【PERSONAL FILE】Dancer Minami Kobashi ダンスを通じて伝統を繋ぐ

日本伝統の舞と近代のジャズヒップホップダンスを融合したスタイルを踊る女性ダンスカンパニー『新井風味』。その一員として昨年10月にデビューした学生プロダンサーがいる。彼女の名は小橋みなみ。若くしてダンスを仕事として踊る彼女に、ダンス・日本舞踊との出会いから、プロダンサーになるきっかけ、伝統文化を継承し広めていく意義、そしてカルチャーの捉え方までを訊いた。

小橋みなみ Interview Teaser
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ダンスとの腐れ縁


 ──早速、現在の活動について教えてください。

小橋 現在は学業と両立させながら、プロダンサーとして活動を行っています。『新井風味』という日本舞踊と近代のジャズヒップホップダンスを融合させたスタイルを踊る女性のダンスカンパニーに所属しています。

 ──ダンスはいつ頃からやられているんですか?

小橋 母がピアノの先生で芸術に力を入れて私を育てたかったみたいで、二歳の時からピアノ・歌・クラシックバレエを始めました。なので最初はクラシックバレエですね。高校生の時には世界共通のバレエ講師の資格を取りました。
また中高と創作ダンス部の強豪校に通っていて、そこでクラシックバレエ以外のジャズダンスやヒップホップダンス、チアなどのジャンルにも触れました。

 ──色々やられているんですね。日本舞踊にはいつ頃出会ったんですか?

小橋 祖父が神社の神主だったので、小さい頃から巫女としてご奉仕をしていました。なのでそこで神楽とか巫女舞とか舞踊とかに自然と興味が湧きました。でも、自分はまずクラシックバレエの基礎を固めたいと思ったので、本格的に始めたのはバレエの講師の資格を取った後からですね。

 ──ダンスを小さい頃から続けてきた中で印象的な出来事はありますか?

小橋 高三で大学受験が終わってから入学式まで暇な時期があったので、宝塚音楽学校を受験しました。これは受験科目が歌・演技・ダンス・バレエという今まで自分がやってきたものだったので自分の力試しじゃないですけど受けてみようと思って。この受験を通して芸術に真剣に向き合ったことで、表現者として舞台で活躍してみたいという思いが強くなりました。

 ──やはりダンスは好きで続けて来られたんですか?

小橋 正直、私はダンスが好きかって言うと、んーって感じです。親に言われてやっていた部分も大きかったんですよね。でもじゃあなんで続けているかというと、自分からダンスを取ったら自分じゃなくなると思っていて。私は言葉で表現するよりも、身体を使って表現して気持ちを大勢に伝えるというのが得意だったから、それがなくなったらただのつまらない人間になってしまうと思って今も続けています。腐れ縁っていうとちょっと微妙ですけど、一生付き合っていかなきゃいけないものなんじゃないかなと思っています。


プロダンサーとしての覚悟


 ──プロダンサーになろうと思ったきっかけは何だったんですか?

小橋 大学入学後、競技ダンス部に入部しました。一年間社交ダンスにのめり込んで賞なども頂けてとても楽しかったんですけど、もっと外を見てみたいというか、自分の力を試してみたいって思い始めて。小さい頃から、「自分の身体表現を通して人を笑顔にしたい」という根幹がずっとあったので、それをこのまま部活の中だけで終わらせたくないと感じるようになりました。そこで、プロダンサーになれば、映像に残ったり、発信力も上がるので、プロになってもっとたくさんの人に自分から届けたいなと思い、オーディションを受けることにしました。

 ──なぜ新井風味のオーディションを受けようと思ったんですか?

洋舞(クラシックバレエなど)と和舞(日本舞踊)を学んできたので、せっかくならどちらも生かせるものをやりたいと思っていました。そうやって探しているときに、オリンピックのダンサー応募サイトの下に新井風味が載っていて、その動画で和と洋の融合が高いレベルでされているのを観て惹かれたので受けることにしました。

 ──実際にプロダンサーとして仕事で踊ってみて、いかがでしたか?

小橋 趣味を仕事にできるのは幸せなことですが、その分相当な覚悟がないと厳しいなと感じました。趣味として踊るのであれば、自分の満足のために自由に踊って楽しんでも問題ないです。でも仕事ってなると、お客様がいて、その方々の要望に合わせた踊りをしないといけません。色気を出した踊りをしてくださいとか、スタイリッシュに踊ってくださいとか。あとはお客さんの反応を見てアドリブで踊ることを求められます。自分が好き勝手に気持ちよく踊ればいいというわけではないんですよね。あとは仕事なので責任がとても大きいです。ミスを犯したら、それ以降の仕事のオファーが自分のグループの会社に入ってこなくなります。また、自分のグループにはダンサーがたくさんいてぶっちゃけ代わりはいます。なのでミスは許されないというプレッシャーは常にありますね。


伝統を紡いできた人の価値を守る


 ──洋舞と和舞どちらも学ばれてきたということですが、その二つの違いはどういったところにありますか?

小橋 まず簡単なことでいうと、欧州の建築などからもわかると思うんですけど、洋舞は華やかさを求められますね。逆に和舞はおしとやかさみたいなものを重視します。なので色気を出すときも目や首をほんの少し動かすだけで表現するなど、あまり大きな動きをしません。
あと、根本的なところで言うと、踊りの違いってその踊りが生まれた場所の文化や価値観が踊りに表れることで生まれると思っていて。例えば、クラシックバレエって上に上にって引き上げていくダンスなんですけど、これは上に神様がいるというキリスト教の考えに由来しているとも言われています。でも逆に日本は農耕民族だったことから、昔は大地に神様がいるという考えが主流だったらしいんです。なので狂言や日本舞踊は重心を上げずにすり足で踊ることが多いんですよね。

 ──日本舞踊など、伝統文化を継承していく意義についてはどのように考えていますか?

伝統を紡いできた人の価値を守るということかなと思います。祖父が神主だったこともあって伝統を必死に守っている人を間近で見てきたので、そう簡単にそういう人たちの努力を無にはできないなと思います。
でも、そもそも伝統文化とは何かということに対しては正直ずっと疑問を持っています。もちろん日本文化は好きですが、商品化された海外に示すための日本の伝統文化というのもあります。何が本当の日本の伝統文化なのかというのはすごい考えますね。

 ──伝統文化をより広めていきたいという思いは持っていますか?

小橋 それはもちろんそうですね。海外には、ガチガチの日本の伝統文化が好きだという人もいますが、一般的には国内も含めて、伝統文化は敷居が高いと感じる人が多いです。だからこそ、新井風味などのように現代の人気のあるカルチャーと融合させることで、ちょっとは興味を持ってくれる人が増えるんじゃないかなと思います。  
でも、そのような融合したものは、本当の古来の伝統舞踊とは別物とするべきかなと思います。伝統舞踊を生まれてから死ぬまでずっと本気でやってきた方の中には、そういった融合を好まない人もいます。多くの人に知ってもらう機会として、その時代にあった形を提示していくことはすごい大事だし賛成ですが、そこは切り離して考えるべきかなと思いますね。


今ここにないものを表すのがカルチャー


 ──ご自身の価値観について伺いたいんですけど、生きる上で何か大切にしていることはありますか?

小橋 昨年の12月に人の命は儚いものだなということを身をもって強く感じる出来事がありました。それからは一分一秒を死ぬ気で生きようと思い始めましたね。長生きすることがいいこととも限らないのかなと。身体を壊さないように無理しないで生きるというよりも、少し無理してでも今できることを120%全力でやって、最後の最後まで何かを全力でやって死にたいと今は思っています。まあでも自分が病気になったらこの価値観は変わるのかもしれないですけどね。

 ──今後の展望について聞かせてください。

小橋 私の大きな“目的”としては、日本の伝統の文化を守って、発信して、共有して、広めたいというのがあります。そして、私は小さい頃から人を笑顔にして幸せにすることで自分も幸せを感じる人間なので、自分の得意なダンスだったり芸術系の分野に携わって、多くの人に感動とか勇気とかを与えられるようなことをしたいなと思います。その“手段”としては、ダンサーとして活動するだったり、公務員として企画部門や外交部門で働くだったり色々あると思うので今はそれを模索しているという感じですね。あとはもう踊りに関しては、ずっと付き合っていくんだろうなと思っているので、趣味という形だとしても一生続けていくと思います。

 ──最後になるのですが、ご自身にとって「カルチャーとは何か」を教えてください。

小橋 私は、カルチャーとは「人がすでに言い終わった言葉を聞き、人がまだ喋っていない言葉を想像力を使って聞くこと」なのかなと思います。これが伝統を守る、引き継ぐということに繋がるし、伝統をどう次世代に繋いでいくかにも関係すると思います。
言葉とか音楽とか、私たちの世界を構築しているものは実物としては存在しないもので、この存在しないものとの関わりなしに私たちは生きていくことができないと思います。そしてその今ここにないものを表すのが芸術でありカルチャーなのかなと思います。

 ──ありがとうございました。

「話すの下手ですみません!」そう言いながらインタビューに答えてくれた彼女だったが、その口から発せられる力強い言葉からはプロの表現者としての覚悟や高い志が感じられた。東京オリンピックが開催されることもあり、改めて日本の伝統文化が国内のみならず世界中から注目される現在。彼女は、若者ならではの柔軟な視点と今までの人生で培ってきたダンスという技術を武器に伝統を守り、発信し、繋いでいく。

<FIN.>

取材・構成 Nozomi Tanaka

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