【PERSONAL FILE】Tattoo Artist Toku 少しずつ“前”へ

日本ではまだ馴染みが薄く、ネガティブな印象を持たれることも少なくない「タトゥー」というカルチャー。しかし近年、その印象は若者を中心に少しずつ変化してきている。今回はタトゥーアーティストとして活動するTokuを取材し、始めた経緯から、タトゥーの魅力、日本における理解、そしてカルチャーの捉え方までを訊いた。

Toku interview teaser
Toku Instagram

親友の存在


 ──早速なのですが、自己紹介をお願いします。

Toku はい、98年生まれの22歳で名前はTokuと言います。タトゥーアーティスト、彫り師をやっています。

 ──タトゥーアーティストになろうと思った経緯は?

Toku 僕は静岡出身で、元々美容師になりたくて高校卒業と同時に上京したんです。だけど就職したかったサロンに入れなくて。他に行きたいサロンがなかったので美容師になるのをやめました。それで何しようか考えていた時に親友のKota*に「タトゥーやればいいじゃん。」と言われて、「あいつが言うなら間違いない」と思ってすぐ機材揃えて始めました。自分もタトゥーは選択肢の一つにはあったんですけど、Kotaに言われたことで確信に変わりましたね。

*ファッションデザイナー。以前当サイトで特集。Fashion Designer Kota の記事はこちらから。

 ──やはりTokuさんにとってKotaさんは大きな存在?

Toku そうですね。専門学校に入るときに、たまたまスナップに載ってるKotaを見つけて。学校は違ったんですけど、やばいやつがいる、絶対友達になりたいと思いました。それで共通の友達がKotaと遊ぶって時に無理やりついていったんですよ(笑) それ以来ずっと仲良くて、今でも一番刺激受けるし、一番尊敬していますね。

Kota&Toku

自分の想いを形にして身体に残す


 ──タトゥーカルチャーに触れたきっかけは?

Toku 元々、高校の時からロックとかが好きでよく聴いていて、タトゥーが入っている人に何の偏見もありませんでした。初めて入れたのは、19歳の頃ですね。美容学校の友達に入れてるやつがいて、そいつが入れてもらっている人のとこに行って自分も入れてもらいました。

 ──タトゥーの魅力はどんなところにありますか?

Toku 一生消えないところですかね。自分の想いを形にして身体に残すことができるというのは、タトゥーにしかない魅力だと思います。

 ──タトゥーアーティストとしての技術はどこで学んだんですか?

Toku 僕は割とほぼ独学ですね。でもある程度やっていく中で「いやマジで難しいな」と思い始めて。それで友達が自分と同い年の彫り師を紹介してくれて、そいつとか本当に身近な彫り師に色々技術とか教えてもらいながら今もずっとやってるって感じです。弟子入りとかした方が成長スピードは速いと思うんですけど、自分は誰かが上にいる仕事がめちゃ嫌で(笑)自分で試行錯誤しながら突き詰めていきたいと思います。

 ──タトゥーのデザインについては何かこだわりなどありますか?

Toku お客さんに掘り始めてから、まだそんなに期間が経ってなくて自分のスタイルが確立しているわけではないんですけど、今現在ではオールドスクール、アメトラ系のスタイルが自分に合っているのかなと。でもやっぱり自分は、タトゥー以外のデザイン含めても、ダークっていうか、人の影が見えるような作品というのが昔からずっと好きなので、何描いてても明るいデザインというよりかは暗めなデザインになってくるかなとは思いますね。

 ──そういうのはやはり聴く音楽やファッションなどにも表れていますか?

Toku そうですね、ダークウェーブとかやっぱりよく聴きますね。行くイベントとかもそういう暗い系の音楽が流れてるイベントに行ってました。ファッションとかもどちらかというとそういった感じが好きです。やっぱり好きなモノが結局タトゥーにも表れてきますね。

 ──ファッションでいうと、Louis Vuittonのモデルをやられていますが、それはどういった経緯だったんですか?

Toku 知り合いにキャスティングをしていた人がいて、その人にオーディション来なよと言われました。で、後々話を聞いたら、Inez*っていうルイ・ヴィトンのフォトグラファーをしていた人が数か月前から自分のInstagramをフォローしてくれていて、その人が呼んでほしいっていう感じだったらしくて。あれは本当に運がよかったですね。

*Inez Van Lamsweerde:オランダ出身の世界的ファッションフォトグラファー。Inez and Vinoodhという2人組で活動している。


どんなことでも“前”には進んでいく


 ──タトゥーアーティストとして活動していく中で何か感じていることはありますか?

Toku 僕がいるシーンにはタトゥーに偏見を持っているような人はあまりいないし、若者の理解はすごい広まってきていると思うのでそれはいいことだなと思っています。でも逆に彫り師が最近すごい増えてきている印象があって。それに対しては嬉しさと若干の焦りは感じています。モデルをやっていたことで少し知ってもらえてて、そんな自分が彫り師を始めたのを見て「あの人ができるなら俺もできるかも」と思われちゃうのはちょっと嫌ですね(笑)「ちゃんとむずいよ、そんな簡単な職業じゃないよ」とはやってて思います。

 ──日本全体におけるタトゥーへの理解についてはどう考えていますか?

Toku  タトゥーって割とマジでアングラな領域じゃないですか。それこそやっと今の日本でファッションとして、認められてはないですけど、だんだん理解はされてはきているかなって感じで。でも僕は割とこの感じが好きなんですよね、あまり認められてない感じが(笑) もちろん、日本のタトゥーカルチャーって海外と比べたらめちゃくちゃ遅れていると思います。日本はタトゥーが入っているとバイトできないとか温泉入れないとか色々ありますけど、海外ではそんなことないですし。でもだからこそ、タトゥー入ってるのが珍しいとかかっこいいとかっていう考えが生まれるとも思っていて。
 でももちろんみんなの理解がもっと深まっていって、タトゥーいいよねって思ってくれる人が増えるっていうのは、個人的にタトゥーが好きな身としては嬉しいですけどね。逆にタトゥー何も入ってない人に入れるというのは、こちら側の世界に引き込むということにもなるかなと思うので、責任感持ってちゃんとしたタトゥーをやらないとなと思っています。

 ──今後の展望について聞かせてください。

Toku タトゥーだけのタトゥースタジオというよりかは、僕は彫り師で他に周りのアートワークやっているやつとか美容師の友達だったりを集めて、なんかクリエイターチームみたいなものをつくって、一緒のスペースで色々活動したいなって考えています。色々な分野が集まっているアトリエみたいな。きっとそれが一番楽しいと思うし、昔から僕がやりたかったことなので。若い世代みんなで上に上がっていくみたいなことができたらいいですね。

 ──最後にTokuさんが考える「カルチャーとは」を教えてください。

Toku 三代目彫よし*さんが以前インタビューで「刺青に限らず文化はすべからず向上すべきもの」と言っていたのを見て、間違いないなと思って。色んなことが積み重なっていって、どんなことでもとりあえず前には進んでいくものなのかなと僕は感じています。タトゥーも今よりも世間の印象が悪くなることはないと思うし、これから自分の活動を通じてタトゥーへの関心がちょっとでも深まって前に進んでいけたらいいかなぐらいには思っています。

*日本の彫り師界の第一人者

 ──ありがとうございました。

一生残るがゆえにその人の想いが強く表れる。タトゥーとは、繊細で奥深い芸術作品なのだ。アートやファッションとして注目されつつある昨今、日本でもその理解は広まってきている。このカルチャーの可能性を強く感じた今回のインタビューであった。

取材・構成 Nozomi Tanaka

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