【PERSONAL FILE】美容師/Hair Artist REI 追求し続ける潜在意識の表現

【インタビュー】美容師 Hair artist REI
 東京下北沢にある美容室兼古着屋CRIBのオーナー。このお店は彼自身のアトリエとなっており、客は頭から爪先まで全身をここでコーディネートすることができる。
 彼は髪を切ることをアート、表現方法の一つとして捉えており、自身の内側にある潜在意識をもとに彼独自のデザインを生み出している。
 美容師という肩書に囚われず、様々な活動を行う多彩な人物。

REI Instagram

髪の毛は表現する一つの手段


 ──自己紹介をお願いします。

REI 美容師やってます、REIです。お願いします。

 ──活動を始めたきっかけについて教えてください。

REI 元々、両親がデザイン関係の物を作る仕事をしていた影響で、自分も記憶が無いくらいの時期から絵を描いたり、レゴで何か形を作るみたいなことをずっとしていて。おそらくその時からずっと、何か形をデザインするみたいなことに興味がありました。
 美容師というもの自体は、中学生くらいの時に「あぁ美容師になろうかなー」みたいな本当にフワッとした感じで目指し始めたんですけど、技術を得たり、色々と探っていく過程で、髪の毛もデザインの一種で、それを切るというのは何か立体的なものを形作る一個の手段なんだということに気づきました。それに気づいてからどんどんのめり込んでいきましたね。
 具体的に言うと、高校二年生か三年生くらいの時に、現在の理容師や美容師の基本技術となる髪の切り方を生み出したヴィダル・サスーン*というイギリス人のヘアドレッサーを知って。その人を知っていくうちに髪の毛って作り方があるのかということに気づきました。それから即行で向こうの『ABC理論』という本を取り寄せて、それで勉強しながら地元の友達の髪を切ったりしてました。あとは、イギリスにその彼が作った学校があると知ったので応募して、でも入学何年待ちとかだったので、日本の専門学校にも通いました。専門学校を卒業した後一瞬就職したんですけど、そのタイミングでイギリスの学校に行けることになって、一昨年までイギリスに住んでました。

 ──今の美容師としてのスタイルになったきっかけはイギリスでの経験が大きいのでしょうか?

REI イギリスも結構影響大きかったんですけど、元々物を作るというか、自分の発想を三次元に映し出す行為自体が好きだったので、髪の毛の施術自体もそれの一環だとしか思ってなくて。だから最初に美容師とは言ったんですけど、正直自分のことを美容師だとはあまり思ってないです。物を表現する上での一つの手段が髪の毛であり、それが今はお金を稼ぐ職業になっているという感じです。

 ──デザインのインスピレーション元は何かありますか?

REI 髪型に関しては、結構昔のカルチャーから引っ張ってきたりしてます。直近だとパンクカルチャーに魅力を感じて意識したりしてますけど、自分の一番根本にあるのはサルバドール・ダリという画家ですかね。すごく小さい頃に初めてその絵を見てめっちゃくらって。こんな目で見ただけで、ぞわっとさせるものを作れる人がいるんだと衝撃を受けました。そこから「シュルレアリスム」というカルチャーというかアートの文脈での運動を掘り始めました。それからはずっと「シュルレアリスム」って何だろうって考えるようになりました。自分は「自分の潜在意識を三次元に映し出すもの」だと解釈してて、それを強く意識してます。髪型もそうだし、自分リングも作ってるんですけど、そのリングも普通のリングじゃなくて自分が見てて気持ちいいもの。内側から出てくるものだけを信じてますね。


稼ぎ方にもセンスがある


 ──髪を切る上でのこだわりはありますか?

REI こだわりは「自分と相手のwin-winを探すこと」ですかね。さっき物を表現する一つの手段とは言ったんですけど、職業としてやってて、相手というか、お客さまの身体の中の大きなピースである髪の毛を切るわけなので、自分を出しすぎるのは違う。かといって相手に寄せすぎるのは、日本に死ぬほど多くの美容師がいる中で、正直俺じゃなくてもできる。やっぱり髪の毛を切るというのを表現方法の一つと考えている以上、作業にはなりたくない。ちゃんと表現もしたい。なので最初の「どういう髪型にしたいの?」とか「今何やってるの?」っていうカウンセリングで、相手の考え方だったりライフスタイルを汲み取って、相手と自分両方にとってのwin-winを探っていくのを大事にしてますね。

 ──今のお話は、アーティストの方が直面することの多い「自由に表現したい気持ちとお金を稼がなければいけないことの間での葛藤」と似ているように思えたのですが、それについてはいかがですか?

REI まぁ正直お金が全く稼げないと、死んじゃうから。だからもちろんそれで生きていく、お金を稼いでいくというのをベースで考えてますけど。でも自分の中では、「稼ぎ方」にもセンスがあると思ってるんですよ。というのも要はそれが「生き方」だから。人間って生きてる時間の中で一番長いのがお金を稼いでる時間ですよね。そうなると、稼ぎ方ってその人の生き方になると思うし、そこにはセンスが必要になってくると思います。
 そう考えると、人生を楽しく生きたいなら、自分の中で楽しい稼ぎ方をすればいいんじゃないかと思う。それで自分は、自分が好きな「表現すること」でお金を稼げたらいいなと思って今はやっているという感じですかね。もちろん100%やりたいことだけでは稼げないし、それが上のこだわりにも繋がるんですけど、それでも稼ぎ方、生き方については意識してるかもしれないですね。

 ──大切にしている価値観はありますか?

REI 自分が作るデザインは全て自分の中から出すということですかね。要は簡単に言うと、パクらない、真似しないということ。例えば、すごい売れてたり流行ってるデザインがあるとして、お金のためにそれを模倣するみたいなことは絶対したくないですね。
 インスピレーションを何かから受けることは、それは全アーティストがそうだし当たり前だとは思うんですけど。ただそれを、どこまで自分の中で噛み砕いて消化して、自分なりに表現できるか。それは大事にしているかもしれないですね。

 ──「パクリ」について度々問題になることとして、“どこからが「パクリ」でどこからが「インスピレーション」なのか”というのがあると思うのですが、それについてはどう考えていますか?

REI それはあれじゃないですか。自分の意志。もし自分の中でパクってたら、たとえその作品を発表するときにこれはパクリじゃないと言ってそういうことになっても、自分の中でのパクリという感覚は拭い切れない。逆に世間がパクリだと思っても、これはパクリではないという絶対的な自信があればパクリではないんだと思います。要は自覚の問題。世間に何と言われようと「僕はこう思ってこう作りました」って言える人がリアルだし、言えない人がフェイクなんじゃないですかね

 ──今後の展望について教えてください。

REI やるべきことをやる、くらいじゃないですかね。表現方法は変えてもいいと思ってます。表現方法はその人に適したものっていうのが絶対にあるし、それを早く見つけるか遅く見つけるかだけなので。自分はまだそれの探り途中な気がするんですよ。美容師だけじゃなくて、リング作ったり、人にタトゥー掘ったり、色々なことに手出しちゃってるから。その中で自分にフィットしたものが最終的に何個あるかわからないですけど、その最終的にフィットしたもので自分を表現し続けたいです。そういう意味で今も今後もやることは変わらないけど、やるべきことをやり続けていくって感じですかね。


三次元にあるものは全部平等


 ──他のカルチャーで何か関心のあるものはありますか?

REI セラミックアートですかね。陶芸。全世界ですごい昔から行われてて、例えば土偶とかもセラミックアートの一種だと思うんですけど。セラミックアートって土で作られてあとは焼くだけなんですね。そういう元々地球にある素材で人間が作り出しているものって、めちゃくちゃ数少ないと思ってて。超かっこいいっすね。だってあれ“土”っすよ。なのに、色もあって、形が自分で作れて、それを見たときにくらう人がいて。やばくないですか。(笑) もうこれは!と思って、最近はこのカルチャーをすごいディグってて、作ってみたいと思ってます。

 ──セラミックアートに興味を持ったきっかけは?

REI 自分は元々食事に対してあまり興味ない人間だったんですけど、ある時実家に帰って食事した際に冷奴が出てきて、それが何かめちゃくちゃ上手くて。なんでだろうってずっと考えてたんですよね。だって冷奴って豆腐に醤油かけてるだけだから味なんて変わるわけないじゃないですか。(笑) で、「あこれ絶対皿だ」って思ったんですよ。うちは親父が趣味で陶芸やっててその皿だったんですけど、これはその皿で視覚的に上手いって感じさせてるんだなと。
 人って何事も五感全部使って感じ取ってると思ってて。例えば絵を観てても、視覚だけじゃなくて、そこにはギャラリーの匂いがあったり、BGMの音があったり。そういうのが全部まとまって、その時の時間全体でインスピレーションってものが得られると思うんですよ。俺はそれをその冷奴の時の皿で気づかされて、皿やべえ!ってなりました。(笑)

 ──人生の中で一番心に残っている一曲を教えてください。

REI たぶん一番聴いてるのは、ANARCHYさんの『Fate』。中学生くらいの時に初めて聴いて、めっちゃかっこいいなこの人と思って。具体的にここの音、この言葉がやばい、みたいのは無くて、ほんとフィーリングでただ聴いてすごいテンション上がるというか。それからは今でもたまに聴いてるかな。
 でも最近は声入ってる曲あまり聴けなくなっちゃって。友達が作ってる曲は聴きますけど、映画のサントラとか、ハウス、テクノだったりを聴いてます。純粋に音として楽しむというか。「音」っていうのはずっとあって、それが重なることで音楽になってると思うんですよね。だから最終的には自然の音が一番かっこいいって今は思ってます。

 ──REIさんにとって「イケてる」とは?

REI うわそれめっちゃむずいっすね。

 ──先ほどの「パクリ」からの「リアルとフェイクについて」のお話は近しいものがありますか?

REI あーでもリアルとフェイクって、別にリアルだからかっこいい、フェイクだからダサいというのは無いと思ってて。だって作品として世に出したのであれば、それは実体として存在しているのだから、そこに正義も悪も無いような感覚があります。
 「イケてる」ってなると、それってもう自己満足なんじゃないですかね。全員が今まで生きてきたバックボーンに基づいた感覚を持ってて、その感覚はそれぞれ違うわけなので。でもだから、そのバックボーンに基づいて、それぞれがその“モノ”を感じたときに喜怒哀楽がブワって出てくる“モノ”が、その人にとっての「イケてる」になるんじゃないかなと思います。ただそれは人それぞれなので結局は自己満足、ということだと思いますね。

 ──なるほど。この質問をすると多くの方が「イケてる“人”」について話されるんですけど、REIさんは“モノ”なんですね。

REI うん、人も“モノ”だし。てか自分はそう考えてます。まぁ自分外見の仕事してるのにこういうこと言うのはあれなんですけど(笑)、人間って中身だし、人間ってエネルギーでできてる。でそれが滲み出るものが外見であって、オーラであって。着るものだったり、掘るものだったり、爪を伸ばすやらなんやら全部含めて、それがその人の中身が滲み出ているものだと思うんですよ。だから“人”もその外見というのが一個の表現方法であって、表現する“モノ”になると俺は思います。
 あとは、“人”をなぜみんな別枠にするのかって考えたら、“人”には意思があって、“モノ”には意思が無いと思ってるからだと思うんですけど、“モノ”にも作った人の意思や思想が宿っているという意味では意思がある
 だから“人”も“モノ”も変わらないし、そこに区別はない。三次元にあるものは全部平等です、僕は。

 ──では最後に「カルチャー」とは?

REI 人々が作り上げた教科書みたいなものなんじゃないですかね。今の人たちからしてのカルチャーって、今まで生きてきた人たちが遺したものじゃないですか。で、今の人たちが何かを作ろうとするときはその中にあるパーツを組み合わせて作る。だからなんか歴史の教科書に近いというか、「感覚の教科書」みたいな感じかなと思います。

 ──ありがとうございました。

[PLACE]
CRIB
東京都世田谷区代沢2丁目30−1 − 109
2020年7月、東京下北沢にopen。
完全アポイント制のhair、jagua tattoo 、used clothing store をひとつの場所に集めたお店。
2021年現在、実店舗は不定休13時〜21時(目安)の営業。

取材 Nozomi Tanaka
構成 Nozomi Tanaka
撮影 Charlie Ohno , Keisuke Minami

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