文化服装学院を卒業後、若くして自らのブランド “cota” を立ち上げたKota Kawai。先日「苔」をコンセプトにした第一弾のコレクションを発表した。
常に様々な分野に目を向けている彼の信念とは、コンセプトの裏に隠されたテーマとは。そこには「変化」というキーワードが浮かび上がってくる。
「自分のものは自分しか作れない」
──ご自身の現在の活動を教えて頂いて宜しいでしょうか?
Kota “cota“というブランドを運営しています。それとは別にELEPHANTというセレクトショップのリメイクの生産をしています。今年の4月までは文化服装学院に通っていました。
──服飾に進もうと決意した理由は何ですか?
Kota まず、やりたくないことをやることが自分には難しかったんです。自分はやりたいことをやろうと思いました。
そこで、自分には何ができるかを考えて、それが自分にとっては服だったという形ですね。
──小さい頃から服に興味があったんですか?
Kota あったんですかね、どうなんだろう。ここだ!ってタイミングは無かったんです。気づいたらって感じで。ずっと塩辛嫌いで食べれなかったのに、いつのまにか食べられる様になってたあの感覚に似てました。
──中高時代から服に興味を持たれたということですが、周囲の人とは感覚が違うという意識はありましたか?
Kota 結構ありましたね。ジャケット逆さに着たりもしてました。
ココ・シャネルの名言で、「私の着る服を見てみんな笑ったわ、でもそれが成功の鍵なの」みたいな名言があって、当時はそれがかっこいいなと思っていましたね。
──一番最初にビビッと来たブランドはありましたか?
Kota 一番最初でいうと、知識が浅い中で初めにプレタポルテ*で目につくのってやっぱり、Comme des GarçonsとかYohji Yamamotoとかあの世代じゃ無いですかね、「タブーを正解に変える力」にというのにすごく惹かれたのを覚えています。
*高級な既製服のこと
──やはり、今でも好きな服のスタイルはそこに影響を受けているんですか?
Kota 受けて無いです。固執は視野や可能性を狭めてしまうと思っていて。結局人間味というか、それってもう座られている椅子じゃないですか。前提として当然リスペクトはありますが、ムードとかも含めて自分のものは自分しか作れないと思うので、常にそこを探しています。
──自分の人生に影響を与えたものや人生の転機はありますか?
Kota それが以外とないんですよ。だけど毎日の小さい選択の結果が今の僕だという認識は大切だと思っています。

「意識しなくても、時代観というものはハマってくる」
──ご自身のブランド “cota” の立ち上げの経緯を教えてください。
Kota 2019年の夏くらいに最初グラフィックのプリントを中心とした、90‘sらしさやユースらしいムードのブランドを出しました。4人で活動していたんですけど、全員に役割が振りきれない中でデザインをきめて業者に渡すという形でした。みんな感覚が違う中で、4人が100%の力を出し合ったものができなくて、妥協しあって出してる形になっていました。買ってくれる人もいたんですけど、やっぱりやっていく中でプリントを業者に頼む形ではなくて、ちゃんと自分で服を作りたいと思いました。それで前のブランドをやめて、11月に立ち上げて約1ヶ月で展示会まで行きました。
──前回のブランドを辞める前から、自分のブランドの構想はあったんですか?
Kota それはずっとありました。
結局、服ってどれも一緒というか、出尽くしてる分野で、だから結局物自体にコンセプトや価値がないと難しいなと感じていました。だからブランド自体にストーリーをつけようと思いました。
──最初のコレクションは「苔」というコンセプトでしたがどのような意味があるのですか?
Kota「苔」ははじまりという意味です。次は「苔が枯れる」という表現でまたコレクションをやります。
そして次のシーズンで水を与えて、そして次は花が咲いたり、という様なコンセプトで続けて行きたいです。地球のサイクルです。空気があって生き物がいて、人が生まれて、人から音楽やアートが生まれて、また廃れて自然に帰るというサイクルを表現して行きたいです。
──その発想のインスピレーションは何から受けましたか?
Kota 時間です。時間って凄いなぁと。何もしていなくても先があって戻れない。100年後にはみんな死んでるし、尊い。僕たちは毎日そういうサイクルに生きてるじゃないですか。
──ブランドに関して、トレンドなどは意識してますか?
Kota 前提として自分が着たいものを作ってます。
そして、その自分は、自分のいる環境や生活、聴く音楽や観るものからできているものなので、意識しなくても、時代観というものは自然とハマって来ると思います。それが時代のシーンであり僕のシーンだと。
あとは、デザインをするにしても、服作りのベースがしっかりしてた方がいいですし、デザインを重視しすぎて、縫製が雑になったりしたくないと思っているので、物作りとして最低限のラインってあると思います。
──ブランドに関して音楽のプレイリストも出されていますが、どの様な意図ですか?
Kota 展示会をやる予定がコロナで難しくなってしまって、大きいブランドは色々動いてると思うんですけど、僕らみたいなまだ規模が小さいブランドは展示会がなくなると見てもらえる場所がなくて活動が止まるんですよ。
活動を止めるっていうのが僕は好きじゃないので服以外の発信もしようかなと。ブランドは服だけしかやらない、例えばマスクは作らない、とかそう言う人もいるんですけど、僕の中ではブランドの価値はそこだけじゃないと思っています。音楽などをあげても、「僕自身」や「やっているもの」のクオリティは落ちないので。その活動も自分の中の変化だったりするので。
「服を考えているときに、生きてるという感覚を得ることができる」
──服飾という仕事はご自身にとってどういう意味を持ち合わせていますか?
Kota 服は難しいラインで、ビジネスもあって、アートにも振り切れない部分があって、一概には言えません。
それこそユニクロとかのファストブランドなどのシンプルなものや、雨が降った時のカッパなどは生活に必要なものだけど、僕らが作っているコレクションなどは必要不可欠ではないものです。
結局は心のどこかを豊かにする可能性があるのかなと思います。
──ご自身の作る服は一般の人にも届いてほしいですか?
Kota 届いてほしいですね。
音楽とかもそうだと思いますけど聞いた時の高揚感ってあるじゃないですか。例えばゴリゴリのhiphopを聞いていたら自分が強くなったような感覚になって、電車の中大股で歩けるようになるとか。そういうものって瞬間でも影響があると思っていて、そういう意味で服もそういう感覚的な部分で、着る服によって1日の気分が良くなったりすると思います。そういった間接的な部分で影響を与えられたらいいなと思います。届いてほしいと思います。
──仕事をする上での信念はありますか?
Kota 変化ですね。常に変化を欲しています。
僕は服を作って出した時にはいいものだと思って出すんですけど、結局いつも満足できません。だから、そこに毎回変化を加えて次を模索していきます。
同じものを作るのは退屈ですしね。
──服を作るモチベーションは何ですか?
Kota 服を考えているときに生きてるという感覚を得ることができることです。
あとは、結局自分の表現を見てほしいっていうのがあります。自分が何を考えていて、どういうマインドで行動しているかということが、誰かに伝わって、誰かが何かをやってみよう、自分も何かできるかもという反応が帰って来れば一番嬉しいです。
すごいな、っていう反応はもちろん嬉しいけど、触発させるのが理想です。
「常識の外側」がカルチャーになる
──今後のビジョンを教えてください。
Kota もちろん自分のブランドの活動を大きくすることですが、僕は椅子が好きで、チェアアートとか、感覚の展示をしたいです。
服は着て初めて完成するもので、椅子もそうです。座って起きるアートという認識で、人ともののアートは興味があります。
──他のカルチャーシーンへの関わり、関心はありますか?
Kota あります。特に音楽ですかね。
ヒップホップ、ハウスやテクノも聴いてます。
音楽ってすごいなと思います。死んでも声が残るし、行き詰まった時に聴く音楽の力って大きいです。
カルチャーに関わるイベントとか、クラブとかファッションのイベントとかには常に行ってたいなというのはありますね。
もちろんダンサーとかラッパーとかいろんな方、他のカルチャーのみんなすごいなと思ってます。みんな目が輝いているじゃないですか。素敵だなと。
自分もそういう生き方をしたいなと思います。
──どんなジャンルを聞かれるんですか?
Kota やっぱりhiphop、テクノ、ハウスが多いですね。仲良くしてもらってるアーティストラッパーとかも聞きます。最近は、友人に教えてもらった So Inagawa の曲はよく聞きます。
──自粛中はどのようことをしてますか?
Kota 服のデザイン、リモートでのミーティングなどもしてますし、ブランドのことだけじゃなくて、DJをしたり、映画を観たり、音楽を聴いたりのインプット期間でもあります。
──服だけに関わらず、様々なことを考えてると言うことですね。
Kota そうですね、普段見ないところも見るようにしています。毎日ちょっとずつ生活に変化を持たせてますね。例えば掃除機をかける範囲を広げてみたり笑
散歩も屋上探してみて行ったり、逆に散歩をやめてみたりしています。
──やっぱり止まってたくない、変化が欲しいという感じですか?
Kota そうですね。その方がメリハリつくし、頭も回るし、同じとこにいたらしんどいですし。考えることをやめたら人のクリエイションって死んでいくじゃないですか。
──同世代で意識してる人はいますか?
Kota いません。もちろん他のカルチャーの人たちはすごいなと思ってます。ただ、別に誰が何やったから俺も頑張ろうというのはなくて、あくまで自分は自分のタイミングで僕のペースがある。
自分のやりたいことをやっていれば最後は成功するだろうなという自信はあるので、焦りはないですが、みんな楽しそうでいいなと!
──最後に、Kotaさんにとってカルチャーとは何ですか?
Kota 難しいですね。
ただ「常識の外側」というワードはしっくりきます。
この言葉は舐達磨の100 MILLIONSのリリックにあったと思うんですけど、それぞれのカルチャーってそのカルチャーにいないと感じれないもので、普通の生活で起きない事柄がカルチャーになるという感じです。言うなれば「刺激」です。
──ありがとうございました。
常に変化を欲し、服飾というものを大きく捉えている姿勢こそが彼の自信に満ち溢れた言葉を裏付けていると感じた。変化というものは、時に人々に恐れを感じさせる要素の一つであるが、彼はそれすらを当たり前のように楽しんでいる。彼の今後の活動から目を離せない。
取材・構成 Taiki Tsujimoto
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