
年に2回、元住吉のPowers2にて10代~20代前半のスケーター、ダンサー、シンガー、DJ、などが集結しお互いの心惹かれた世界を表現し合うイベントが開かれているという。そのイベントの名は「BLUERAMP KAWASAKI」。今回はその運営を行うcrewの代表であるKota Tagamiを取材した。
※当インタビューは政府による自粛要請前に行われました。
Kotaに取材場所として指定されたのは、慶応義塾大学矢上キャンパスのすぐ近くにある車の修理工場Boogieであった。

──どうしてここを取材場所に指定されたんですか?
Kota 僕今ここでバイトさせてもらってるんです。ここもぜひ紹介したいなと思って。
──あまり同世代でこういった場所でバイトしている人っていないですよね。
Kota いないですね。お父さんが車関係の仕事をずっとやってて、その影響もあって車は昔から好きでした。大学二年生の時に初めて自分の車を持ったんですけど、その車が故障したときに今もバイトしているGRINDLODGEっていうアパレルのシルクをやっているブランドの社長にここを紹介してもらって。そしたら、多分ふざけてだと思うんですけど、この工場の社長に「バイトしてみない?」と言われました。で、それを僕は本気にしてここでバイトさせてもらえるようになったっていう感じです。

──見渡してみるとヴィンテージのかっこいい車が多い印象ですけど、そういった車専門の修理工場なんですか?
Kota いや、特にそういうわけではないんですけど、やっぱりここの社長の腕を見てそういった車を持ってくる人が多いですね。なので、仕事でこういった車に乗せて頂く機会が多いんです。それはすごく楽しいですね。
──その車もかっこいいですもんね。
Kota FordのSPECTRONという1995年の車なんですけど、このちょっとダサい感じがいいんですよね。実はこれ高校生の時から憧れてた車で、ここの工場の社長が持ってたのを安く譲ってもらったんです。
──将来も車関係の仕事をしたいなといった意識はあるんですか?
Kota うーん、特別強くは意識してないですけど、将来自分が会社立ち上げたときにそこの車が全部こういった古い車だったりしたら面白いかなとは思いますね。ヴィンテージ専門のレンタカー屋さんとかね。

──大学では何をされているんですか?
Kota 東洋大学のILLRIDERSというスノーボードサークルの代表をしていました。そこで夏とかはスケートボードやサーフィンなどもしています。あと昨年まで、全日本学生スノーボード協会(SSBA)の代表もしていました。
──全日本というと日本中の大学が集まっているんですか?
Kota いや実は関東だけだったんです。で、これはもったいないなと思って去年は関西の方に営業しに行きました。そしたら関西の子が何人かこっちのイベントにも来てくれて。きっかけ作りはできたかなと思うので、これから下の後輩たちがもっとどんどん広げていってくれたら嬉しいですね。

──スノーボードやスケートボードを始めたきっかけは何だったんですか?
Kota 親戚が新潟にいて、その影響で小さい頃からスキーをやっていました。それで従兄弟たちがスノーボードに切り替わったので自分も始めました。スノーボード始めたら、やっぱりスケートボードもやりたいって思って、中二の時にサーフショップに連れていってもらってそこでボードを買いました。それでそのサーフショップの店長に色々なかっこいい場所に連れて行ってもらったんです。高校生のときとかは毎日家の近くの駒沢公園でスケートしてましたね。
──なるほど。スノーボードとかスケートボードとかサーフィンとかって皆さん全部やってるイメージがあるんですけど、何かつながりみたいのってあるんですか?
Kota うーん、どうなんですかね。でも、3つやってる人って意外と少ないかもしれないですね。スケボーだけ極めた人だったりとか、食わず嫌いして他のものやらない人だったりとか全然いますね。もちろん全部上手い人もいるんですけど、結構それは人によってですね。

カルチャー同士の交流
BLUERAMPの魅力
──次にご自身が運営されているイベントについて伺いたいんですけど、どのようなきっかけで始められたんですか?
Kota もともと中学二年生の時に初めてGRINDLODGEのパーティーに遊びに行かせてもらって、そこで沢山のかっこいいカルチャーを極めた大人達が遊んでいる姿にとても憧れました。そこからBLUERAMPをやらせてもらっているPowers2というライブハウスに出入りするようになりました。高校二年生になってPowers2のオーナーから「お前もイベントやってみろよ!」と言ってもらえて、GRINDLODGEで使っていた小さなセクションをボスから借りてパーティーを始めたのが、BLUERAMPの始まりです。
──どのようなイベントなんですか?
Kota 最初はPowers2のステージの上にランプ(スケートボードが滑れるセクション)を出して、みんなでスケボー滑ろうよっていうので始めました。高校生の間はそんな感じでやってたんですけど、大学入ったら、スケボー以外にもダンサーだったりDJだったり色んな友達ができて。その人たちのイベントとかに呼ばれて行くんですけど、ダンサーはダンサーだけ、DJはDJだけっていう風にそれぞれのイベントが結構独立してんなぁって感じたんです。だったら自分のイベントで何でもアリにしようよって考えました。ダンスやってる人はバトルして、でもその音楽は俺が呼んだDJが別でかけてて。あとは歌やってる人、バンドでもラップでも全部集めてライブしてもらって。もちろんスケボーもやって。何でもいいから同世代でかっこいいものやってる人たちで集まって楽しもうっていうイベントですね。

──めちゃめちゃいいですね!そういう色々なカルチャーシーンの人を呼ぶには人脈づくりがすごい重要だと思うんですけど、何か意識されていることってありますか?
Kota うーん、なんだろう。最初はお客さん3人とかだったんですよ。でも、来てくれた人をどうやって笑顔にして帰せるかっていうのをBLUERAMP crewのみんなと毎回考えてました。まぁ泥臭いことですよね。友達来てくれたら紹介してみたり、来てくれた人がみんな繋がれるようにしていました。そうやってとにかく来てくれた人を大事にするってしてたら、自然と今度は来てくれた人が自分の友達を呼んでくれたり、出演してくれた人がまた別の人を「こいつ面白いことやってるから出してあげてよ」って紹介してくれるようになりました。だから、自分から他の場所に足を運ぶっていうのは、行ったり行かなかったりって感じです。もちろん友達のイベントとかはどんなジャンルでも必ず行きますけどね。
──他のカルチャーシーンに対する関心は前々からあったんですか?
Kota ありましたね、だからイベントで繋げちゃおうって。同い年なんだし、みんなで一緒に遊んだほうが楽しくね?って思います。とにかく食わず嫌いはしたくないですね。音楽とかも色んなもの聴きますし。だから自分は結構”広く浅く”って感じかもしれないです。ただラッキーなことに周りに深い人が多いんですよ。そういう人にイベントに出てもらっています。ただ、自分がイベントに人を呼ぶときに意識していることが一つあって、他のカルチャーでも何でも、人のものを見て「かっこいいな」って言える人を呼ぶようにしています。そこはとても大事にしていますね。で、自分は逆に何もできないからそういう人たちを繋げる。この繋げるっていうのは、GRIND LODGEのボスが背中で教えてくれたんですよね。そうやって繋げた結果、実際にイベントで知り合ったダンサーとDJが仲良くなって一緒に作品とか出していたりするので、そういうのを見るとすごい嬉しいですね。

──では最後になるんですけど、Kotaさんにとって「culture」とは何ですか?
Kota いやぁ、むずいっすね。みんな好きにやればいいんじゃないですかね。でも、繋がった方が面白いっすよ。だって他のカルチャーから気づくことってたくさんあるし。だからもう「カルチャー」なんて言葉無くなればいいのにって思っちゃいますね。「壁」が無くなればいいなって。
–ありがとうございました。

人と人を繋ぐ
修理工場での取材後、我々はスケボーの映像を撮るためにKotaの車である場所に向かった。そこはKotaのスケボー仲間であるさらさんの自宅にある倉庫で、他にもKotaの仲間が集まっていた。そこで、さらさんともう一人のスケボー仲間であるかいとさんにKotaについての印象、そして取材の際に必ずする質問「あなたにとって『culture』とは何か」を聞いた。
──Kotaさんについてはどんな印象を持っていますか?
さら 集客力というか、そのなんか広めていく力がすごいなと感じます。一個のイベントを成功に持っていく力があると思います。
かいと 色々な団体の代表やってたり、色々なイベントを運営しててすごいリーダーシップがありますね。でも遊ぶときは一番ガキっていう(笑) そこがいいですね。
──お二人にとって「culture」とは何ですか?
さら うーん、なんだろう。でも、自分の人生を変えてくれるものだなって思います。私は幼稚園から高校までずっと同じ学校にいて一つの箱の中で育ってきたんですけど、スケボーとかスノボーの世界に入ったら一気に世界が広がりました。それこそ、HIP HOPとか全く聴かなかったんですけど、スケボーにはまったのがきっかけで聴くようになりました。
かいと 僕はカルチャーは「ライフスタイル」だと思います。スケボーとかスノボーとか音楽とか、そういうのは僕にとって生活の一部ですし、カルチャーに関わっている人ってみんなそうだと思うんです。だから、個人個人のライフスタイルがカルチャーかなって僕は思います。

帰りの車でKotaはこんなことを言っていた。
「俺なんもできないけどさ、人と人を繋げるのだけは負けないと思うんだよね。それになんかやらなきゃって嫌々やってるわけじゃなくて楽しくてやってるのよ。」
我々も今回の取材で、Kotaを通じてさらさんやかいとさん以外にもたくさんの方と交流することができた。コミュニケーションをとるのが好きで、楽しいこと、かっこいいことはみんなで共有する。それが彼にとってのカルチャーなのだろう。これからも彼は色々な垣根を越えて、人と人を繋げていく。
<FIN.>
取材 Taiki Tsujimoto
撮影 Syun Kawahara, Tsukasa Yorozuya
構成 Nozomi Tanaka