
東京駅から徒歩2分の距離に位置する丸の内のライブレストラン「COTTON CLUB」。この東京Jazz シーンの重要スポットで行われたのは、ストリートダンサーMiyuによるソロ公演「LEADING ACTORS -Dance Experiment- Miyu Live Showcase “ON to ON” music directed by Jun Miyakawa」。C.U.T TOKYOでは4/9に行われたDAY1の様子をレポートする。
取材,構成: 辻本大貴 (C.U.T TOKYO Director)
Miyu Profile

世界一の華麗なステップを繰り出す、若き表現者
1997年12月3日生まれ、東京都出身。
8歳から本格的にダンスを始める。
キッズダンサー時代は“ONPARADE”として数々のコンテストで連続優勝し、「スター☆ドラフト会議」や企業CMなど、テレビでも活躍。
2017年、パリで開催された世界最高峰のダンスバトル「JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL」HOUSE部門で師匠と共に優勝、19歳にして世界一の称号を手にするなど、国内外の数々のバトルで優勝多数。
また“Alaventa”としてチーム活動も行い、「JAPAN DANCE DELIGHT」では3位獲得。
日本だけでなく海外からもワークショップやバトル審査員に招聘されるなど、ワールドワイドに活躍する若手ハウスダンサーである。
ストイックさに裏打ちされた確かなダンススキル、モデルもこなすルックスとファッション性、そして常にチャレンジする姿勢…多くの人を惹きつけるポジティブなパワーで、ダンスシーンだけでなく積極的に活躍の場を広げている。
引用 https://miyudance.tokyo/about/
「ストリートダンサーによるソロ公演」。おそらく多くの人にとってこの言葉は耳馴染みがない。
そもそも、ダンサーが単独公演を行うということはほとんど前例がなく、この公演は、公演名にもあるように、ある種実験的な試みとなった。
背景として、日本におけるダンサーのキャリアの選択肢は非常に難しく、ミュージシャンとは異なり、振り付けなどには著作権が生じず、レッスンや振付、バックダンサーなどで生計を立てるなど、ダンサーが個人として表立って一アーティストとして取り扱われることは非常に少ない。
ギャランティに関しても、海外と比べて桁が一つ違うというのも有名な話である。
そのような現状の中で、今回企画されたのは、ダンサーMiyuが一人のアーティストとして、ミュージシャンと同様にスポットライトを当てられる単独公演。
場所は、国内外のアーティストに支持されるライブ空間、丸の内に位置する「COTTON CLUB」。
ストリートカルチャーとは一見かけ離れたこのJazzクラブで何を提示するかが注目を浴び、チケットはSold out。観客として多くのプロダンサーや業界人が集った。
今回はダンサーのステージでは珍しく、全楽曲が若手注目キーボーディストの宮川純をミュージックディレクターに迎えたバンドの生演奏で構成された。

公演の始まりと同時に、スポットライトがMiyuにあたり、ドラムに合わせてのフリースタイルからスタート、緊張感のあるセッションで会場の雰囲気がガラリと変わった。
続いてファンク調のバンドサウンドに合わせていく。得意とするHouseダンスを中心に、さまざまなダンスの影響を伺える彼女独自のダンススタイルは、音を可視化していくように表現され、新しい音楽の楽しみ方を提示していく。キーボード、ギター、ベース、ドラムと順々にバンドメンバーに近寄り、それぞれの音に合わせて踊っていく様は、まるでバンドメンバーを一人一人紹介していく「ダンスを通したMC」のような印象で新鮮であった。



その後挟まれたMCでは、このライブに込められた想いを語った。
「音(ON)で恩(ON)返しをするという意味を込めて ”ON to ON ”という公演名にした。」と語る彼女。
観客にダンスを通して音楽をシェアし、感謝を伝えたいという強い意志がうかがえ、「音楽に揺れてください、音色を楽しんでください」という言葉からは、「音楽」へのリスペクトや愛も強く感じられた。
一旦Miyuがステージからはけ、バンドによる演奏が始まる。宮川純率いる四人編成のバンドによる演奏は重厚で、COTTON CLUBに溶け込む音作りではあるが愚直なバンドサウンドも感じられる、絶妙な音色に観客も自然と体が揺れていた。

そして、Miyuがステージに戻ってくると、ゲストのkiki vivi lilyが登場。ダンサーが人気シンガーをゲストとして迎えるという事は新しく、Miyuのシーンにおける注目度もうかがえた。
ダンサーはシンガーのバックで踊るということが定石の中、シンガーと同列でパフォーマンスする様子は、ダンサーの単独公演ということを強く意識させた。
Miyuはステージ上をダンスをしながら、シンガー、バンドと動き回る。Miyuが踊る場所に観客の視線は集まり、まるでダンスによって楽器隊にスポットライトを当てていくようだった。Miyuは意図的に近づいた楽器や、ボーカルの音にダンスをはめていく。まさに、音楽を視覚でも楽しむ感覚で、楽しみ尽くすことのないステージであった。

そして、その後登場したのは、Miyuも師匠と仰ぐゲストダンサー HIRO。ストリートダンス界の重要人物であり、シーンに多くの弟子を抱えながらも現役ダンサーとして現場でも活躍し、2017年にはMiyuと2人で世界大会優勝を果たすなど、言わずと知れた世界的ダンサーである。
バンドの高度なアレンジにも華麗に合わせていく二人のショーは上質で、ド直球にストリートダンスの素晴らしさを見せつけ、会場にいた目の肥えたダンサー、ダンスファンをも唸らせる圧巻のパフォーマンスであった。世界一を経験したHIROとMiyuの師弟タッグによる説得力のあるダンスでこのライブの次元がさらに2段階ほど持ち上げられた。
そしてMiyuは観客席を移動しながら踊ることで客席に一体感をもたらし、その流れで会場に観客として来場していたプロダンサー達に即興でパフォーマンスさせるという演出 を見せる。Calin, Momopeach, JUMPEIら日本トップダンサーを客席からステージに呼び寄せての即興セッションは、音楽と体さえあれば表現できるというストリートダンスならでは演出で、会場のボルテージはフィナーレに向け一気に上がった。
そして、最後はMiyuの熱のこもった、息もつかせないソロダンスでショーを終えた。
自然と湧きあがったアンコールでは、ゲスト含め全員が出演し、最後の最後は自身のオリジンであるHOUSEダンスのアンセムソングである「Abataka」のバンドver.で踊り、締めるという粋な構成で会場は大きな一体感を得た。

ダンサーが単独公演としてミュージシャンとコラボし、一つのステージを作り上げたことは、ストリートダンサーの一つの道を提示することとなった。MCで「何かを頑張るきっかけになってほしい。」と話したように、多くのダンサーや表現者に大きなインパクトと勇気を与えたことは間違いない。
近年プロリーグ、オンラインサロン、YouTuberなどダンサーの生き方が枝分かれしていく中でこのようなチャレンジがまた一つ、一人のZ世代ダンサーによって行われたことに大きなリスペクトを送りたいと思う。ダンサーMiyuが広げる大きな可能性に今後も注目していきたいと思う。
C.U.T TOKYO
Instagram https://www.instagram.com/cut_tokyo/
YouTube https://www.youtube.com/c/CUTTOKYO
Miyuが出演するダンスセッション動画
「THE MOMENT supported by aminoVITAL」