thinking』を超える曲ができて。「ああ、これが俺なんや」ってまたなったし。だから今でも確立してないんですけど、もしかしたらずっと更新し続けること自体が自分の中のスタイルで、かっこよく言えば、止まらへんというか、ずっと高みを目指してる、みたいな。
──今活動されてる中で、自分の軸、ブレないところは?
SHO-SENSEI!! どこに視点を当ててこの話をするかにもよると思うんですけど、僕音楽めちゃ好きなんで、音楽を作るっていうのが、僕の生活の中での完璧なる軸だと思います。音楽を作るために寝るし、音楽を作るために起きるし。音楽できひんからリフレッシュした方がええわっていうマインドで遊びに行ったり、今日はゲームだけして寝よう、一旦離れよう、みたいな。
──楽曲制作から離れてる時間は他に何をされるんですか?
SHO-SENSEI!! 散歩ですかね。田舎出身なんで、自然がすごい好きやし、自転車に乗って川沿い走って、夕日みながら聴く音楽が好きで。クラブで聴く音楽ももちろん楽しいけど、僕は一人で自転車乗って聴く音楽とかが一番好きだし、やっぱりそういう時に聴く音楽を作りたいなって思います。
──色んな人の生活に溶け込むような…そういう音楽を意識してるんですね。
SHO-SENSEI!! そうすね。だからあんま変な曲は作りたくないというか。別否定するわけじゃないですけど、宇宙的な曲とかあるじゃないですか。全然それはそれでほんまにいいと思うんですけど、僕は違うな、と。

──曲作りのインスパイアは生活の中にある感じ?
SHO-SENSEI!! 僕歌作る時、歌詞は別の時に書くんですよ。電車乗ってる時とか、川きて座り込んだりとか。結構そういう時にバーって小説のテンションで目に入ったものから書くようにしてます。だから後から自分で見返して、この時こういう感じやったな、って分かるし、他人が見ても全部わかるというか。だから歌詞っていう面では、今自分が見たものを、ありのまま書いてます。
──転機となった出会い、印象に残ってる出来事は?
SHO-SENSEI!! 僕元々海外で売れるのが夢で、とりあえず英語を習いたくて、高校でてすぐ1年半ぐらいカナダにいたんですよ。で結構でかい規模のフェスでパフォーマンスする機会があって。その時たまたま、カナダでちょっと有名なアイドルグループの女の子と友達だったので、一緒にでることになったんですけど、歌う曲がなくて。当時僕も尖ってたし、なんでもできると思ってたんで、「俺曲つくれるから任せて」って言ったんですけど、いざ僕曲作って、歌うってなった時に、あんまりうまくいかなったんですよね、全部が。普通に自分の能力不足を感じて。でその女の子にすごい指摘されたんですよ。「ほんまに音楽やりたいと思ってんの」とか。僕そんなん言われると思ってなかったし、「この俺が音楽を本気でやってないわけがない」って思ったんですけど、よくよく考えたら、できるって言ってたこともできなかったりしてて。だから結構食らって、「俺強がってるなあ」って気づかされました。
──なるほど、自分を作ってた部分があったというか…
SHO-SENSEI!! そうですね。逆にそうやって強がってたおかげで、頑張ってこれたし、勿論いいこともいっぱいあったんですけど、そのせいで悪いこともあるなって。そこから強がったりとか、自信ないのにあるふりしたりとか、できるできるっていうのあんまり良くないって思うようになりました。できひんことはできひんって言って学ぼうと思ったし。だからお金払ってカナダでボイトレ行き始めたりとか、わからへん勉強始めたりとかして。そしたら音楽もよくなってきて、人とも結構関わりやすくなって。ありのままでいれるようになりました。で自分がありのままでいたら、相手もありのままでいてくれるっていうことにも気づいて。結果的に、あの出来事は僕にとって大きかったなと、思います。

目指しているのは“ラッパー”じゃない
──自分を作らずにありのままの姿で、ってことですね。海外で売れるのが夢ということですが、好きなアーティストは?
SHO-SENSEI!! この一人っていうのは正直いなくて…僕からみたら一個の集団というか。多分そうじゃないんやろうけど、洋楽グループみたいな集団に見えて。その中の一人に憧れたというよりはその集団に僕も入って、「うわあ、今回の曲ビルボード入らんかったわ」「うわ、お前めっちゃええアルバムやんけ」みたいなバイブスで切磋琢磨したいです。
──憧れますよね。今の日本の音楽業界とのギャップは感じますか?
SHO-SENSEI!! シンプルにまずHIPHOPだけの話をしたら、日本のシーンは小さいなと思います。今はちょっと変わってきてはいると思うんですけど、例えば日本では、プロデューサーが一人いて、その人が曲を作って、トラックを作って、ラッパーが歌うっていうのが常識ですけど、海外はそうじゃなくて。メロディーを作る人が別でいて、そのメロディーを受け取った人が、いろんなプロデューサーからメロディーだけをもらって、その中で自分がいいと思うメロディーにドラムを入れて、それで似たような曲を集めてラッパーに送る。でラッパーが聴いて、使うと。でも、日本ではそれが行われるほどのプロデューサーの数もいないし、それでプロデューサーが食っていけるほどのお金もまだシーンで作れてない。多分本質としては日本のHIPHOPも海外のHIPHOPも仕組みは似てると思うんですけど、シンプルに規模が小さすぎて、海外みたいなことはできてないんだろうなと思います。
──確かに。リスナーの数も違いますよね。
SHO-SENSEI!! 僕がちょっと思うんは、やっぱりHIPHOPって一個のカルチャーで、誰もが知ってるけど黒人社会で生まれた文化で。それ自体日本にはなかったし、まあ言うたらこんなん海外の真似事でしかないというか。やからやっぱりカルチャーとしてあったアメリカで広まるのはそりゃ当然やし、クラブもいっぱいあれば、みんなで歌って踊る場所もいっぱいある。比べて日本は音楽に触れる機会自体がすごい少ないし、それにとどめを刺すように、メディアを牛耳っているって言ったら悪いけど、手に取ってる人たちがいて、その人たちもHIPHOPを売る気もそんななかったやろうし。てなったら、当然広まらんやろな、とは思います。

──そうですよね。そんな中でも最近若者を中心に、聴きやすいヒップホップが日本では流行していますが、ご自身の楽曲の受け入れやすさに関してはどう思われますか?
SHO-SENSEI!! 全く考えてなくて、正直。多分時代なんやと思いますね。僕みたいな世代の、例えばスピッツとか、J-POPを聴いて育った人たちが、海外のHIPHOPに触れて、HIPHOP作った時に、必然とメロディアスで聴きやすくて、でもリズミカルな曲が出来上がって、それがたまたま今の世代にウケてるだけな気はちょっとしますね。多分誰も狙ってそういうHIPHOPを作ろうとは思ってないんじゃないかな、と。
──今後日本のHIPHOP業界の中でどんな存在になりたい?
SHO-SENSEI!! 日本の中で言うと、目標としては、クラブで流れるラッパーとかの感じじゃなくて。あの人の曲ええなってなる、なんか…歌がいい人になりたいですね笑 ダンスが上手くて、見た目が良くて、ファッショナブルなラッパーというよりは、曲が良くて、あの人の生き方っていいよな、みたいな。そういうまっすぐなアーティストに憧れてます。
──影響を受けたアーティストや曲はありますか?
SHO-SENSEI!! これ結構最近なんですけど、友達の影響で、尾崎豊にめっちゃハマって笑 尾崎の曲ってめっちゃ尾崎なんですよ。めっちゃ尾崎で、尾崎の心の歌で、尾崎にしか響かへんはずの歌で、尾崎にしかわからへん景色の歌で。やのに、めっちゃ響くんすよ。それって音楽作ってる身として結構やばいなと思って。時代まで超えてきて、ぐわってくるものがあることに、僕はすごいなと。周りにまで影響を与えるほど、自分と向き合ってる、っていうところに食らいますね。
──なんであそこまで響くのは謎な部分ですよね…他にはありますか?
SHO-SENSEI!! 海外の曲だったら、J.Coleの『Power Trip』っていう曲があって…その曲は僕が音楽作り始めたきっかけになってるような気がするぐらい好きで。曲の内容としてはHIPHOPへの愛を歌ったラブソングで、比喩で、HIPHOPを女の子に例えた曲なんですけど。めっちゃいいすよ。全然HIPHOP感はなくて、ラブソングで、おしゃれで。僕のマインドとも結構似てて、「今でも俺がお前のこと好きやとお前はもう思ってないやろな」「でも俺はお前と一緒に夜寝てるマインドやねんで」みたいな曲で。普通に女の子に対してそう思うこともあるし、音楽とか他のことに対しても、全然昔から自分は変わってないんで。そういう意味で昔から変わってない自分に対して、いいな、って思ったりもするし。自己満の世界なんですけど。だからこの曲はすごい好きです。か、もう尾崎の全曲です笑
海外を見据えた先に辿り着いた、“アニメトラップ”
──将来の目標、展望は?
SHO-SENSEI!! 僕は昔からずっと、海外の音楽シーンの中に入りたいなと思ってるので、最近もずっと海外の有名なプロデューサーとコンタクトとりながら、頑張っています。
──海外を意識するとなると、英語のリリックも大事になってくる?
SHO-SENSEI!! 僕カナダに行って、気づいたことがあって。色んなカナダの人に自分の曲聴かせたりした時に、結果みんなに言われたんですけど、「いやいや、日本語で歌えよ」って、「日本語クールやん」みたいな。やし、英語使っても、外人に勝てないんですよ。だってあいつら生まれた時から全部英語なわけで、ずっと英語で育ってきて、その中でみんなおしゃれな表現とかフロウをしたりしてる訳で。そんなのちょっと僕らが何百時間聴いたぐらいじゃ、絶対届かんな、って思って。でも僕らには日本語特有の音があって、リズムがある。今なんかアニメとかすごい流行ってて、受け入れられてるし。

最近より受け入れられてるなって思った経験を話すと、海外の有名な人とかがYouTubeのライブで、「ここに曲送ってくれたら聴くわ」ってリアクションしてくれるのがあるんですよ。僕もそれこそ『Thinking』をリリース前に結構有名なプロデューサーの人に送って、たまたま聴いてくれたんですけど、その日一番の上がり方してたんですよ。僕のインスタまで調べてくれて、お前頑張れよ、みたいな。チャットとかも、海外の人から、「何言ってるかわかんないけどめっちゃいい」「これアニメトラップや」ってコメントたくさん貰えて。その時「あ、まじで英語そんないらんわ」って思って。英語が必要なのは、そのプロデューサーが例えば気に入ってくれて、DMしたい時だなと思いました。けど曲自体にはそんなに意識せんでええな、って最近思いました。
──アニメトラップいいですね。
SHO-SENSEI!! そう、アニメトラップってすごい言われて。アニソンって僕たちが思ってる以上に海外の人聴いてるみたいで、日本といえばアニメ、みたいな。だから僕が歌ってる日本語の曲も全部アニソンに聞こえるらしいです。だからアニメトラップ。その言葉気に入って、僕アニメトラップ極めようと思ってるんすよ。世界初のアニメトラッパー。
──イケてるとはSHO-SENSEI!!にとってなんでしょうか?
SHO-SENSEI!! 僕作ってる感じあんまり好きじゃないんですよ。服決める時でも、おしゃれしたいから、夏やけど長袖で行こう、みたいなのあんま好きじゃなくて。僕はありのままの人の方がやっぱりかっこいいなと思います。だからそんなに幸せじゃないのに、売れてきて、ダイヤモンドネック、とかリリックで言うのはちょっと…というか僕はそう思わないんで。ありのままでいる人を僕はかっこいいな、イケてるな、って。音楽目線の話ですけど、そう思います。
──では最後に、カルチャーとは?
SHO-SENSEI!! 僕はカルチャーって狙ってできるものじゃないというか…今は普通に自分がいいって思うことをみんなやって、かっこいいと思うことをして、それが将来振り返った時に、ああ2020年の感じな、っていうカルチャーになると思ってるんで。僕は今何かのカルチャーを作ってる気は無いですね。ありのままで、普通に、やることやってて、どうせこれがカルチャーになるんやろうなっていうマインドでやってます。振り返った時に自然とできるものだと思ってます。
──ありがとうございます。
取材 Taiki Tsujimoto
構成 Kiriko Fukutome
撮影 Shotaro Charlie Ohno