
インタビュー ダンサー JUMPEI
4歳の頃からダンスを始め、house/hiphopを中心とした独自のスタイルで数々のタイトルを国内外問わず獲得してきたJUMPEI。現在YDK Apartment を中心にダンスのみならず幅広く活動の範囲を広げる彼に、現在の活動に至る経緯、転機となった出会いから、根底にある彼自身の哲学までを訊いた。
逆境からクリエイティブを。YDKの今。
──それでは現在の活動を簡単に教えてください
jumpei ダンサーとして活動しています。YDKというクルーで活動していて、オフラインのダンスショーであったり、SNSをとおした活動であったり映像作品を作ったりなどしていています。個人でもショー作りなどはしていますね。
──以前はAlaventa*で活動されていたと思うのですが、現在の活動に変わったきっかけや経緯などはありますか?
* 名古屋、東京、 大阪を拠点に活動し、国内のみならず、海外の世界大会で数々の優勝経験を持つ若手ダンサーであるSANTA, Miyu, JUMPEIの3人によるダンスチーム。
jumpei Alaventaは3人でやっていて、その2人が今はアイドルグループとしての活動だったり個人活動だったり、それぞれの道にフォーカスしていて。一回Alaventaで話し合った時に一人のことに集中しようみたいになったんですよね。
そんなタイミングでちょうどVIBE JAPAN DANCECOMPETITION*っていう大きなコンテストがあって。僕自身はストリートダンス出身で小学生の頃からバトルなどに出ていたのですが、4.5年前から大人数のコンテストに興味を持って、今までVIBEみたいな大人数でやるコンペティションには挑戦していなかったので挑戦したいと思ってました。
*18年の歴史を誇る、L.A.で行われる最大規模のダンスコンテスト
──そこがきっかけなんですね。
jumpei そうです。コンペティションに興味を持っていた時に上京してから仲良くさせていただいていたYUTA*さんに一緒に出ないかって誘われて。そこで「出ます!」って即答したのがYDKの始まりでしたね。そのあとVIBEに出るためにメンツ必要だなってなって集まったのがいまのYDKのメンバーです。
*世界最高峰のダンスコンテスト「VIBE XXI Dance Competition」や数々のコンテストで 優勝。 AKB48、ゴールデンボンバーのダンサーとしても活躍し、世界で活躍するダンサー。
──そんなVIBEがコロナで中止になってしまいましたよね…
jumpei そうです。10日前にいけなくなって…じゃあこれからどうするってなった時に、なにか一個新しいことしたいっていうか、クリエイティブなものを作っていくほうにシフトしようってなったんですよね。
ある時、平井堅さんの怪物さんを踊った動画をtiktokにボンってあげたんですよ。そしたらバズッたので、そこからクルーの中でも映像編集技術のすごく高いKodai*さんを含め、みんなで、映像作品にも力を入れていこうってなりましたね。全員で作り上げた、映像作品はたくさんの方に評価していただけました。
*SuperMe/UWDUCT/YDK 所属のダンサー/クリエイター
「俺はダンスなんだ」
──人生の中で転機となった出来事や価値観が変わったことを教えてください。
jumpei 何回かあるんですけど、すごいちっさいときでいうと小6の時ですね。
ダンス自体は4歳からやってたんですけど、小6までは普通にテニスプレイヤーになりたかったんですよ。テニプリに影響受けて(笑)ダンスは親に言われてたからやってたんですよ。そんな中、大阪の区のテニス大会に出てみたらベスト32とかで負けて。(笑) 「テニスだめか」ってなって。ちょうどその時にダンスを習っていた先生が「お前いいやん」って褒められるようになって。「俺はダンスなんだ」ってわかった瞬間にコンテストとかバトルとか結構勝てるようになってきて。結構伸びたっすね。
──なるほど。本当の目標みたいなものが見えなくなったときに、一番乗ってるダンスが自分の場所だと感じたんですね。
jumpei そうです。それが一つ目ですね。あとは上京も転機でしたね。上京のタイミングでGKKJの「THE BLOOM OF YOUTH」*があったんですよ。そこに自分も作品を出してたんですけど、YUTAさんも出してたんですよね。そこで彼の作品にすごいくらって。結構凹んだんですよ。「こんだけダンス頑張っててもこんなにすごい作品作る人いるんだ。」みたいな。そっからフリ作りとか作品作りには一層熱がはいった気がしますね。
*世界的に活躍する日本のトップダンサーが集うダンスショーイベント
──そこでYUTAさんと出会ったのですね。
jumpei そうですね。今は毎日一緒に活動しているのでその出会いも転機かもしれませんね。
──YDKの活動もSNSや現場を通じて見させていただいていますが他ジャンルや社会人など多様なメンバーがいるチームな印象を受けます。難しさはありますか?
jumpei そうですね。決してゆるくはないんですけど、「がっちりクルーやっていくぞ!」というよりかは各々好きなことやっていいから「集まるとき集まるぞ」みたいなテンションなので居心地はめっちゃいいですね。
──逆にそれがいまのクリエイティブだったり縛られないイメージを出しているのかもしれませんね。
jumpei はい。そうかもしれません。
「全部正解だし、なんなら全部不正解だと思う。」
──活動を通して学んだことはありますか?
jumpei 実際なんでもいいんだっていうことですね。ダンスは表現なんで。ある程度基礎とかグルーヴとかタメとか、魅せる方法はいっぱいあったとしてもその人が踊るダンスに正解不正解はないと気づきましたね。
全部正解だと思うし、なんなら全部不正解だと思うし。その概念がダンスだけじゃない領域まで考えられるようにはなったのかなって思ってます。カッコよくいうと笑
──AlaventaやYDKなどの活動を拝見しましたが、フリースタイルだったり、逆にハウスメインで踊ったり、ジャンルや型に捉われないダンスをされている印象です。そうしたスタイルは意識しているのかただ、好きなのかどちらなんでしょうか?
jumpei そういうスタイルが好きな方だと思います。「ドストレートなハウス作ってください」って言われると僕苦手なんですよ。たぶん。
わざと王道から外してるってよりかは、好きなようにやって簡単に言うと自分がテンション上がる方に振り付けや構成を作っていますね。見ていてこっちの方が気持ちいいって言う感覚を大切にしていますね。
──”天才”みたいな側面なのでしょうか?
jumpei 天才ではないですね。足がちょっとだけ人よりも早く動くくらいです(笑)
──自分が大切にしてる価値観や信念はありますか?
jumpei 人として大切だなと感じるのはめっちゃ王道ですけど、「継続は力なり」ですね。
最近の話なんですけど、ダンス以外にカメラや映像も触るようになって。どんな分野にもプロだったりすごい上手い人とかっているじゃないですか。そんな人たちもみんな最初は「なんだこれ?」から始まると思うんですけど僕もまさに「なんだこれ?」だったんですよ。「どう動かすの?」「どうやるの?」ってなってたんですけど、続けていくとなんとなくわかってきてできるようになってきたんですよね。
ダンスは小さい頃からやっていて、継続してこういう経緯をたどっていったから今こんなスタイルでこういうスキルがあるんだなっていうのは分かるんですけど、この継続っていうのはどの分野でも一緒なんだなって改めて感じましたね。
──ダンサーとして大切にしていることはありますか?
jumpei バトルに出まくってた時代から今はショーを作るようになっているんですけど、今はマンネリしない。同じように踊らないってことを気をつけてますね。全然違う曲でも踊ってる人が同じだと雰囲気は似るんですよね。そこで動きまで同じしちゃったら「どの曲でもいいじゃん」みたいになるのでそこだけは気をつけてます。曲があってのダンスっていうのをずっと教えられてきたので。
曲のイメージの、それ以上でもそれ以下でもないところを目指すのがダンスだと思うので、自分も出すんですけどそれをうまく曲の方に持っていくようにはしてます。
──1人ではショーは成立しません。曲への忠実なイメージを生徒やメンバーに伝える難しさってどこですか?
jumpei カウントで教えないことです。
これは僕のダンスの先生のDOMINIQUEさんが言っていたんですけど、「カウントダンサーになるな」って。音は絶対抑揚があって、緩急があって、メロディーがあってグルーヴが下に入ってベース音が入って、みたいにいろんな要素があるのにカウントでフリを教えちゃうと踊りが点になっちゃうんですよ。1.2.3.4.ってメトロノームみたいになっちゃうので音で教えるようにしてますね。「ドゥン カッ タダッ」みたいに。
僕緩急と足の動きの速さだけは誰にも負けないと思ってるんですけど(笑)、そういう緩急の部分だったりを音で教えることで伝えるようにしていますね。

カルチャーに生きる上で大切なこと
──メディアのコンセプトとして”イケてる”ってなんだろうという疑問を掲げています。JUMPEIさんにとってイケてるとはどんな人でしょうか?
jumpei 自分がある人じゃないですかね。
ブレてない人が多分かっこいいと思いますよ。
──何をしていても?
jumpei 何をしてもというよりかは、自分の中に一個ぶれないものがあれば活動にもそれが影響して出ると思うんですよ。例えばダンスだったり。ダンス踊るとき別人格にはならないじゃないですか。自分の基礎の部分に強い太い芯があるとダンスにもそれが出てそれが”イケてる”っていう風に見えるんじゃないかな。
──周りの人でそう感じる人はいますか?
jumpei YUTAさんとか Daiki*くんですかね。自分に生きてるって感じますね。僕は。
*名古屋、東京で活躍するYDK所属のダンサー
──そういう人からも影響を受けて自分が形成されていく?
jumpei そうですね。
──JUMPEIさんにとってカルチャーとは。
jumpei ダンスでいうと最大の自己表現ができるものですね。ただ、ダンスだけじゃなくて例えばカメラでも、他のカルチャーでも、どんなことをやってても自分が今やっていることの価値だったり意味をどれだけ理解してるか、そのうえで自分の活動を楽しめているかっていうところがカルチャーに生きる上で大切なことだと思いますね。
──ありがとうございました。

今回の取材はJUMPEIが所属するYDKがゲストとして出演するイベントにて行った。現代におけるエンタメ危機に際して、万全なコロナ対策にコストを払いながらもオフラインのイベントを行う意味は彼の語るダンスカルチャーから見えてくるのかも知れない。
取材 Taiki Tsujimoto
撮影・構成 Shun Kawahara