
インタビュー Artist $HOR1
ダンサーとして幼少期から国内外の数々の大会で実績を残し、独自のスタイルで確固たる地位を築き上げてきたSHO→RI。そんな彼が「$HOR1」という名で、アーティスト活動という新たな挑戦へと踏み出した。TikTokでトレンド入りするなど早くもその才能を発揮し、今大注目の彼に、アーティスト活動を始めた経緯から、将来の展望、軸としている価値観、ダンスシーンへの思いまでを訊いた。
出会いが無かったことが転機
──自己紹介と現在の活動について教えてください。
$HOR1 $HOR1です。滋賀県出身で今年の一月で21になります。三歳くらいからずっとダンスをしていたんすけど、二年前くらいから芸能界に挑戦していて、今はアーティストとしてソロ活動を始めました。
──芸能界に挑戦しようと考えたきっかけは何だったんですか?
$HOR1 前からある人に「芸能界興味ない?」って誘われてたんですけど、「興味ないっす」って言ってたんですよね。でもとりあえず事務所に来て話だけでも聞いてほしいって言われたので渋々行きました。最初提示された条件は微妙で、これならやめようかなと思ってたんですけど、こっちが条件出したらそれが通って。その条件やったら俺も好きなように動けるし、一度挑戦したろうかなって感じで始めました。
──ダンサーとして自分の地位やスタイルを確立していた$HOR1くんがアーティスト活動を始めるということで、周りからびっくりされたり、時には批判されるなんてこともあったりしたのかなと思うのですが、それについてはいかがですか?
$HOR1 芸能界入ったときには、「うわ、あいつあっちの世界行ったんか」みたいな見られ方は最初はやっぱあったっすね。ダンスで少し結果も残してたから、期待してもらえてた部分もあったと思うんですけど。まぁでも「知らんわ」って感じ(笑) どんなに結果残しても、ダンスは永遠に趣味としてやっていきたくて、ダンスで生きていこうとは全く思ってなかった。自分のやりたいことをやりたいっすね、やっぱり。
でももちろん応援してくれる人もいっぱいいて、それはすごい有り難かったっすね。特に先輩とかは割とめっちゃ前向きに応援してくれました。「しょーり頑張れよ!」みたいな感じで。
──そうだったんですね。そしたら、あくまで趣味としてやりたいと思っていた中で、ダンスに打ち込めたモチベーションは何だったんですか?
$HOR1 難しいなー。まぁでも名前売りたいってのがあったんすかね、一番のモチベーション的には。そういう気持ちはあったけど、でも趣味でやりたいみたいな。だから「お前は世界行けるからマジで頑張れよ」って言われるとちょっと冷めちゃう。でも別にそれ言われんかったら「世界一獲ったぞ、どう?」みたいな感じのバイブスでいきたいっていうタイプっすね(笑)
──転機となった出会いや出来事はありますか?
$HOR1 Lock danceをやっててめっちゃ楽しかったんですけど、同世代のlockerが本当におらんくて。言ったらKARIN、ena*くらいで、相手になるっていうのもその二人くらいしかいなかったんです。でも俺は男のそういう刺激与え合える友達が欲しくて、めっちゃ探したんですよ。正直めっちゃチームとかクルーみたいなものを作りたくて。でもおらんかったんですよね。その、同世代からの刺激がなかったっていうのが結構転機だったかもしれないです。「もういいかなー」みたいな。そんな感じでちょうど悩んでた時期に事務所から声かかったりしたから、その時期のダンスに対するバイブスもそんな感じだったし、ちょっと挑戦してみるかってなったんですよね。だからむしろ出会いがなかったことが転機というか。
*日本を代表する若手女性Lock dancer 2人。2onダンスバトルの世界大会Just Deboutでは、2018年にena&KARINで日本チャンピオンとなり、パリで行われる本戦に出場。BEST4の成績を残した。

「こいつの曲やばいよな、なんか聴いちゃうよな」ってなりたい
──アーティスト活動をしている中での学びはありますか?
$HOR1 初めてやることだらけだから、学ぶこといっぱいですね。「音楽ってこうやって作るんや」「歌ってこうやって録るんや」みたいな。ダンスしてるだけの時は音楽は耳にしか入ってこんかったけど、その作り方とか、リズムがこんな感じでそれにも色々な種類とか名前があるんやみたいな感じで。赤ちゃんが言葉覚えるみたいに、もう絶賛学び中です。
──どんな人に届けたいとかターゲットみたいなものはありますか?
$HOR1 特にターゲットは定めてないですけど、やっぱでも男の子のファン欲しいっすね。ゴリゴリのラップとかだったら男の子のほうが好きな人多いと思うんですけど、そうじゃないとやっぱつきにくいじゃないですか、男の子のファンって。でもなんか普通に遊んでる時とか、「海行こうぜ」みたいな時に「こいつの曲やばいよな、なんか聴いちゃうよな」ってなってもらえるようなアーティストになりたいっすね。わかりやすい例で言うと平井大*みたいな。夏とか海行ったときとか、やっぱり聴くじゃないですか。
*シンガーソングライター。印象的で耳に残る歌声と海を連想させるキャッチーなメロディや歌詞で若者を中心に絶大な人気を誇る。
──自分が作りたい曲を重視していきたいか、それとも聴く人が求めているものを重視していきたいか、こだわりはありますか?
$HOR1 あー、割とどっちもっすね。でも基本は、ビート聴いて「うわこういう曲作りたいな」っていうのが最初に浮かんできます。で、その一言目が決まったらそこから進んでいくみたいな。まぁでも一方で今TikTokとかもしてるから、ちょっと流行りそうな曲調とか考えて作ったりもして少し聴く人目線で考える時もあります。でもやっぱり自分が作りたい曲がメインで作ってますね。
──ダンスと現在のアーティスト活動でつながっている部分はありますか?
$HOR1 それは間違いなく音楽っていう要素じゃないですかね。そこは完全につながっていると思います。でもダンス活動は一旦今はしてなくて。やっぱり自分としても区切り付けたいし、「お前何がしたいん」っていうやつにはなりたくないんすよね。「この人は今これを頑張ってる」っていうのを明確にしたくて、「俺はアーティストとして頑張りたい」っていうのが今のマインドです。もちろん後々には、ダンスは自信あるから使っていくつもりですけど、とりあえずアーティストとして売れるまでは歌で頑張っていきたいと思ってます。インスタのダンス動画とかを全部消したのも、「覚悟」というか「区切り」というか、そこが理由っすね。
──アーティストとしての将来の展望について聞かせてください。
$HOR1 まずはソロでどこにも事務所とか所属したりせずに、クラブチッタとか何千人規模のところに一人でお客さんを集めたいですね。それがとりあえずの夢というか目標です。それが達成できればもっとでかい夢広がると思うし、一旦はそこに目標を定めたいと思ってます。



ブレない「人との関わり」への考え方
──軸としている価値観はありますか?
$HOR1 人との関わりっすかね、やっぱり。未来の話ですけど、もし俺がめちゃくちゃ有名になったとしても、それまで関わってきた人たちがおらんかったら有名になれてないから、そこの人間関係はしっかりしときたいですね。「もう有名になったから一人で行ける!」じゃなくて、「その人たちがおったから今一人で行けてる」という考え方になっときたいですね。だから周りの人たちには今のうちに「もし俺がブレたらしばいてください」とか言ってます(笑)
あとは、自分が関わる人についてもしっかり考えるようになってきましたね。この人とは関わる、この人とは関わらないみたいな。やっぱり自分が尊敬できたり刺激もらえるような人たちと濃く関わっていきたいと考えるようになってきたっすね。
──なるほど、すごいですね。キッズの時から結果を出しているから「俺めっちゃすごいやん」って調子乗っちゃいそうですけど違うんですね(笑)
$HOR1 いやイキってた頃もありましたよ、そりゃ(笑)「この人倒したわ、どう?」みたいな(笑) でもまぁ今考えたらおもろいっすよね。めっちゃガキな奴がめっちゃ調子乗ってたから。まぁでも年齢重ねるとともに冷静になってきましたね。
──「イケてる」って何だと思いますか?
$HOR1 よくダンスのワークショップで最後らへんに言ってたんですけど、クラブとかで全然自分が好きな曲とかじゃなくても、どんな曲でもDJの前で踊り狂ってる人っているじゃないですか。そういう人が一番ダンサーやなって思います。ノリ方とか変わんなくて全然曲感じてないけど、とりあえず身体揺らしてる人とかは結構イケてんなって思ってたっすね。
──ダンサーだと、どんな曲でもノれる人とか言いがちですけど違うんですね。そこに何を感じるんですか?
「エナジー」っすね。
──アーティストとしてもやっぱりエナジーを持ってる人はイケてんなと感じますか?
$HOR1 そうですね。あとは勢いのある人とか何でも行動が早い人。そこは自分もまだまだ足りないところなんでそういう人はすごいリスペクトしてます。
──カルチャーとは?
$HOR1 「築き上げてきた歴史は大事にせなあかんけど、それを活かして絶えず進歩していくべきもの」じゃないっすかね。自分がずっとやってきたLock danceも歴史あるものでリスペクトせなあかんけど、一個すぎて自分は飽きちゃったんすよ(笑) だから俺はhiphop取り入れたり、踊る音楽とか服装とかも全部変えて。パーカーでええやん、みたいな(笑) そういうのがあったから自分で作り上げていったら、「$HOR1君のスタイルめっちゃかっこいいっす。憧れてるっす。」って言ってもらえたし。やっぱり絶えず進歩させていくべきだとは思いますね。
──なるほど。いつかLock dance界を変えたいという思いもありましたか?
$HOR1 昔はあったっすねー。でも正直DJ変わらな無理っすね。やっぱり曲。曲から変えてかないとって思います。Lockだけっすもん、こんなに変わってないのは。POPとHIPHOPは進歩しすぎ。だから面白いんすよ(笑)

Instagram https://instagram.com/shori_winboy?igshid=mqdsfcuarej5
TikTok https://vt.tiktok.com/ZSaMeeeH/
ダンサーからアーティストへ。一見大きな方向転換にも思えるが、彼にとってはその時その時の“今”自分がやりたいことに正直に生きていく過程の一つなのだろう。ただやるからには中途半端ではなく、それまでやってきたことには区切りをつけてとことんやる。そこに彼の美学がある。確かな覚悟とともに前へ進んでいく彼の活動から今後も目が離せない。
取材 Taiki Tsujimoto
構成 Nozomi Tanaka
撮影 Shun Kawahara, Charlie Ohno