【PERSONAL FILE】Pianist/Composer  Kazutoshi Sohta 音楽で伝え、動かす

インタビュー Pianist/Composer 草田一駿(Kazooshi)
5歳からピアノを始め、13歳頃からは作曲活動も開始。今夏にはFUJI ROCK FESTIVAL’20 “ROOKIE A GO-GO”に出演を果たし、その才能溢れる演奏が話題となった草田一駿。海外向けにはKazooshiの名義で活動しており、先日3rd single『Peak』をリリースした。そんな彼に今回、音楽との出会いから影響を受けたコンテンツ、大事にしている価値観、将来の展望までを訊いた。

interview teaser
FUJI ROCK FESTIVAL’20 “ROOKIE A GO-GO”でのパフォーマンス映像が期間限定でアーカイブ配信中

ターニングポイントは13歳


 ──自己紹介と現在の活動について教えてください。

草田 草田一駿と申します。二十歳で、広島出身です。現在大学三年生で大学に通いながら、ピアニストとしてライブハウスなどで自分の作曲した曲でライブをしたり、セッションをしたりしています。

 ──音楽との出会いは?

草田 ピアノ自体は、母が子どもの時にやりたくてもできなかったから息子にはやらせてあげたいということで5歳のころからやらせてくれたんですけど、普通に僕はピアノよりもゲームが好きな子で、最初は嫌々やらされていた感じでした。でも小学生になって合唱の伴奏などをするようになって、それが自分の存在意義を感じられる場所だったのでずっと続けていました。

 ──本格的に始めたのはいつ頃からですか?

草田 13歳の頃ですね。ちょうどその時期が僕にとってターニングポイントで、多くの出会いがありました。まずピアニストの上原ひろみさんをテレビで見かけて、こんなに楽しそうに自分の世界を作れる人がいるんだとすごく衝撃でした。もう一人大林武司さんっていう報道ステーションのop曲を担当されたりしている別のピアニストの方がいるんですけど、その人も広島出身で。大林さんにも13歳頃に出会って、今でも交流があるんですけどこの方の影響はすごく大きいですね。僕のメンターみたいな人です。ちょうどこの頃にピアニストとして生きたいという目標みたいなものができ始めました。
 ピアノへの向き合い方も変わっていって、それまではクラシックで言われたことをずっと練習している普通にピアノを習っている子って感じだったんですけど、13歳からは耳コピしてそれを練習したり勝手にアレンジしたりし始めました。断片的なフレーズを自分で作ったりだとか、よりクリエイティブになって自分らしさみたいなものを追求できるようになっていきました

 ──小さい頃はどんな子どもだったんですか?

草田 いやもうほんとに変な子でしたよ。言葉悪いけどキチガイみたいな子でした(笑) ほんと自己中だったし、すごい反抗心も強くて。でも先ほどターニングポイントだったって言った13歳の頃からそんな自分を客観的に見るようになって羞恥心を持ち始めて。ちょうどその頃に精神的にも大きく変わりましたね。

 ──コンテストに出たりもしていたのですか?

草田 16歳の頃にSeiko Summer Jazz Campというワークショップに参加して、作曲で一個賞を頂きました。その経験は結構大きかったですね。自分は曲を作りたいんだな、もっと自分だけの世界みたいなものを追い求めたいんだなというのを確認することができました。

 ──活動を通して学んだことはありますか?

草田 やっぱり本当に世界は広いなとすごく感じますね。僕の音楽活動は一人じゃ何もできなくて、色々なの人の助けや刺激をもらいながら成長できていると思っているんですが、そんな周りの人たちと出会う場としてSNSはすごい大きくて。InstagramやTwitterを通して出会った人たちと切磋琢磨し合ったり、一緒にコラボしたりすることもできました。SNSと自分の活動を通してすごい世界が拡大していったような感じがしています。


伝統を重んじつつ開拓していく


 ──影響を受けたコンテンツだったり、音楽のジャンルはありますか?

草田 のだめカンタービレはすごい影響受けました。小5の時に劇場版を観てドハマりしてそこからドラマ版も全部観ました。あれを観ていなかったら音楽続けていないと思います。その影響と当時はクラシックの先生に習っていたのもあってクラシック至上主義みたいになっていましたね。
 でも今はジャンルであんまり判断しないようにしています。ジャンルってただの言葉だし名前だし、ただ商業的に差異化するために使われていて本来そこにジャンルの区別はないと思っているので。だから僕はアーティストだけを通してその音楽を知りたいと思って、ロックもクラシックもR&Bも何でも吸収できるものはできるだけ吸収したいと思っています。

 ──特に好きなアーティストは?

草田 挙げるとすれば、チック・コリアはすごい大きいですし、他にピアニストで言えばテテ・モントリューフィニアス・ニューボーンJr.グウィリム・シムコックなどは大きな影響を受けています。シンガーソングライターだとカミラ・メサっていうチリのアーティストがいてすごく大きいですね。他にもジョン・マクラフリンとかパンチ・ブラザーズとか…。あ、すみません。もうこういう話になると止まらないです(笑)

 ──J-POPとかは聴かないですか?(笑)

草田 いや、聴きますよ。米津玄師とか、あとOfficial髭男dismとかも聴きます。髭男すごいですよ。僕ら玄人って言っていいのかわからないですけど、僕らから見ても海外の作品に影響を受けているんだなってわかります。彼らにはブラックミュージックのルーツがあると思うので。

 ──音楽以外の他のカルチャーについてはどうですか?

草田 映画はすごい大きいですね。将来映画音楽やりたいと思っているので。やっぱり映画からはすごいインスピレーション受けますし、受けて作曲することもあります。『ハクソー・リッジ』っていう2017年の映画があるんですけどそれはすごい印象に残ってますね。戦争の映画なんですけど、力を持って戦うんじゃなくて、助けることで貢献するという主人公の精神性に泣かされちゃって。
 あとはファッションも大きいです。ファッションショーとかで音楽流れてるじゃないですか。それを即興で弾きながら、ランウェイを歩いてもらうみたいなこともやってみたいですね。

 ──ピアニスト・作曲家として自分の音楽を発信するだけじゃなくて色々なことをしてみたいと思ってらっしゃるんですね。

草田 そうですね。石若駿さんとジェイソン・モランというピアニストはスケボーとジャズ、熊谷和徳さんと上原ひろみさんはタップダンスとピアノでコラボしていますし、そういうのってやろうと思えば際限なくできると思います。僕も他のカルチャーの方との面白いコラボレーションみたいなものを将来的には見つけられたらいいなと思っています。

 ──なるほど。歴史や伝統には縛られずに新しいものを生み出していきたいですか?

草田 割とそうですね。自分の世界、音楽を開拓したいって感じです。でももちろん伝統も重んじつつですね。Jazzに関してはやっぱり黒人の人たちの悲しみだったり苦しみが絶対ルーツにあるのでそこを理解してやらないといけないなと思います。例えばスタンダード曲というのがJazzにはあるんですけど、それを弾くときはできるだけそれを意識して自分が依り代みたいになれるように演奏しようとはしています。


音楽と社会は地続き


 ──自分の軸としている価値観や座右の銘はありますか?

草田 座右の銘かは分かんないですけど好きな言葉があって。谷川俊太郎さんの『朝』という詩の中の“今朝一滴の水のすきとおった冷たさが ぼくに人間とは何かを教える”という一節です。「水」って人間との古い歴史があるじゃないですか。水が災いにもなったり、恵みにもなったり。そんな「水」に対して災いの歴史も恵みの歴史も全て受け止めた上での、人間からの畏敬の念みたいなものをすごく素直に表現されているような気がして初めて読んだ時は背筋が伸びる思いでした。そこから考えるのが、ポジティブなこともネガティブなことも、それを受けて感じた自分の心を信じてあげたいってことです。やっぱりすべてのことに感動してもそれって全然重さがないし、ちゃんと好きなものには好き、嫌いなものには嫌いって言ってあげたい。ポジティブにもネガティブにも心が瞬いた瞬間みたいなものを信じてあげたいなとはすごく思います。押し殺さないで。

 ──その考え方は作曲にも影響していますか?

草田 そうですね。自分の曲は誰かにウケたくて作っている曲ではなくて、自分がこれいいなとちゃんと信じたものが曲になっていると思うので。人様に聴いてもらいつつも阿すぎずというバランスがすごく大事かなと思います。自分の感性を信じていきたいです。

 ──将来の展望について聞かせてください。

草田 直近だと、10代の集大成として10代の時に作った曲でフルアルバムを出したいですね。そしてそれでツアーをやりたいです。あとは、大学卒業するまでに一回は海外で公演したいと考えています。
 将来的には主に海外を中心に活動したいと思っているので、そのためにも大学卒業したらヨーロッパかアメリカに音楽留学したいと考えています。僕の今の作曲方法って感覚的に作っている部分が大きいので、そうではなくて感覚的な部分をルーツに持ちつつ、理論的な作曲技法をアカデミックに習得したいですね。やっぱり感覚だけだとどこかで頭打ちになってしまうと思うので。理論を学んでそれも武器にしつつ、海外を中心に日本も往復しながら活躍できたらいいなと思います。

 ──どういった世界観を発信していきたいですか?

草田 比較的若い20代30代の時には、普遍的な世界観というか抽象的な概念、誰しもが影響を受けているものにインスピレーションを受けながら作っていきたいですね。あとは、音楽と社会は地続きだなとすごい感じているので、より年齢を重ねたときに、政治だったり社会だったりに切り込んでいけるような、問題提起できるような作品を作れたらいいなと考えています。

 ──音楽と社会は地続きだと感じた理由は?

草田 僕は広島出身で、祖父が被爆者なんですけど、やっぱり小さい頃から「平和」についての概念が自分の中についてて、「平和って何だろう」「なんで戦争は起こるんだろう」みたいなことをずっと考えていたんですよね。それを伝える手段って音楽なのかなってすごい感じてて。歴史的にも音楽って政治性がどうしてもついてくるみたいな部分があるし、政治性抜きでは語れないものもあります
 でも今の日本ってどちらかというと単刀直入には政治に対して切り込めない感じじゃないですか。政治と音楽は分けなきゃいけない、社会と音楽は分けなきゃいけないみたいな風潮がすごいあって。そうではなくて、例を出せばケンドリック・ラマーはちゃんと自分のラップだったりHIPHOPを持ってアメリカの黒人差別の問題にちゃんと切り込んでるし、ちゃんとそれに向き合って自分の音楽をプレゼンテーションしているじゃないですか。実際、ポピュラー音楽として初めてピューリッツァー賞を受賞していますし、それってちゃんと詩人として認められたってことですよね。それが僕の中ですごい大きくて、将来的にはそういう活動を僕もしたいと思いました。今の若い時だとまだ重みがないので、もっと老成してからそんな曲を発表したいと思っています。
 これはほんとにただの妄想なんですけど、2045年って戦後100年で原爆投下されてからも100年じゃないですか。そのタイミングで僕は45歳とかだと思うんですけど、僕のルーツである原爆と音楽を融合してどこかで発表できたらいいなと考えています。そしてその作品をもって、核兵器だったりとか今の状況に問題提起というか議論の火付けみたいなことができたらいいですね。

 ──「かっこいい」や「憧れ」などの価値基準に対して「イケてる」という言葉をよく使いますが、草田さんにとってイケてるとは?

草田 これは僕の周りの人の受け売りになっちゃうんですけど、あえてここで代弁したいと思います。イケてる人、coolな人って、「これなんか変だな」っていう違和感みたいなものを、有耶無耶にせずに、ちゃんとわかって自分の中で消化して、他の世間一般の人たちに「これかっこいいじゃん」って思わせられるように昇華できる人なんだろうなってすごい感じますね。ストラヴィンスキーとかは1913年に『春の祭典』というオペラを発表して最初賛否両論真っ二つに割れたけど今では「現代音楽の父」として讃えられていますし、日本ではどんぐりずというHIPHOPアーティストがいるんですけど、彼ら超ふざけてるし、バカみたいだし、変なんだけど、ちゃんとかっこよくなってるんですよ。そうやって他の人は変だと思うことを、自分の中である一種の哲学を持って、ちゃんと“かっこいい“に終着させることができる人がcoolでイケてる人なんじゃないかなと思います。

 ──カルチャーとは?

草田 色んな意味で「何かを動かすもの」だと思います。社会的に政治的にも動かすものになるし、経済的にもカルチャーを通してお金が回るという意味で動かすものですよね。そして精神的にも人を感動させたり心を動かすことができる。だから色んなことの変化を促すものだと思います。
 そして生きていくこと自体がもはや変化の連続だし、淀んでてはどうにもならないというか。やっぱり生きているからには進み続けなきゃいけない、成長し続けなきゃいけない。それを促し続ける潤滑剤みたいなものがカルチャーなのかなと思います。動くように、変化するように、そのサイクルを止めないようにするものなんじゃないかなと思いますね。


 ──本日(10/2)、3rd Single『Peak』をリリースされましたが、どのような楽曲となっているのでしょうか?

草田 描きたかったのは、「歴史上の人物のような様々な金字塔を築き上げてきた人たちがそれぞれに目指そうとした世界はどのような景色だったのか」ということです。それを山の頂上から見える景色と重ねて表現できたらなと思いこの楽曲を作りました。この曲は16歳の時に作ったもので、実は先ほどの賞を頂いた曲というのがこれです。

 ──聴く人に向けてのメッセージはありますか?

草田 自分のクリエイティビティというか創造性を発揮できるような場所だったり、人だったり、ものだったりをちゃんと自分で選択して、それを最大限に発揮してもらいたいなというメッセージ、ですかね。

 「音楽と社会は地続きで、音楽、カルチャーにはその社会を動かす力がある」そう語る彼に我々はハッとさせられた。公的、社会的領域とカルチャーを一緒くたにして考えることについては賛否両論ある。しかし、そもそもそこに壁など存在しないのかもしれない。
 自分がアーティストとしてどうありたいか、どうあるべきか。彼は自身の明確な信念、ビジョンとともにこれからも音楽を通じて伝え、動かしていく。

取材 Taiki Tsujimoto
構成 Nozomi Tanaka
撮影 Charlie Ohno

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