【PERSONAL FILE】岐阜長良川鵜飼船頭・踊り子 新城愛優 “鵜飼”から“UKAI”へ

岐阜県岐阜市を流れる清流長良川で行われる、1,300年もの歴史をもつ鵜飼。この伝統文化に携わる女子大生・新城愛優。一見”普通の”女子大生の彼女がなぜ伝統文化に携わり、どんな景色を見ているのかを訊いた。


日本の文化と岐阜を体験し、伝える


 ──現在の活動について教えてください

愛優 岐阜長良川鵜飼の船頭と踊り子をやっています。踊り子としては、鵜飼が始まるまでの間に踊り子専用の踊り船に乗って、一度に6人くらいの踊り子が浴衣を着て日本舞踊を踊ります。音楽は7種類で、全て鵜飼や長良川、柳ケ瀬に関係したものです。船頭としては、鵜飼をみせる時に鵜舟の近くにお客さんが近づけるようにお客様の船を運転します。つなぎの間で何もない時間には、鵜飼の歴史だったり漁法だったりを説明します。

 ──なぜそのような活動をしようと思ったのですか。

愛優 大学に入学して異文化交流をしたいと思っていたので留学生チューターを始めたり、留学生と関われる留学生サークルに所属したりして色んな国からの留学生と交流するようにしていました。初めは自分が学びたいという思いでそういう異文化交流をしようと思っていたんですけど、参加しているうちに岐阜についてや鵜飼について、着物の文化について色々質問されて。でも全く答えられなくて悔しいし何とかしたいし、もっと岐阜や日本について知ってもらいたいって思って何かしたいと漠然と思ってました。なんとなくちょっとずつ勉強したり、説明できるように日本にはこういう文化があって英語で説明するならこうなって、、って考えてはいたんですけど、詳しいわけではなかったです。そんな中で、大学二年生の冬に岐阜長良川鵜飼の踊り子の募集が岐阜の公報であって、それを見ていいチャンスだと思って応募しました。踊り自体は元から好きだったので。

 ──高校時代のチアリーダーとか?

愛優 はい。でも日本舞踊は今までやったことのないジャンルだったので興味を持って始めようと思いました。で、面接が終わった後に鵜飼観覧船事務所の所長や事務員と喋っていて、「これからよろしく。」とか言われてて。その時に「ちなみにだけど船頭もやらない?」って声をかけられて。元から船頭を募集していることも知ってはいたんですけど、小さい頃に舟に乗った記憶では男の人とか高齢の人が多いイメージがありましたしやるつもりはありませんでした。でもそうやって声をかけられて、それがきっかけで考え直して、やろうかなって方に傾いていきました。

日本について伝える為にまず自分がよく知らないといけないじゃないですか。単に本とかネットで知識を蓄えることはできるんですけど、やっぱり自分の体験から得た知識とかその体験自体を伝えられたらいいなと思ってて。そう考えると踊り子よりも船頭の方がより深く長く関われそうだったので、不安もたくさんありましたけど、決心しました。

 ──よくそこで決心しましたね。

愛優 一番はちゃんと知らないとなって。踊り子は踊りを覚えて披露するってだけで終わってしまって、お客様と直接関わったり質問対応をしたりすることはないので。それに対して船頭は実際に自分で鵜飼の舟を漕いで、自分が間近で見ながらお客様に今は何々をしていて、みたいな説明ができてとてもやりがいがありそうだなと思いました。直接的に鵜飼やお客様と関わってる感があるから、知識を深められますし。

あとは、特に海外の人に伝えたいっていうのが私の中にあって、大学で専攻している英語を使って観光に来る外国人の方に説明してあげられたらいいなと思いました。留学生の子に鵜飼の感想を聞いてみたんですけど、説明が難しかったって結構言われてて。日本語で話されたし早口で、日本語がペラペラじゃないと分からないって。勉強をしにきた留学生である程度知識があってもそうなのに、全然知識のない観光客は説明を理解できないまま帰ってるんだなって事を知って、何とか貢献したいなと思っていたのもあります。最終的には鵜飼の世界での知名度をあげたいです。広めたいから、知ってもらうためにちゃんと伝えたくて。観るだけと説明を聞いて理解したのだと満足度も全然違うと思うので。だから、最大限おもてなしをして、気に入って帰ってもらって、広めてもらいたいって思ってました。


鵜飼を世界に伝えたい


 ──自分の価値観に影響を与えたモノは?

愛優 そもそも海外に興味を持ちだしたのは、高校2年生の頃に教わっていた英語の先生の影響です。受験のための英語、知識だけを教え込む感じではなくて、雑談が好きな先生でした。海外のこんな社会問題あったよねとか、ここではこうらしいみたいな。海外についての情報を授業の中に盛り込んでくれて、何か言われたって訳ではないんですけど興味を持つきっかけになりました。
あとは友達です。高校の友達もそうですけど、岐阜大学で頑張っている友達が周りにいて影響を受けました。例えば看護学生に向けての情報発信メディアを一人で立ち上げている人がいて。他にも大学の新入生向けとか学生向けに情報発信するメディアをやってる友達がいたり。方面は違いますけど、学校の勉強とは別に色んな事に積極的に挑戦していく事のハードルが下がるというか、身近に感じるので自分もやってみようと思いました。そういう友達にイベントに誘われて、参加するとまたそういう何か頑張っている人の集団に入れて友達も増えて、またハードルがどんどん下がっていきました。

先生の授業で海外への興味を持ち始めて、周りの友達のおかげでチャレンジのハードルが下がっていったっていう感じです。

 ──海外にもよく行ってますよね?

愛優 好奇心は旺盛でいろいろな世界を見たいので海外にはよく行きます。その国ならではの食べ物を食べたり、慣習に触れたりするのが楽しいので、海外旅行は好きです!
あとは、旅行とは別でこの間は教育関係の勉強でブラジルに行ってきました。岐阜とか東海地方はブラジル人が多くて、私の友達でも小学生の頃に困っている子がいて。そういう勉強をしたいと思っていたら募集があって。

留学にも夏から行く予定だったんですけど、多分半年から1年後になります。海外に行った時に岐阜のPRをすることができたらいいなという思いもあって。日本にいるままできることはちょこちょこやってるつもりで。自分自身が海外に行ってプレゼンのようなことをしながら発信してそれが広まっていってくれたらいいなと思っています。留学に行った先で広める為に岐阜を旅行して、宣伝する材料を撮って、編集して準備しているところです。楽しいです。GoProと一眼を持って。

 ──今後の展望を教えてください

愛優 一番大きな目標は『“鵜飼”を“UKAI”へ。』心の中に留めていたテーマです。TSUNAMIとかって海外で伝わる言葉になってるじゃないですか。NATTOとかSUSHIとかも。鵜飼は今は伝わらなくて、UKAIって言ってどういうものかわかるくらいには知名度をあげたいなっていう。シンプルなテーマです。元々は日本について知りたいという気持ちがあって、神社で巫女さんをやっていたときに神道や宗教、日本特有の概念を神主さんから学んだり、着物の着付けを勉強したりしていました。鵜飼も日本について知るための色々な活動の一つだったんですけど、岐阜出身で岐阜を推していきたいので岐阜を認知してもらうきっかけとしてやっぱり鵜飼を一番推したいです。

海外の人は日本って言うと東京とか大阪とかをイメージすると思います。観光で訪れるのもそういった都市が多くて地方は注目されないじゃないですか。何回も日本に来たことがある人なら行ってみようってなるかもしれないですけど。大都市ばっか注目されてるから地方の魅力も知ってもらいたいし来てもらいたい。盛り上げていきたいと思ってます。岐阜にも魅力はたくさんあるんですけど、それが認知されないと宝の持ち腐れになってしまうじゃないですか。だから、鵜飼を岐阜に興味を持ってもらうきっかけにしたいということです!岐阜のそれぞれの観光地が他県の同じような観光地を押しのけて世界に認知してもらうってなかなか厳しいと思うんですよね。でも、伝統も迫力もあって県としても注力している鵜飼なら、それができると思うんです。
ただ、鵜飼を職業にはしたくなくて。鵜飼には関わり続けたいけど給料は別にいらないから、仕事とは別の活動としてですね。だから別の方法で発信する事にフォーカスして広め続けていけたらいいなと思ってます。

実は、鵜飼に限らず岐阜について発信するwebページをつくることにしました。前からそういうものをつくろうとしてたんですけど、この前たまたまORGANっていう長良川地域の持続可能な地域づくりを支援するNPO団体の理事長の蒲雄介さんという方と会って。普段は入れないところに入れてもらったりとか、人に会わせてもらったりとか、協力とアドバイスをもらえたんですよ。その方に「今やろう!」と言われたのもあって、すぐ始めることにしました。


伝統文化をカルチャーに


 ──他のカルチャーへの関心はありますか?

愛優 映画ってカルチャーですか?自分的にはめっちゃカルチャーだと思うんですけど。映画は大好きです。映画自体がカルチャーだと思うんですけど、映画の中にその国の文化を表していると思うんですよ。私が海外の映画を観るのはその国の文化を知る手段の内の一つです。例えばインド映画だったら登場人物がいきなりみんなで踊り出すみたいな、その国固有のイメージがあるじゃないですか。それぞれ年代ごと、国ごとに特徴があったり、社会問題とか大衆文化とか色々表してたり、ライフスタイルも知れますし、そういうイメージです。勉強ってわけじゃないんですけど。人と人の会話とか生活している様子を映してるから、この人たちはこうやって考えるんだとか、価値観を感じ取れる気がして好きです。北欧映画とか良いです。エンタメ要素は少なくて、社会問題を取り扱っているような暗めの映画が多いんですけど。あと全体的にのんびりした印象で展開がゆっくりです。映画まで。(笑)作っている人たちがそういう価値観とか考えを持ってるから映画もそういう風に近づくと思っているので、そういうものとして楽しんでます。

 ──最後に、あなたにとってカルチャーとは?

愛優 文化って言われるのとカルチャーって言われるのでちょっと意味合いが違うように感じてて、文化って言われると伝統あるものってイメージなんですけど、カルチャーって言うと割と新しい、伝統にとらわれず広められている最中みたいなイメージがあります。なんでもありみたいな。文化は伝統だから形を変えずにそのまま継続していって、今できることはその形のまま守るってことだけど、カルチャーは時代に応じて自由に変わっていくっていうイメージです。

鵜飼に当てはめると、1,300年の歴史があってずっと続いてきてるので文化って感じで、高齢の方や男性がメインだったり古臭いイメージだったりで近寄りがたいとか固そう、渋いっていうイメージがあります。でも、私が船頭になってテレビとか新聞で紹介されたことで鵜飼のイメージが変わったそうなんですよ。女子大生が船頭をやってる。女性というだけではなくて若い子がやってるってことでより身近に感じたそうで。そういうのがもっと影響を与えてもっと多くの若者が鵜飼に携わって欲しいし、もっと印象が変わっていくと思う。そういう新たな鵜飼を作っていけたらいいなと思っています。

鵜飼は文化って感じだったけど、鵜飼ももっと若い人に楽しんでもらいたい。伝統文化として継承しながらも、カルチャーとしての側面も生まれていって欲しいです。

──ありがとうございました。

一見すると”普通の”女子大生な彼女から、地元・岐阜、日本への強い思いが感じられた。鵜飼の他にも様々な日本の伝統文化に関わる彼女は、今後も海外に向けて岐阜、日本をPRしていく。地元と世界に橋を架ける20歳の彼女の今後から目が離せない。

<FIN.>

取材・構成:Tsukasa Yorozuya

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