インタビュー dancer FatSnake
2018年 WDC finalist、2018年 JustDebout Japan best4、2018・2019年 全日本ストリートダンス選手権 優勝と明治大学MDD在籍時代から輝かしい実績を残しているFatSnake。NOAダンスアカデミーで講師としてレッスンも行っている現在は、Mavericks、G.O.A.Tの2チームが合体した形となったChildish Garments、及び1M-LOOPsに所属し、poppin’、特にアニメーションというスタイルに分類される唯一無二のダンススタイルが評価されている。今回は、そんな彼にダンスへの取り組みや価値観、今後の展望などを訊いた。

独自のスタイルを生む“音の聴き方”
──自己紹介をお願いします。
FatSnake FatSnakeって名前でダンサーとして活動させてもらってます。23歳で、ちょこちょこデザイン関係の仕事も活動としてあります。趣味で始めただけなんですけど。
──どのようなダンスをしていますか?
FatSnake 大きいくくりで言うとpoppin’っていうオールドスクールのダンススタイルで、LAの方で生まれたスタイル。ビートに合わせて筋肉を弾くという説明が一番多いと思います。
──その中でもアニメーションというのは?
FatSnake 作られた時は今みたいな3DCGとかないじゃないですか。映像技術も全然少ないから滑らかに動こうとしても無理みたいな。コマがバグで飛ぶ、みたいなのを表現するところがルーツになったっていう。だから現実世界に無い動き、空想世界の動きを表現するスタイル。
──どのようなイメージで踊っていますか?
FatSnake 直観的に不思議に見えるのが大事だと思ってるので、そこを考えて、追求しながら僕はやってます。
──どのような音の聴き方をしているんですか?
FatSnake 音の聴き方が特殊だと思うんですよね。分かんないですけど。ポッパーってビートに対してピンポイントで当てるイメージで踊る人が多いんですけど、俺はその音の所を通るというか、ビートのタイミングを通る感じでやってる。ポンって筋肉を入れて見せなくてもリズムとかグルーブとかの所で、そのタイミングで通るだけです。ウェーブとかも通る感じでやってるから、音が見えるっていうのをよく言ってもらえるんですけどそこなのかなって。
ピースよりも刺激を楽しみたい
──ダンスに至った経緯は?
FatSnake 俺の記憶だと兄貴の影響。兄貴が元々ブレイクダンスやってて、その影響で中3の終わりくらいから始めた記憶なんですけど、小学校のアルバムの寄せ書きにロボットダンスかっこ良かったって書いてあって。多分やってるんですよ、小学生の時に。記憶はないけど(笑)でもちっちゃい頃から踊るのが好きだったっていうのはありますね。
──ダンスにのめりこんでいったのはいつから?
FatSnake 高校でやってるうちにだんだんと、ですかね。割と最初から。ここっていう瞬間はなくて、最初っからっすね。
──最初はどこで練習していたんですか?
FatSnake YouTube見てたらNonstopにハマって。それの真似してて、高1の後半か高2あたりから本格的にスタジオに通い始めました。MSTさんっていう人に習ってました。一番最初に行ったレッスンがその人で。
──アニメーションのスタイルもそこから?
FatSnake 影響をうけてます。

──ダンスをやってきた中で一番の出会いは?
FatSnake チームとかクルーとか、仲間ができたのが一番でかいと思います。SEIYAとか。チームには相方のryo君とTAICHIがいて、そこはでかいですね。
──そこで刺激しあって?
FatSnake そうですね。出会いは全員最初嫌い入り。みんな俺が一番みたいな性格で。個々でやってきてて、イベントとかバトルで当たった時に「歳近いくせにこいつやるなぁ」みたいな。後々聞いたら向こうもそういう入りで、上手いとか嫌いとかじゃなくて「やるなぁ」から入って。チームやってく中でお互いに自分がうまいと思ってるから良い感じに高め合う。一緒に頑張ろうというよりは負けたくないって感じのスタンスでずっとやってるからここまで来てるのもある。
──お互いリスペクトのあるライバルみたいな
FatSnake そうそう。一番負けたら嫌ですね。腹立つ相手。
──所属しているチームについて教えてください。
FatSnake poppin’で言うとMavericksとG.O.A.Tっていうのをやってて。Mavericksに関しては、相方のryo君とバトルで出会った時にすげぇお互いジャッジの悪口めっちゃ言っててそこで仲良くなって、そっから気が合うなみたいな。それで踊りも見て、「やるなぁ」みたいな感じからかな。G.O.A.T に関しては、ryo君は3つ上だけどTAICHIは同い年で。同い年の友達はあんまりいなかったから、バトルで初めて当たって誰だこいつやるなぁってなって、後で同い年って分かって。SEIYAが共通の知り合いだったんで、俺とTAICHIを呼んで初めて交流して。そっから仲良くなって気が合うなってチームを組んだっていう感じ。
──チームによって目指してるものは違いますか?
FatSnake 違った。これはあんまりまだ言ってないんだけど、MavericksとG.O.A.Tを潰すの。マジで今その渦中にあって。潰して、俺とryoとTAICHI、MavericksとG.O.A.Tを一緒にしたチームを結成する。まだチーム名も何も決まってないから公表はしてないんだけど。
──ダンス界にどんなインパクトを与えるつもりですか?
FatSnake 俺らの想いでやるというか、本物を追求してそこで提示できればなと。前はアンダーグラウンドとオーバーグラウンドで分かれててそれぞれ活動があったけど、そのボーダーが無くなってきてて。それを無くそうとしてる活動もあるんですけど。そんな中で結構マイノリティな考えなんだけど、ダンスシーンがピース過ぎる。ピースなのは全然いい事なんだけど、「ちょっと刺激が足りないな」みたいな感じ。食って掛かっていくような人も最近少ないし。俺らはそういう性格だからそういう事をしていって、そういう人が増えていってバチバチになったら面白いなって。だから俺らが楽しみたいだけ(笑)ピースをしてる人がダサいとか辞めた方が良いとかそういうのじゃなくて、俺らがもっと楽しみたい。そういうダンスを続けていければいいなと。ゲームとしてガチでやり合う空間っていうのはちょっと欲しい。

究極のわがまま
──個人として有名になったきっかけはありましたか?
FatSnake Juste Deboutじゃないですか?予選初めて上がった時にまじでぽっと出だったんで、ほぼみんな初めましてというか会場で挨拶する仲でもないような人ばっか。最初そうじゃないですか。ダンス会場行って隅っこで見てるっていうテンションだったんで。そっから運よく上がって認知してもらいました。
──活動を通して学んだ事はありますか?
FatSnake 客観的に自分を見れるようになったかもしれないです。踊る=ライフスタイルってよく言われるんですけど、性格もめっちゃ出るかなと。ダンスの見られ方=人間の見られ方ってところで人からの見られ方を意識する上で、踊りじゃない部分とかライフスタイルの部分、人間性の部分っていうのを客観的に見るようなことは増えた。
──客観的にみて自身はどのような人間でしたか?
FatSnake 恥ずかしいな(笑)好きなことはやろうとしてるっすね。客観的に見て悪いところというか、短所ばっか。人間性終わってるんですよ。でもそこを客観的に見たからといって変える必要もないのかなって。
──踊りで内面を出すということは意識していますか?
FatSnake してないですね。何も考えない方が出てくるんで。考えちゃうと良いように見せようとしちゃうというか、かっこつけようとしちゃう。頭使うと悪い方向に行きやすいんでなるべく何も考えないようにしてますね。
──評価されるということに対して意識していることはありますか?
FatSnake 評価は気にします。簡単に言うときゃーきゃー言われたいんで。かと言ってそこに寄せるっていうのはだるい。わがままですよね、究極。俺はこのままだけど評価しろよ、みたいな感じの(笑)究極のわがまま。
──ダンス以外で影響を受けた物はありますか?
FatSnake 音楽もそうだし、映像作品とか絵ってある種の表現じゃないですか。そこら辺はめっちゃ影響受けてますね。
──それはダンスにも影響していますか?
FatSnake そう思いますね。言葉を使わない表現がめっちゃ好きで、ラップとかJPOPをディスってるわけじゃないんですけど。絵とか映像もそうだし、踊りも解釈が1つじゃないんですよ。自分で解釈できるというか、色んな人のそれぞれに解釈があって。そういうのがめっちゃ好きで、それ見て色んな解釈を考えるのが好き。そっからインスピレーションを受けてます。だから、1個のインスピレーションというよりは自分の感じた物をいっぱいつくり出して、それが自分のベースになる。
──軸としている価値観はありますか?
FatSnake さっき俺はめっちゃわがままって言ったじゃないですか。そこですかね。俺が正解、全部正しいみたいなスタンスでずっといるから、そこかな。
──好きな事をやるとか?
FatSnake そうそうそう。なんかめっちゃ好きなニーチェの言葉があって、“There are no facts, only interpretations.”日本語だと「事実っていうのはなくて解釈しか存在しない」っていうの。結局物事って主観でしか決めてないわけなんで。俺の解釈で言ったら。だから、それをみたときにマジで俺この通りだなって思ってて。既にあるものとかさ、決められた価値観、ルールみたいなのあるじゃん。それが良い事かは分かんないけど、全部疑ってかかってた人間で。だからそこにルーツがあるのかなと。めちゃ我が強いというか。

結局は主観、自分がイケてると思えば良い
──将来の展望は?
FatSnake ないんだよね。マジでなくて。気分屋なんで、その時の気分によってやりたいことが全然変わってくるから、先に計画しちゃうとストレス溜まっちゃうんですよ。だから服も作りたいなと思った時に作って。
──野望もないですか?
FatSnake 野望もない。最強になりたいって野望はあるけど(笑)何においてとかじゃなくて最強になりたい(笑)それだわ。俺の野望はそれだけ。
──ダンサーとして生きていくことは簡単ではないと思うのですが、それでもその道を選んだのは何故?
FatSnake ダンサーって一言で言っても色んな形があるじゃん。InstagramやTikTok、YouTubeに投稿して、っていう人がいてもいい。時代とか時期的にもSNSで活動することも多いけど、それで生計立てるだけがダンサーではないと思う。ダンスだけで生計立てる事がダンサーかって言ったら、俺はそうとは言えない。そうじゃないとも言えないけど。マインドがダンサーだったら別にその人はダンサーかな?みたいなテンション。だから、就職したとかダンスシーンから離れてる人でもマインドがめっちゃダンサーだったらダンサーって言っていいと思う。そういう感覚だから、別にコンテンツに囚われないで動ける。
──ダンサーとして生きていくっていう決意はないんですね
FatSnake 特にないなぁ。ダンサーとして生きていくって言ってもダンス以外のことやっちゃいけないわけじゃないから。マインドだけ「俺はダンサーです」みたいな。

──Culture University TOKYOは「イケてるとはなんだろう」という疑問をテーマとして掲げています。あなたにとってイケてるとは?
FatSnake それこそ全部話がそうなっちゃうんだけど、全部主観じゃん。イケてるとかカッコいいとかも主観。だから自分がイケてると思えば良いんじゃない?って思う。俺がイケてると思うのは、自分を持ってて好きなことをやってる人。自分を客観的に見て、できる事とやりたい事をリンクしてちゃんとやれてる人はかっこいいなあとは思う。
──できる事とやりたい事のバランス?
FatSnake 例えばTikTokやってる人でも、それをやってるからイケてるイケてないというよりかは、その人たちが自分でちゃんと本当にやりたくてやってるのかっていう。時代に合わせてとりあえずやってる人もいるから。そういう人はちょっと、って思う。まぁ俺は。
──最後に、あなたにとってカルチャーとは?
FatSnake 捉え方が色々ありすぎてめちゃくちゃ面白いものだと思ってる。俺的には進化させて、かつ作っていくものっていう認識。全く新しいカルチャーを作り上げるのももちろんいいけど、既にある文化の中で生きてるわけだから。そっからパーンって全く新しいものを作っちゃうとそれはまた違う文化になるじゃん。それはそれで、歴史や背景っていうバックグランドを知った上で行動すれば、新しいものを作っていければ、それは進化にはつながると思う。だから、その両方。
──ありがとうございました。

取材 Taiki Tsujimoto
構成 Tsukasa Yorozuya, Kiriko Fukutome
撮影 Shotaro Charlie Ohno