【東京万求録】Vol.5 古着店 熱田屋《下北沢》

 

【東京万求録】とうきょう-ばんきゅうろく
「未来の行きつけ」をコンセプトに若者に利用して欲しいイケてるお店を紹介する企画。お店のオーナーにお店のこだわりだけでなく、自身の生き方や価値観などをインタビューすることでより深い魅力を引き出す。

古着の街・下北沢のハズレにあり、オタク心をくすぐる個性的なアイテムを多数揃えている古着屋。店長の熱田さんはとにかくフレンドリーかつ、自ら率先して個性的な着こなしを実践している方なので、楽しく会話したり、ファッションのアドバイスを受けたりすることができる。また、YouTubeやTikTokで古着の情報や着こなしなどを積極的に発信しており、若い世代を中心に人気を得ている。

 ──最初に自己紹介お願いします

熱田 下北沢の熱田屋という古着屋をやっております。熱田直斗と申します。宜しくお願いいたします。

 ──どういったお店なのか教えてください。

熱田 コンセプトっていうのは特にないんですけど、すごい変な店だと思います(笑)っていうのもですね、下北沢でもわかりづらい場所にあるちっちゃいお店なので、他の大手さんと同じことやってもしょうがないなって思って、他にないものを集めようとか、そういうセレクトをしてったらどんどん変なセレクトになってきてっていうのが現状です(笑)
コンセプトっていうほどではないんですけど、好きな言葉にオルタナティブっていう言葉があって、がオルタナティブって選択肢みたいな意味合いがあるんですよ。なので、うちの変わった服たちもそれが主流じゃなくても選択肢の一つでこういうのがあっても面白いよっていうような意味で捉えてもらえたら嬉しいなとは思ってます。あとはfunnyとか面白い、滑稽なっていうイメージの言葉も好きでそういうのはちょっと意識している部分かもしれないです。

 ──お店の1番の売りは何ですか?

熱田 1番面白い店でありたいなとは思ってます。アイテムもそうだし、スタッフも面白くありたいし、全部の体験として面白いと感じてもらえるお店でありたいなとは思ってます。

 ──接客の際に心がけていることはありますか?

熱田 なんでって言われると難しいんですけど、単純に僕自身喋るのが好きなので喋っちゃうっていうのが第一にあるんですけど(笑)まあそれはお客さん見ての判断になると思うんで、そんなに話さなくても大丈夫そうな方とかもいるのでそういうのは見ながら話そうとは思ってるんですけど結局話しちゃいますね(笑)居心地が良くて、来たいと思ってもらえるような空間は作りたいなと思っています。だから常連みたいな方も多いですし、友達の家か?っていうくらい来るやつとかもいる(笑)

 ──距離感の近いお店を意識している?

熱田 意識するっていうか自然とですね。前働いてたお店の上司がそういう方だったので、そこのイズムを受け継いでいるのかもしれないです。

 ──買ってくれたお客さんのショップバッグにサインを書いていたと思うのですが、あれはどういう試みですか?

熱田 あれは単純にハンコ作るコストの削減です。ハンコ押すじゃないですか?めんどくさいので筆ペンで書いてるって感じです(笑)
で、あれ書くとみんなインスタのストーリーとかあげてくれるんで、それはそれで気に入ってますね。

 ──字が綺麗ですよね。

熱田 熱田屋っていう字しか書けないっすけど、熱田屋っていう字は多分世界で1番書いてるんで(笑)

 ──お店を立ち上げた経緯を教えてください。

熱田 まず、僕19歳から24歳まで別の古着屋で雇われの販売員として働いてたんですけど、そのあと一回古着業界離れていて、アパレルの新品のメーカーで働いてたんですよ。なので、どっちかっていうとスーツは着てなかったけどサラリーマン的な動きだった訳なんですよ。でも僕やっぱりちょっと社会に適合できない人間なので(笑)あんまりうだつが上がらなくて、これじゃダメだって思って、やっぱ古着やろう、古着しかないなっていうので戻ってきたっていう感じです。
で、実は僕の名前が熱田で店名も熱田屋なんですけどオーナーではなくてですね。仲間がいて、仲間と一緒に立ち上げたので、仲間がいないとできてないお店っていう感じにはなってます。

 ──一回古着を離れた理由は何ですか?

熱田 僕今子供が2人いるんですけど、長男が生まれたタイミングでちょっと環境変えたいなって思ったからです。

 ──仲間とはどういう経緯で出会ったのでしょうか?

熱田 元々10代の頃からの友達なんですよ。他の古着屋で働いてた仲間。で、その仲間は原宿のrootってお店で先に独立してたんですよ。で、僕のサラリーマン時代も飲みに行っったりしていたんですけど、メーカーの仕事やめよう、自分で古着屋立ち上げようと思ってたときに、僕自身資金なくて、これから貯めてお店出そうと思ってるっていう話をしたら、「ちょっと待ってくれ、僕今2店舗目出そうと思っているんだ。だから一緒にやらないか?」って誘ってくれて一緒に立ち上げたお店っていう感じです。

 ──原宿のrootさんとは姉妹店ということですか?

熱田 そうですそうです。なんか、表立って系列店ですよって言ったことはないんですけど、隠しているわけでもなく系列店ではあります。

 ──店名に込めた意味や思いを教えてください。

熱田 僕の苗字が熱田なので熱田屋なんですけど、僕は店名自体はただの記号だと思っていて、正直パンチあればなんでもいいなって思ってたんですよ。で、最初ATSUTAYAってローマ字にするつもりだったんですよ。そしたらTSUTAYAにAをつけただけになるので。で、ロゴもパクっちゃったら面白いっていうだけで考えてたんですけど、さすがにロゴパクったら怒られるかもしれないっていうので漢字になりました(笑) 

 ──新品を扱うメーカーから古着に戻ってきた理由はありますか?

熱田 やっぱり自分自身超好きだし、古着楽しいんですよね(笑)新品の服見て色々勉強できたのも今に生きてます。生産管理とか服作る方も携わっていたので、古着だけでは勉強できかった服がどう作られているのか、どういう生地使われてるのか、どういう縫製なのか、どういうボタン使っているのかっていうのを勉強できて、今までより古着の良さっていうのを深く理解できるようにはなったかなとは思います。

 ──次は、熱田さん自身が今まで触れてきたものを教えてください。

熱田 いたって普通ですよ(笑)まじで普通なんで、特にないですけど。でも、服に興味持ち始めたというか古着を買い始めたきっかけはすごい覚えてます。修学旅行に私服で行くっていうので、男同士でみんなどんな格好して行くの?って話になったんですよ。その時に、その中の1人がなぜか俺に言ったんすよ。熱田オシャレだからいいよなって。オシャレじゃないんですよね(笑)なんかそれプレッシャーで古着屋に服買いに行ったのはめっちゃ覚えてます(笑)

 ──その時に古着をチョイスした理由は何ですか?

熱田 元々古着は見たりはしていて、でも安い古着ばっかり買ってたんで、ちょっと原宿行ってみようっていうので行ったのは覚えています。

 ──結構セレクトがオタク心をくすぐるというか、日本のひと世代前のものが多いイメージがあるのですが、熱田さんご自身の好みでもあるのでしょうか?

熱田 そうですね。それもあるし、僕は個性的っていう言葉も好きなんですよ。今ファッション界で言われる個性的っていうのは派手とかそういう風に捉えられがちだと思うんですけど、僕はちょっと違うと思っていて、個性って自分の好みを主張するってことだと思っています。自分自身そういうファッションが好きですし。なので、うちのセレクトの中にちょっと好みだとかそういったものがあったらそれを一個取り入れて個性を出して欲しいなと思っています。

 ──音楽とか映画とかカルチャー的なもので触れてきたものはありますか?

熱田 Kurt Cobainの真似は高校生の時めちゃくちゃしてましたね。*Jack Purcellしか履いてなかったし。でも途中で気付くんですよね。僕はKurt Cobainじゃないって(笑)真似してもKurt Cobainにはなれないって気付いたところからどんどん変わってったっていうのはありますね。音楽もいろいろ好きですね。でも好きっていうと本当に好きな人に恥ずかしいくらいのレベルなんですけど…今だったらHIPHOPとかもすごい好きで、USのA$AP RockyさんだったりとかLil Uzi Vertさんだったりとかすごい好きですね。

*Jack Purcell…1935年に誕生したconverseを代表するスニーカー。アメリカのロックバンド・NIRVANAのヴォーカル兼ギタリストのKurt Cobainが愛用していたスニーカーとしても有名。

 ──熱田さんが生きていく上で大事にしている軸になるような価値観を教えてください。

熱田 僕は結構お店が軸になってますね(笑)でもやっぱりみんながやらないことをやっていくとかそういうことはっていうのはすごい大事にしたいと思っていて、宮崎駿さんが何かのインタビューでめんどくさいことをみんなやらないけど、実はめんどくさいことって大事なことが多いんだよっていうのを言ってて、だからめんどくさいことを一生懸命やろうみたいなテンションの話をしていたんですよ。それはそうだなと思って、今みんながやらないこと、めんどくさがることを一生懸命やろうとは思ってますね。

 ──そのめんどくさいことっていうのは例えば?

熱田 これ言うと恥ずかしいんすけど、まさにYouTubeやったりだとか、TikTokやったりだとか、あと写真撮影するときは全部着画にしてみるだとか、毎日ちゃんとオンラインショップにアップするだとか、そういった細かい作業も含めてですね。

 ──YouTubeやTikTokなどを使って積極的に発信しているイメージがあるのですが、どういうものを発信したいっていう気持ちでやっているのですか?

熱田 やっぱりお店のことを知って欲しいって気持ちが第一にはあったんですけど、やってるうちに変わってきていて、若い方はTikTok見る方多いので、もっと古着に対して良い風に知って欲しいなって思いで発信してます。ただの中古でしょ?みたいな考え方の方も結構いるし、僕はこういう言葉好きじゃないんですけど量産型みたいなファッションって言う方すごい多いんですよ。なので、結構ファッションそうじゃなくなるの簡単なことだよっていうのも発信していきたいなと思って、先頭立って変な格好していって、そういう発信をしていきたいなとは思ってますね。

 ──若い世代に向けてのメッセージをお願いします。

熱田 僕も去年TikTokを始めて、たくさんの若い方が見てくださるので、若い方と触れ合う機会が増えたんですよ。だけどTikTokとかの質問でもあんまり考えない質問とかも多くて、例えばDickiesの874に何合わせますか?とか。いやちょっと考えろよ(笑)どんな風に着たいの?とかそういうのがあんまりないんですよね。例えば、僕はDickiesの874こんな風に着たいんですけど、ストリートに着たいんですけど、こういうアイテム合わせてみたんですけどうまくいかなくてとかの相談をして欲しいなと思うんですよ。やっぱり考えるっていうのもファッションの楽しみだと思うので、これが正解だよっていうのを僕は絶対提示したくないので。もっと自分で考えてみて欲しいなとは思います。で、いろんな思考を巡らせてこれカッコいいんじゃないかって試行錯誤するのがファッションの楽しみかなって思います。
あと、最近サスティナブルファッションがすごい注目されてると思うんですけど、日本で年間に廃棄されてる衣料の量って知ってます?すげえ量捨てられてて100万t以上って言われてて、着数にしたら10億着以上、生地によっては15億着以上、30億着って言われてる記事もあったりするんですよ。それだけの服が廃棄されているの。ファストファッションの流行もあって年々廃棄の量が上がっているっていう事実がある。で、ファッション業界って地球環境汚染に対して石油産業の次に影響がある業界だって言われてるの。そう言う観点から見ても、古着って加工にもエネルギー使わないし、古着着ることで社会環境汚染に対して貢献できるからすごい良いことだなって思っています。古着をリサイクルとは差別化したいっていう方もいらっしゃるんですけど、僕はやっぱり古着着ることがすごい良いリサイクルになることを知って欲しいなって思ってます。だから僕は古着着ることがエコだし、良いことしてるんだなっていうのを色んな方に知って欲しいなって思ってます。

 ──カッコよくなるためにどうすれば良い?

熱田 僕最近面白い答えを見つけたんですよ。オシャレってなんだと思いますか?っていう質問もあって、すげえ考えたんですよ。でもオシャレってやっぱり人の数だけあるじゃないですか?結局人それぞれの感性なんすよ。でも僕はオシャレの正解を見つけたんですよ。オシャレっていうのはより多くの人にオシャレって思われること。つまり一番売れてるブランドのボディのまんま着るのがオシャレなんすよ。っていうことはUNIQLOのボディそのまま着たら1番オシャレなんですよ。でも僕はそれがオシャレだとしても、あまりカッコいいとは思わない。だから僕は自分の感覚を信じて服着てる人はカッコいいなっていう風には思ってます。

 ──ありがとうございました。

古着の街・下北沢に数ある古着屋の中でも類を見ない個性的なセレクトの熱田屋。フレンドリーな熱田さんの接客はあくまで自然体でありながら距離の近い「居心地が良くて、来たいと思ってもらえるような空間」を生み出している。また、熱田さんは若い世代にもっと古着の良さを知ってもらうためにTikTokやYouTubeで発信をしているが、決して正解を提示せず、「思考を巡らせて試行錯誤する」ことがファッションの楽しみであることを伝えたいと話す。
是非一度お店に足を運んで、熱田さんとコミュニケーションを取りながら自分なりの「個性」を探してみて欲しい。

〒155-0031
東京都世田谷区北沢2-5-7 吉野ビル2F
下北沢駅東口より徒歩3分

営業時間:12:00-20:00

取材 Ryo Mizuguchi
構成 Ryo Mizuguchi
撮影 Shun Kawahara, Nozomi Tanaka

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