自身がグラッフィックデザイナーと映像作家でありながらも、アートコミュニティーの代表を務めるToshiki Asaga。マルチに活躍し発信を続ける彼が今何を思い、どのように生きてきたのか。アートを志すきっかけから価値観、そして今後の展望までを訊くことができた。
社会そのものを創る
──自己紹介と現在の活動を教えてください。
Toshiki 浅賀敏樹といいます。1996年生まれの今24歳です。9月に映像の会社として起業するNeutraっていうアートコミュニティの代表をやっています。個人としてのメインの活動はグラフィックデザイナーです。ビジュアルアーティストとも言えるかな。映像監督もやっています。
──これらの活動に出会った経緯は?
Toshiki 最初は高校生の時ぐらいからざっくりとデザイナーになりたいと思ってたんですよ。とにかくフリーランスのデザインか映像系の事がやりたくて。なんでフリーかというと、企画から制作、発表まで全部一人でしてしまえるクオリティとスキルの高さであったり、カルチャーを牽引する影響力がある人物像に憧れていて。
そのきっかけは、スケートボードのビデオグラファーへの憧れでした。高校の時からスケボーをやっていて、スケボーのカルチャーに与えられた影響は結構大きいですね。
──具体的に、スケボーのビデオグラファーのどう言った部分に影響を受けましたか?
Toshiki スケートビデオの追って撮る感じが、自分が高校生のときにもっと芸術作品化していっていたんです。ダウンヒルでめちゃめちゃスピード出てるのに生身でジンバルを使って撮ってるビデオグラファーの作品への思いというかストイックさみたいな所に、かっけぇなと食らってました。

── Neutraはどのような組織なんですか?
Toshiki アートコミュニティとしてミュージシャンからダンサー、グラフィックアーティスト、絵描きがいて、映像クリエイターもいればビジネス系の人もいます。
なので、Neutraとは何かというと社会そのものを作っている感覚です。
やっぱ生きづらい社会の中で仕組み自体を変えていくってなるとそこに人生を費やさなきゃいけなくなっちゃうと思って、そんなんだったら自分達のための社会、カルチャーを自ら作ってしまおうという考えです。その中でしがらみとかもなく自由にやっていって、最終的に誰もが参加したくなる社会そのものにうって変わりたいです。
──多種多様な方々がいるんですね。
Toshiki それこそNeutraの語源がNeutral(中立)から来てます。例えば、スケーターとかってほんと差別がないというか、もうそれさえやってれば誰でも友達みたいな。そういう感じがすごい気持ちいいんですよね。どんなスタイルの違いも受け入れて価値にする感じが。そういう人種とかジャンルを取っ払ってみんなで進んでいく感覚って、この世代特有のものだとも思っていて。
日本っていう国で自分の好きなことで活動できるっていう状況の中で、ワンステップ、もう一個上げるにはやっぱり仲間とのコミュニケーション量だったり、仲間との信頼関係ってものをいかに築くかってところが、大事だと思います。
「アートは、デザインの上に輝くべき」
──自分の中で転機となった出会い、出来事ってありますか?
Toshiki 19歳の時に一人でロサンゼルスに行ったことですね。それが自分にとっては大きな出来事だったなと思います。一週間だけ、なんも調べないでさすらってみようと思って(笑)路頭に迷いに行ったっていう感じです(笑)
最初のホテルしか取ってない状態で過ごした旅が、芸術を活動として始めるきっかけになりました。
──具体的にはどのような出来事がありましたか?
Toshiki 最初に泊まった場所が、アートディストリクト、いわゆる芸術地区にあってストリートアートとかがそこかしこにあるような所で。街をとりあえず見てみようと思って外に出たらいきなりおじさんに声かけられたんです。色々話してたら俺のことを気に入ってくれて。「芸術関係に興味があって生のアートシーンを見たいと思って来た」と伝えたら、実はその人がだいぶ有名なバンドのボーカルで(笑)レッドボーンっていうインディアンの末裔のバンドで、大好きなMarvel映画のガーディアンズオブギャラクシーでも主題歌として使われてるようなバンドの。

コーヒーでも飲もうよって言われて話していくうちに仲良くなって、家こいよ言ってくれて。その時俺はスケボーしか移動手段がなかったから車に乗せてくれて、それもすごくありがたかった。
その人が知ってるアーティストのアトリエとかギャラリーとか、カルチャーが根付いてる場所に直接連れて行ってくれて生のアートを見せてくれて。アメリカで起こってる社会問題とかもそうだしインディアンとしてのスピリットも話してくれて。それがやっぱアートをちゃんと活動にするきっかけでした。
──ロサンゼルス行くまでは全然違う生き方を考えてた?
Toshiki 元々デザイナーとしてって感じが自分の中にありました。でもデザインをやる上でデザインとアートの違いって何だろうってのをずっとテーマとしていて、それがやっと分かってきたというか。俺はデザインじゃなくてもっとアートをやるべきだって思う瞬間があった。
──具体的に、アートとデザインの違いに答えが見え始めた?
Toshiki アートはデザインの上に輝くべきだっていう風に思って。というのは、デザインの中にもアートって存在するじゃないですか。
グラフィックデザインってなった時にもその一部、小さいところの「ここなんだよ」っていうところに「うわ、これかっけーよ」っていうところが存在してて。本当に小さいんだけど、それがまさにアートの本質。
そんな小さなスペースにどんなアートを込めてやろうかっていう部分が大事だなって思ってます。
求めずして勝つ
──活動を通した学びは何かありますか?
Toshiki 仲間の大切さは絶対ですね。
人は宝。ってのは本当に受け売りではなく、自分が活動して生きていく中で仲間を捨ててしまったら別にやる意味ないってくらいの感じになってきたかな。その仲間の発展型が組織であるようにしたくて。
トップダウンの上下関係があってっていうのよりも、密にコミュニケーションが取れて細部まで気が配れた上で、誰かを消費するとか何かを消費するってのはこれからの時代ではなくなっていって欲しいです。
──影響を受けた人などはいますか?
Toshiki ラッパーのLogicが一番好きな人かな。もちろん楽曲自体もそうなんですけど、やっぱ人間として好きっていう部分があって。彼が歌う平等に対する世界に対するメッセージ人種に対するメッセージはとかっていうのはすごく刺さってますね。
自分が感じてきた痛みを発信して打ち明けること、それに対して世界はどうあってほしいかってのを人々に呼びかけること、キャリアとして自分の人生をどう構築するのかってとこに関してものすごくストイックに本当にやり切った人だと思っていて。
自分の人生としても結構辛い時期があって、中学高校の時ADHD(注意欠陥障害)っていうので社会の一般と自分の違いに殺される部分があって。
終わらない痛みに一つの答えをくれたのはLogicだったなぁと思います。もちろん、仲間の存在があって、信頼させてくれて、構築してきた関係が素晴らしいと思えたということがあって、自分自身で克服してきた部分もありました。

──自分の軸としてる、価値観は?
Toshiki 求めずして勝つっていうことですね。アートって求めたら終わりだと俺は思っていて、アートは作ろうと思って作るんじゃなくて宿るものであって。求めすぎるとどうしてもアートの方から逃げていくんです。
「あなたと仲良くなりたいです」って宣言して仲良くなるのと、自然に仲良くなってって信頼関係築けてるよねって確認できた時の喜びと全然違うと思っていて。アートもそういうことだろうなと。
カルチャーとは、共有しているバランスそのもの
──アートコミュニティとして活動するNeutraの具体的な目標などはありますか?
Toshiki 夢としては最終的にブランドにしたいなと思っていて。育ててきた思想をみんなで共有するブランドでもあり、価値の共有が生活の中心になっていったらいいなと思ってます。
──イケてる人とは、どういう人だと思いますか?
Toshiki その人自身がかっこいいとか尊敬できるっていうのは相対的なものであって。
誰がここでこうしたとかっていうのが培われていてその文脈が引き継がれていって、それを劇的に崩したヤツがすげえってなる。まぁイケてるの大前提ってバックグラウンドがしっかりしてるってことなのかなあと思うね。中身ないっていうのとイケてるってのは対照的なものだと思う。
同じことするのでもこの人がやるのとこの人がいるのと全然違うよねっていうのは、イケてるかイケてないかだと思う。
俺にしかできないバックと文脈を築きたいと思うね。
──あなたにとってカルチャーとは?
Toshiki 今まで話したこと全てカルチャーだと思ってるんだけど、Neutraは地球規模のカルチャーにしていきたいと思っていて。
カルチャーって死ぬ瞬間があると思う。外側から定義づけられてしまった時とか間違った引き継がれ方をしてしまった時とか。カルチャーに近い言葉で言うシーンとか、まさに生で今それが起こっている状態をやっぱ大切にしたいし、言葉にしすぎるのも違う。
カルチャーを言葉でまとめるのは恐れ多いし難しいけど、言葉にせずともその流れを皆で追えている、皆で共有しているバランスそのものっていうことなんじゃないかな。
──ありがとうございました。

多種多様なスキルを持つ人々を束ねる、Neutra代表Toshiki Asaga。彼の確固たる思想は、社会そのものを創ろうとする大きな目標に可能性を感じさせる。アートコミュニティNeutraがこれから仕掛けていくことに注目だ。
映像作品[ FACTOR_X ]
Produced by 俄×Neutra
8月30日撮影本番
9月下旬公開
映像監督 浅賀敏樹
演出 和合大地
演出助手 河内圭佑
照明 金澤萌依・渡部稜
制作 後藤大地
出演
佐々木愛
八島直哉
男山竜眞
成瀬志帆
協力:Neutra, Graphers Tokyo
取材 Taiki Tsujimoto
文 Tsukasa Yorozuya, Charlie Ohno
撮影 Shun Kawahara, Charlie Ohno