
インタビュー Rapper MFS
大阪のカルチャーに大きく影響を受け、ラップを始めて半年も経たずに1st シングル「BOW」を発信したMFS。今回は、彼女が感じている大阪のカルチャーや、楽曲制作に込められた信念について訊くことができた。
大阪のカルチャーとの出会い
──現在の活動について教えてください。
MFS 一応東京出身なんですけど、一年半前の2019年の4月から大阪に来て10月ぐらいからラップを始めて音楽も作っていました。それで、7月24日に初めてシングルの配信とPVを公開したって感じです。
──ラップを初めて一年経たずに自分の曲を出すってすごく早いですよね、、やはり昔からずっとHIP HOPを聞いてましたか?
MFS そんなことないんです。音楽はちっちゃい頃からずっと好きでしたから。ずっとラップしたかったわけじゃないんですけどね。
母がブラックミュージック好きだったので小さい頃からブラックミュージックを聴いてたけど、クラシックバレエを習ってたからクラシック音楽も聴いてました。多分それが根底にあるからどんな音楽でもすっと入ってくるのかなと思います。いいと思う音楽を全部聞いてきた感じです。

──そんな中、ラッパーとして活動するに至った経緯を教えてください。
MFS 高校生の時に日本語ラップに出会って聞き始めたけど、ラッパーになりたいっていうのは全くなくて。
2年前に付き合った彼*が大阪のラッパーで、彼に連いていって2019年の3月に大阪に住み始めました。そこらへんで彼が一回書いてみなよって言ってくれて。R&Bのインストに自分でちょっと書いて彼氏に披露したら結構いい感じなんちゃう?みたいになったんですよね。その2ヶ月後ぐらいに、彼のおかげでライブさせてもらえるっていう風になったから、そのために2曲作ってみたんですよ。それでレコーディングとかしていくうちに、ここまで来たらちょっとラッパーやろうかなっていうので始めましたね笑
* Tha jointz のJASS
──なんの躊躇もなく大阪に住むのを決めたんですか?
MFS ずっと東京に住んでるのもアレだしなぁみたいな感じで行っちゃいました。実際、大阪はHIP HOPシーンが面白くて、ダンサー、スケーター、DJ、BMXライダーとかいろんなジャンルの人たちがアメ村にぎゅっと集まってるからカルチャーがすごい濃いんですよ。東京だといろんな箇所にクラブがあったりとかすると思うんですけど大阪はアメ村だけなんですごいカルチャーが育ってて。結構大阪の方が面白いのかなって思っちゃいましたね。
──居心地のいい空間なんですね。
MFS そうですね笑 結構みんなfamilyって感じで。
自分のオリジナリティ
──1st 配信シングル「BOW」について教えてください。
MFS 「BOW」はトラップっていうのもあって結構ノリで書いてます。あとは私のモットーというか信念なんですけど、人をdisるラップとかをしたくないから、それは貫いてます。初めて出せるクオリティになったものが「BOW」で。考えて作ったというよりもビートがあったから作ったって感じですねで。受け取る側が受け取って気分良くなるんだったらいいやと思ってます。
──リスナーにメッセージはありますか?
MFS 車で聞いてもらうってのは結構狙ってて。skrrっていうじゃないですか。私は運転免許持ってないんでできないんですけど(笑)skrrの意味って本来車のキキーっていう音じゃないですか。車乗ってて結構ハイな時にskrrって感じで聞いてもらったらいいなっていうのと、「舐めたきゃ舐めとけ代わりにゲロ吐く」とかっていうリリックが結構どう思われてもいいしみたいな。人に強く物言えないんだったら私代わりにゲロ吐くしみたいな。
あとは、自分の楽しいこととかの世界に入って冷めない時ってあるじゃないですか。オンオフが出来ない時。ダンスやってるのと勉強やってるのとか。「夢から醒めない夢醒めない」っていうリリックも自分の世界から覚めなくて、いつからこの性格なんだろうと思ってもまあ「I don’t mind.」 気にしないみたいな感じで、イケイケソングって思ってもらえたら(笑)

──軸としている信念が人をdisらないってどういうものですか?
MFS 「BOW」の中ではdisらないんですけど、いろんな言葉使うんで曲によっては出てくる所もあるとは思います。人のことを蹴落として自分の地位を確立するっていう思考回路がないというか。ラップってdisとか多いじゃないですか。女性のラッパーだったら「男どもは」みたいな表現とかあったりとかするけど、私は「誰かと比べて自分はこう!」とかよりもそのレベルじゃないところで勝負してるみたいな所があって。自分を棚に上げて人の事をとやかく言う人とかも嫌いで変な競争心とかもないので、自分は自分でやりたいことをやるし言いたいこと言うしっていうのが信念だから。あんまり他人のことdisるのも好きじゃないし、悪口のラップはあまり書きたくないなって思います。
──それは私生活から?
MFS 大阪のシーンがすごいピースで。大阪の人ってめっちゃ緩くてラフで優しくて、あんまりちっちゃいこと気にしないんですよ。なんかそのノリが東京の時にはなかったけど、大阪に来て「本来の自分ってこういう感じだったかも」って思って。だから普段もイラッとすることがあっても、「この人だって優しいから私もそピリピリしないでラフにいた方が、ピースにいた方がいいかな」って思う。だから生活の中で人に対して攻撃することはないし、ラップを書く時はそれが嘘にならないようにそういうdisる曲は作らないようにしようと思ってます。
──HIP HOPはdisも含めて発展してきてますけど、そこに関してはどうですか?
MFS disしてる人がどうこうってのは特にないんですよ。その人の考え方があるから別に否定しないしdisも別にいいと思うんですよ。見てる側からしたらそれも面白いじゃないですか。私も人の喧嘩っていうか、トラブルとか事件とかを見るのは好きだったりするんですけど、自分から人を傷つけるような言動はしたくないっていう考えで。別にHIP HOPでラッパーでも音楽を作ることは他のアーティストと変わらないから、自分のオリジナリティを大事にしようと思って。そしたらあんまり人のdisは得意じゃないなって感じですね。名前はMother Fuckin Savageなんですけど(笑)

──MFSという名前ついて教えてください
MFS Instagramをやってた時に3ヶ月に一度名前変えてたんですけどその中の一つにMother Fuckin Savageていうのがあって。ラップやろう、ラッパーネームどうしようと思った時にたまたまMother Fuckin Savageだった。じゃあMFSでっていう感じで。特に理由はないですね。ただ、ギャップは狙っていて。なんか悪そうというか派手な感じに思われるけど、全然普通の純粋な日本人の育ちで普通の人ですってのが逆に売りです笑
──活動を通して学んだこととかありますか?
MFS 思ったよりも人生ってスムーズにいかないもんだなーっていうのと、ずっと続けてたら還って来るっていうか。今まで努力とか全然できてこなかったし同じことを続けたことがなかったんですけど、我慢して続けたらマジで何かしら還ってくるものがあるんだっていうのを学びました。
──具体的には?
MFS 「BOW」を作ったのが3月だけど出すのは7月になったし、曲やPVができるまでも沢山の過程があってうまくいかないこともあるんですよね。ただ、自分より年上の人と作ってるから成長になって、アーティストが経てきた経験はこういうものなんだっていう事とかもわかりますし。自分も曲を聴く側としてちゃんと大切に聴くべきだなって思ったのと、初めての経験を積み重ねたら出した時に声をかけてもらって新しい出会いも増えたりもしました。
──次の製作も進めていますか?
MFS はい!「BOW」を作ってる時も同時に3,4曲は作ってるんで曲はもう溜まってて。ただ、スタジオのメンバーで動いてるんでみんなの作品を出す日程が被らないようにみんなでスケジュールを立ててます。溜まってるのもあるし、今制作中なのもあって結構いっぱいありますよ。
──めちゃくちゃ楽しみっすね。
何かをやり続けるということ
──今までの人生で影響を受けた人っていますか?
MFS 作品に影響を受けたラッパーはいくらでもいるんですけど、現段階ではまだそれを生かせてはないですね。ただ、身近なアーティストで言うとラップ始めたきっかけにもなったTha jointzです。私がラップを始めた時に手助けしてくれたってのもあって、影響が濃いんですよ。特にTha jointzっぽいリリックとかナチュラルな感じとかはめっちゃ影響受けてます。あと、クルーを離れて個々でやってるラップが全然違うっていうのもめっちゃ面白いんですよ。
──自分の現段階のオリジナリティは?
MFS 女だから女っぽくというよりは、メンズのラッパーと同じテンションでラップしてることが自分のオリジナリティかなって思いますね。今いる他のフィメールのラッパーの人ってどういう意図かわかんないですけど女を前面に出してる人もいるので。それもいいと思うんですけど、私はナチュラルな自分の方が良いかなって感じですね。

──趣味はありますか?
MFS まずダンスは結構踊ってきたから好きなのと。あとは動物がすごい好きで、今セキセイインコが2匹と海水魚がいてhappyに暮らしてます。山登ったりとか。そうやって私が暮らしてる環境がピースだからピースなリリックに影響してるんじゃないかなと思いますね。あとはお酒が好き(笑)
──将来の展望はありますか?
MFS 将来の目標はどんな形でも、ラップじゃなくてもなんか音楽は作り続ける人でいたいなって思うけどね。後はみんなで幸せに暮らしたらいいんじゃないですかね。今ラップじゃない音楽のことを全く考えてないんですけど、人って考え方が変わるのでもしかしたらラップじゃない音楽もあり得ると思うんですよ。ただ、音楽はもうずっと一緒だから多分ずっと一緒だと思います。
──僕らが捜しているものでもあるんですけど、”イケてる”ってどんな人だと思いますか?
MFS ずっと動き続けてる人じゃないですか?自分のやりたいことに対して。
──やりたいことプラス行動力がある人みたいな人ですか?
MFS やりたいことがなくても一生懸命やってたらこいつ頑張ってるな、イコールでイケてるっていう表現でもいいんじゃないかなと思いますね。
──身近なところで言うとTha jointzとか?
MFS そうですね。Tha jointzでも他のラッパーとかダンサーでも作品を出し続けてたり、結果を出しながらも練習し続けてたり。どんな場所だとしてもプロフェッショナルで自分で価値つけてやってる人はイケてるなーって思います。
──最後に、あなたにとってカルチャーとは?
MFS カルチャーってクリエイティブな物ってうか何かしら元々にあった既存のものじゃないジャンルからこう出てずっと出てくるものっていうか。誰かが作っていくもので、そこから影響を受けて人が誰かにこう発生していくものと言うか。ずっと受けて発信して受けて発信しての繰り返しだから。誰でも自分で自由に作れるものだし、自由に楽しめるものだし。で歴史にも残っていけるもの?形ではないけど、なんかこうなんとなく、こう挨拶の仕方とかわかんないけどそういうところでも残していける、なんだろう残していける何かしらでしょうね。
──ありがとうございました。

カリスマ性溢れるビジュアルとは裏腹にピースやハッピーといった明るい雰囲気が似合うMFS。彼女のつくる音楽に込められるのは大阪やTha jointzから受けた影響の大きさを感じられた。今後もありのままでナチュラルな存在であり続けるのだろう。
取材 Taiki Tsujimoto
構成 Tsukasa Yorozuya
“【PERSONAL FILE】Rapper MFS 新天地で出会ったリアル” への1件の返信