【PERSONAL FILE】Film Maker Mariko Nishino 自分にも作品にも”フェイク”はいらない

UCLA:カルフォルニア大学ロサンゼルス校。毎年3000人が受け、数名のみが学ぶことを許される超名門校のFilm Majorに留学した日本人がいる。彼女が映像部門を志したきっかけは何だったのか。UCLAでの経験や留学後から展開する現在の活動、将来の夢など彼女の人生に迫る。

Mariko Nishino interview teaser

夢に向かって走り抜けた日々


──早速、現在の活動について教えてください。 

Mariko 映画監督を目指していて、現在は日本の大学に通いながら9月に撮影する映画のプリプロダクションを行っています。 

──映画製作を学びたいと思ったきっかけはありますか?

Mariko 幼少期からずっと映画が大好きで。本当に。

ただ、映画が好きなのと自分で撮るのとは全然違うものだと思っていたから、その業界の職について何かをしようとは思っていませんでした。そこから本気で映像業界に携わりたいって思うようになったのは高校からかな。

──大きな変化があったのでしょうか?

Mariko 当時ニュージーランドの高校に通っていたのだけど、周りに舞台やダンス、映像を作っていた友達が多くて、彼らにたくさんインスパイアされました。

──それから大学に入って留学して実際に学ばれたと思うのですが、なぜUCLAに行きたいと 思ったのですか?

Mariko UCLAのfilm majorには高校の時からから憧れがあったからだね。簡単に入れないのも分かってたから、日本の大学に入った瞬間、よし留学するぞみたいな感じの戦闘モードになってたかな(笑)

──UCLAだからこそ学べたことはありますか?

Mariko やっぱり人だと思う。 UCLAのfilm majorも、本気の「映画オタク」ばかりで。そんな人たちと一緒に勉強できたのは本当に嬉しかったし、学びになったね。 少数精鋭なのも質が濃くて良かった。 留学してすぐに学部別でウェルカムパーティーがあったの。200人くらいと友達になってやるって意気込んでたんだけど、そこで初めてfilm majorは15人しかいないと知ったの(笑)

最初はびっくりしたけど、少ない分めちゃくちゃコンペティティブで、同時に家族みたいになれたんだよね

──一番大きいのはやはり人だったんですね。

Mariko そうだね。でも、環境もやっぱり本当に凄くて。大学内にある映画館で授業をしたりするんだけど、本当に夢みたいだった!最初のクラスだと、映画館でそれこそゴッドファーザーとかそういう大作から見始めて。映画見ながら先生が途中で止めて「はいじゃあこのシーンの解説しまーす」 みたいな(笑)

 私にとっては全てが夢の夢みたいで。憧れていた環境で勉強できることが嬉しくて校舎を歩くだけでも感極まるくらい幸せだったね(笑)

──映画好きにはたまんないですね笑 

留学先UCLAでの一枚。

──日本とアメリカの映画のシーンの違いを教えてください。

Mariko 映画監督もアーティストだと思うから一概に日本はこう、アメリカはこうって定義できないと思うのだけど、アメリカの映画の方が製作手順としても、勉強としても体系化されている印象があるかも。もちろんこれも一概に言える話ではないけれど。

例えば、脚本のクラスですごく学びになったのはストーリーにも学ぶべき型が既に存在していること。最初5分までに何かがあって、15分までには出てくる主人公が何を求めているのか・何を目標にしているのかを伝える、とか。ミッションが課された上で脚本を作るような「勉強」があって。みんなそこを押さえた上でオリジナリティを出しているけど、根底の部分に体系化された 基礎があるなと感じました。


ノイズに左右されず、素直な生き方を


──ダンサーとしての活動にも精力的でした。活動のきっかけを教えてください。

Mariko 憧れていたクルーがあって、ダメ元でオーディションを受けてみたら通っちゃって。そこから始めたって感じだね。

──両立は難しいですよね

Mariko 大変だった(笑) ヘルウィーク(Hell Week)というのがあって、大会の1週間前は夜7時からだいたい朝の3時か4時まで毎日リハをするの。ディレクターが okって言うまでずっとやるんだけど、朝は学校があるからもう全然寝れないみたいな (笑)

でもそうやってダンスに打ち込んだことは 今後私が映画映像を撮りたいってなった時に絶対にいきてくるものだと思う。 ダンスから得た価値観だったり、好きな事を一生懸命やれたことはすごく良かったし、自分のためになると思う。

所属するNSU Modernのクルーとして出演したショーイベント。世界観とそのクオリティに驚かされる。

──今企画されている映画の題材もダンスを扱いますよね。テーマなど教えられる範囲で教えてください

Mariko そうだね。ダンスならではの表現力だったり、ダンスの現場で学んだことを映像の現場に生かしたくて。テーマとしては、一人一人が自分自信の声にちゃんと耳を傾けてほしいというメッセージを届けられるものにしたいな私たちは普段色んなノイズに囲まれながら生きていると思うんだよね。私自身もそうだけど、たまに自分を見失いそうになっちゃう。

 例えば大学卒業したらみんな就職するっていう道が既に作られていたり、社会からの視線だったり。そういうことに左右されすぎちゃって何か挑戦したいことがあっても、それをそもそも始めることすらできない人って多いと思う。 それはすごくもったいないし誰にも後悔して欲しくないから、そういう人にメッセージ を伝えられたらいいなって思ったの。映画を観た後に自分のやりたいことを、ほんと少しでもアクションに移してもらえたら、それはすごく幸せなことだなって思う。

──今まで生きてきたなかで大切にしている価値観はありますか?

Mariko 作品をつくる時、絶対に自分の生き方って透けちゃうと思うの。

だからこそ、自分の芯を常に持ち続けて作品にも自分にも正直でいたい、というマインドかな。

──自分がそのまま作品に出るっていうことですよね。

Mariko そうだね。「自分が透ける」っていうのは、

例えば、めちゃくちゃ単純にいえば、普段ポジティブに生きている人が演技したらそういう演技になると思うし、そういう人が脚本を書いたらそういう脚本になるみたいなこと。その逆も然りだよね。

何事にも正直に向き合っていけるようになりたいな。そのためにも自分の芯っていうものをずっと持って生きていきたいなって感じ

──確かにどんなカルチャーでもその人の表現するものはその人が透けている印象がありますその上でまりこさんの芯はなんなのでしょうか?

Mariko 素直さ。素直に生きたい。やっぱりフェイクなものって見ても絶対面白くないと思う。 映画を見に行く人って、映画館に行ってわざわざお金を払って映画に観に行くわけじゃん。 時間を使って、お金も使って。 これは個人の意見だけど、映画を観に行く理由は、リアルな人間のリレーションシップを見るためだと思うの。その物語設定が宇宙であれ、離婚や不倫だったり殺人現場であれ、そこで交わされる人間のリアルなやりとりってめっちゃ面白いじゃん。それを見るために人は映画館に行くんじゃないかなって。自分が普段経験しない状況で、人はどういうやり取りをするんだろうとか、そういうリアリティを観る為に人は映画館に行くと思うから、そこが嘘くさかったり、違った体現の仕方をしちゃうと何の面白みもないと思うんだよね。だからこそ、正直に素直に生きて自分にとってのリアリティを体現したいって思ってる。

ダンスを題材とした映像作品のコレオグラフも務める。

バックグラウンドを忘れずに、さらなる挑戦へ


──影響を受けた人やコンテンツはありますか?

Mariko 宮崎駿監督

人生で初めて映画館で観た映画が「千と千尋の神隠し」なんだ。以来ずっと彼の作品には魅了され続けて生きてきました。彼の映画はいつ観ても、観る度に感じることも違って新鮮。

──彼のどんなところがすごいんですか?

Mariko 人間ぽいところ!作品中でも、ありえないシチュエーションでも、めちゃくちゃ人間ぽくない? だって豚だけどめっちゃ人間じゃない?(笑)彼もやっぱり素直に体現することをすごく心がけているのではないかなと思っていて、自分の人生で体験したものを刻むように作品にされている印象がありますね

──そこからまりこさんが先ほどおっしゃっていた素直さ、正直さに繋がるのですね。 

──少し視点を変えて、映画を作られているなかで新しく学んだことがあれば、教えてください

Mariko 自分が思い描いてるものをビジュアライズする時にマジで妥協しちゃいけないってこと。 大切にしてる言葉に

“Be generous, but selfish enough to get your work done.”

っていう言葉があって。優しく生きていきたいけど、自分の作品を体現したい時にはわがままでいるべきだと思うし、絶対に妥協しちゃいけないなって思ってる。

──それほどの想いが詰まった映画なのですね。楽しみです。 

pictured on 6.26.

──将来の展望を教えてください

Mariko アメリカの現場に行きたい。今後は大学院を受験して監督分野をしっかりと学びたいな。

 いろんなものがどんどん崩されて従来のものが変わっていく今ってすごくチャンスだと思っていて。 そういう時だからこそ自分のバックグラウンドや日本人としての自信をしっかりなくさずに大切にしながら、学んでいきたいって思ってる。 

いつか自分の携わった映画を地元の映画館で観られたらすごく幸せだな(笑)

──最後に、あなたにとってカルチャーとは?

Mariko カルチャーとは自分の生き方そのもので、ルーツや背景を自分から言わなくても生きている上で透けてしまうものだと思う

──ありがとうございました

編集・構成 Shun Kawahara
取材 Taiki Tsujimoto

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