【PERSONAL FILE】Track Maker/Sound Engineer pavilion xool 音を極める

pavilion xool Track Maker/Sound Engineer
さまざまな音楽に精通し、国内外問わず多くのアーティストから注目を集める気鋭のトラックメーカー。サウンドエンジニアとしての側面も併せ持ち、作詞・作曲に加えミキシング・マスタリングなどの楽曲制作に関わるすべての行程を1人でこなしている。

pavilion xool SoundCloud Account

常に何かが枯渇した状態を作る


 ──まず初めに、自己紹介と現在の活動について教えてください。

pavilion xool(以下:pavilion) いろんなSE(効果音)など音楽を作っているトラックメーカーです。あとサウンドエンジニアをしています。pavilion xoolと申します。よろしくお願いします。

 ──名前の由来を教えてください。

pavilion 僕はもともと建築物がめちゃくちゃ好きで、pavilionは建築物という意味なんですよ。1997年の大阪万博でpavilionって言葉が出てきたから、pavilionという言葉が近代的な仮説建築物と古い昔の匂いが漂うものとが合体している文字にに見えてpavilionを使いました。xoolはダサいことしたくなかったから自分自身への足枷としてつけました。文字のバランスがちょうどいいなと思って。

 ──xoolの綴りがcではなくxであることにはどのような意味があるのでしょうか?

pavilion これはxxyyxxとかthe xx, xander. とかとにかくxが付くアーティストで好きな方々が多かったので絶対入れたくて入れました。

 ──次に音楽に興味を持ったきっかけや活動を始めたきっかけから現在に至るまでの経緯を教えてください。

pavilion 元々親父がブルースバンドやっていたりとか音楽がある環境で育った影響で、聴き専だったんですけど、音楽はすごい好きでした。で、16歳くらいの時に、バンド組みたいと思ったんですけど、なかなか自分の周りに音楽をやっている方がいなくて、バンド募集サイトで出会った人たちとバンド組んでいました。ネットのバンドサイトがまだ活気があった時代で、みんな純粋に音楽が好きな人がバンド募集してて、そのころは色んな方に会って、4つくらいバンド掛け持ちでやっていました。
僕は元々60年代のガレージが大好きで、有名どころだとThe Whoとか。もともとは車庫でやってた粗いロックをガレージって言うんですけど。そのガレージ文化がめちゃくちゃ好きで、ガレージばかり聴いていましたね。だから元々の音楽の畑はクラブとか全く関係なく、バンドでしたね。
ガレージってループものが多いんですよ。知識がない人たちがバンドやろうぜって感じでできた文化だからそんなに細かいことしなくて、でもそこにエモさ感じました。この頃からループが好きだったんだと思います。ガレージは追ったし、バンドもこういう感じばかりやってました。あとガレージは60年代だけど、2000年代に入ってからガレージリバイバルというのがあってTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかFranz Ferdinandとか。僕が一番好きなバンドです。一番好きなバンドはいっぱいあるんですけど(笑)
2004,2005年あたりのガレージリバイバルと古い60年代のガレージをのずっと交互に聴いてましたね。

 ──60年代のガレージとガレージリバイバルの違いはどういったところにあるのでしょうか?

pavilion リバイバルはなんとなくこれから出てくるダンスミュージックとかエレクトロ系の匂いを感じさせるものが多かったです。ドラム、ベース、ギター、ボーカルの基本の形にオプションでもう一つパットの人とかキーボードの人がいたりとか。
私が感じる共通点としてはとにかくガレージは根底がポップなんですよ。めちゃくちゃわかりやすい。バカでもわかりやすい。
僕の周りではポストロックとかメタルが好きな人もいるんですけど、僕はわかりやすくてポップなのがかっこいいと思っているから、あまりそっちにはハマらなくて、Nujabesとかに出会うまではラップもあんまり好きじゃなかったです。本当に僕は知識なくても直感でカッコいいものがカッコいいと思っていたから、それを抽出して自分でやってやろうって思ったのが始めたきっかけですね。

 ──カッコ良い音楽=わかりやすい音楽と捉えているということでしょうか?

pavilion そうですね。教養がないとわからない音楽はダサいと思ってるし、実験音楽とかも嫌いです。あと、アーティストに固執するっていうよりは単品で好きな曲があるって感じです。アルバムでこれだけカッコ良いけど他はよくわからないなと思うことってみんなあると思うんですよ。だから私はそのカッコ良いものだけを抽出したい。カッコ良い曲は誰が聴いても多分カッコ良いと思うから。
ただ単に自分自身の表現ではなくて、自分が音楽に取り憑かれてたくさん聴いてきた中で明確になってきたカッコ良い曲を表現したいと思ったのが最初のきっかけですね。

 ──多くのアーティストさんのアルバムはわかりやすい楽曲があって、自分たちのやりたいことを詰め込んだ楽曲があってという構成だと思うのですが、それについてはどうお考えですか?

pavilion 自分がやろうとは思わないです。Franz Ferdinandのアルバムとか本当にそうなんですけど、とにかく捨て曲がないアルバムが好きです。

 ──バンドだとどのポジションを担当されていましたか?

pavilion 基本はベースやってたんですけど、ピアノはもともとやってたのでバンドによってはキーボードとあとカッティングギターとか全部やっていました。

 ──多くジャンルに精通されてますが、同年代で他に音楽好きの人はいましたか?音楽はどのようにして学ばれましたか?

pavilion いなかったです(笑)
しょっちゅう立川とか福生とかのレコード屋行ってました。あと一応ディスクユニオンで働いてました。

 ──音楽に興味持ったきっかけとしてはやはりご両親の影響が大きいですか?

pavilion それもあるんですけど、中学の3年間でサマーソニックに行ったことが1番大きいきっかけですね。その時期がちょうどバンドからダンスミュージックに代わる転換期と解釈していて、Passion PitとかYelleとか。ちょうどバンドとダンスミュージックの融合点だったんですよ。それに影響を受けて、ダンスミュージックにハマっていきました。あと元々手先で何かすることが好きだったからトラックメーカーが性に合って、だんだんと移行して行った感じです。あと効果音とかがめちゃくちゃ好きだったな。
あと2007年あたりからエレクトロが入ってきましたね。これがニューエキセントリックってジャンルです。ジャンルとしてはすぐ終わったんですけど(笑)

 ──それがバンドとダンスの融合点ですか?

pavilion そうだと勝手に思っています(笑)
ガレージリバイバルとダンスミュージックが交差した時代。バンドとしてはこんな感じのをやりたかった。これが2007年って信じられなくないですか。今ようやくこういう蛍光色とかが結構メジャーになってきたけど、この時はまだ異端すぎてニッチでした。この辺は映像としても音楽としてもちょっとクラブ文化に寄ってきた時代で、これを中学生の時に聴いて食らって、自分1人でやれる形を探した結果今の形になりました。

 ──ニッチな部分での音楽の流れに沿って自身の活動する場所が変化していったということでしょうか。

pavilion そうかな…それでバンド全部やめました。で、サウンドエンジニアになりたかったけど、何もわからなかったから勉強しました。いろんな海外のエンジニアさんがHOWTOを英語で出してくれてたりとかしたのでネットを通じて学びました。

 ──ではサウンドエンジニアになるというのはバンド辞めたあたりから決めていたのでしょうか?

pavilion そうですね。バンドもずっと続けていたんだけど、17才の頃にbloodthirsty butchers の追悼ライブに一般応募枠で偶然出れたんですよ。僕が音楽作ってベースの子と2人で出ました。その時に僕がbloodthirsty butchersさんの曲をサンプリングして新しい音楽作って披露したんですけど、すごい達成感があって、もうバンドでやることないなと思ってそこでやめました。

 ──音楽の他にやりたいことはあったりしましたか?

pavilion 音楽の他に、建築と植物もとても好きだったので、どの方向に行こうか迷った時に1番飯食えなさそうなのが音楽だから音楽にしたって感じです。
あと、よく建築物を観に行ったりするんですけど、すごいもの見ても嫉妬しないんですよね。すごい、いいな、どうなってるんだろうとは思うけど、嫉妬はしない。植物関係でも、新しい植物が発見されましたとか、こんな育て方したら全く新しいスタイルの植物ができました。とか聞くとすごいなと思うし、単純に欲しいなと思うけど、嫉妬はしないんですよ。
でもめちゃくちゃカッコいい音楽を見つけた時はめちゃくちゃ嫉妬するし、何かゾワゾワする。なのでそれが1つの理由かな。30歳くらいになって、あの時音楽を選んでたら良かったな。と後悔しながら聴き専になるのが嫌だった。
今ちょっと難聴で音楽できにくい状態なんですけど、もしこれが悪化したとして全く耳が聴こえなくなって、音楽を断念するってなって、そこから建築とか植物関係の方向にいくのは遅くないしと思って、まあジェラシーを感じるか感じないかで音楽にしました。
だから、音楽も螺旋的な波のようなクラシックな音楽というよりかは立体的な建築物みたいな音楽が好きですね。ヘッドホンで空間を再現/表現するのがすごい好きだから。そういうところに自分が建築物を好きである理由を感じます。例えば昔のヘッドホンはLとRでしか表現できなかったけど、今はミッドとかサイドとか分かれてたりとか、技術で円状に表現もできたりとか、ベースが下にあってとか、そういうところに建築との関連性を感じます。

 ──そういう部分で自分が好きなものの要素を補っているということでしょうか?

pavilion そうですね。音楽で建築の欲求が満たされています

 ──ありがとうございます。事前にお話しさせていただいた時にpavilion xoolという客観的プロジェクトだとおっしゃっていて、また、それを鮮明化するために自分を追い込む行動をするとおっしゃっていたと思うのですが、音楽を選んだことはそのお話に通じているのでしょうか?

pavilion そうかな。結構私はMなのかもしれない(笑)
常に枯渇していたい。例えば素敵な彼女できたら満たされちゃって、生活が楽しくて音楽作らなくなっちゃうんですよね。周期的にみたら彼女がいない時の方が物が作れるんですよね。なんでかなと思ったら、この生活で満足しちゃってるからだって気づいて。「彼女の家に行ってイチャイチャして、一緒に美味しいご飯食べて、遊んで、仕事して…あれ?これ音楽作る必要なくね?」って。
結局満足すると自分からアウトプットする必要がなくなる。だから常に何かに枯渇している状況に自分を置いておきたくなります。

 ──枯渇した状況を作るために具体的にどういうことをしていますか?

pavilion 自分の人生の中で言うと、1番飯食えなそうな音楽を選んだのもそうだし、あと副業作らないとか。安定した資格取らないとか。とにかく安全牌を残したくない。保険を作らない行動にでがちですね。あんまり良くないとは思うけど…
あとラベルとか肩書きが嫌いだから、そういうのわざと削って無名で何もない状態からサウンドクラウド投稿し始めたとかもそうかな。

 ──ご両親は心配されないですか?

pavilion 両親は2人ともフリーランスで、父はもともとバンドマンで今は会社作って、母はメイクアップアーティストだったんですけど、芸能人のメイクとかやっていました。2人ともフリーランスだから補償がない状態で仕事をしてきてフリーランスの怖さも知っているし、やるならやればって感じ、(フリーランスについて)厳しいから褒めてはくれないですね。

 ──ご両親の影響から影響を受けている部分もありますか?

pavilion あるかもしれないです。あと認めてもらいたいのはありますね。こういう生き方で。

 ──1番影響受けた人はご両親でしょうか?

pavilion そうですね。ミュージシャンで尊敬している人もいるけど、一番尊敬しているのは両親かな。
「堅い職に就け」とか言われたことないですし、自分がやりたいことをやらせてくれます。その代わり、援助は一切ないですし、ちゃんと収入入れないと追い出されますね。認めてはくれないけど見守ってくれています(笑)


音楽が評価されれば自分自身はどうでも良い


 ──活動を通した学びを教えてください。

pavilion 学んでいることはいっぱいあるな。自分の特性に気づいてきたっていうのは大きいかもしれない。
そこまで表に立つタイプではないなとか。というのは私は自分自身をアピールしたいのではなくて、創造すること自体が好きだから、創造物に対してフォーカスが当たればそれで良くて、僕自身はどうでも良いです。今だったらpavilion xoolの音楽が評価されればそれでいいです。ラッパーさんとか自分そのものを表現して生きてるっていうタイプではないかなとかそういう気づきはありましたね。

 ──作品は自分を表現するものではないと考えているのでしょうか?

pavilion うーん…あくまで自分の産物?創造物であって自己の表現ではない。例えば私は映画とか観ても監督の名前とか俳優さんの名前とか覚えられないんですよ。その作品自体が好きなだけで、あまりその人の経歴や人間性には目がいかない。音楽も例えばThe Sonicsの音楽が好きだけど、The Sonicsのメンバーの名前と経歴なんて誰一人として知らないです。僕自身の見方がそうなので、僕自身への客観的に受けられる評価もそうだなと思って。僕自身にフォーカス当てられても僕の作品が死んでたら生きてる実感わかないし。エヴァでいうアスカみたいな感じかな。エヴァに乗ってるアスカを評価して欲しいみたいな。結構客観的な性格だなというのも気づきですね。

 ──作品を作る上でのこだわりはありますか?

pavilion ミックスやサウンドメイクに関しては誰にも負けない自信はあります。世界一だと思ってます。言い過ぎだけど。
ミックス、マスタリングって僕の中ではpavilion xoolの作品の内6割くらい占めていると思っているんですよ。作詞・作曲、歌う、録音、ミキシング、マスタリング、プレス、配信、広報の中でミックス、マスタリングが大部分占めてるから。そこでちゃんと自分の色を出して仕事をしたいなと思ってます。
自分の中に確実に正解と言える音と輪郭があって、それを再現還元するため、手に入れるために技術があると思っています。

 ──今現在の活動は0から1を作り出すというよりは1あるものを100にする作業ということでしょうか?

pavilion 活動における学びとしてそれも1つあります。僕は0から1を生み出すと言うよりかは、1があればなんでもアイデアを思いつく。だから曲を1曲作ってると木の枝みたいに5,6曲サブでできちゃう(笑)で、本来作ってた音楽がどうでも良くなるみたいなことはよくあります。だから別に僕が表に出なくても、ある作品を僕が手を加えることでもっと良くなるのであればそれに全力をかけられる。そういう作品ができること自体が嬉しいですね。

 ──pavilion xool名義の曲が何曲かあると思うのですが、その方向性についてはどのようにお考えですか?

pavilion pavilion xoolっていうブランドを作りたいっていうのが最終目標ですね。ブランドって言い方はすごい誤謬があるかもだけど。pavilion xool名義の楽曲を聴いて下さって、その雰囲気を気に入ってもらえて、サウンドメイクしてくださいとかもpavilion xoolの活動かな。その中心に自分の楽曲があるって感じ。空間表現とかバンドのプロデュースとかの仕事もそうかな。
例えば、バンドマンさんたちの楽曲のミックス、マスタリングだけの依頼とか、僕のフィルターを通して作ることもpavilion xoolの活動だし、remixもそうですね。

 ──ご自身がpavilion xool名義の曲をどんどん出すというよりかは、ご自身のフィルターを通して作るという活動を通じて、pavilion xoolが関わっている楽曲ということに価値を感じる人が増えることが理想でしょうか?

pavilion それが一番嬉しいかな。ただ僕が楽曲を作り続けない限り、その価値は生まれないと思うし、創造の欲求は尽きないので楽曲作りがエンジンであることに変わりない。でも、有名になりたい、AvicciになりたいとかSKRILLEXになりたいっていう感じではなくて、一番の最終的なラインはこいつに任せたらヤバいと思ってもらえるようになりたいです。

 ──ありがとうございます。次に、生きる上で大切にしている価値観を教えてください。

pavilion 等価交換。すべて等価交換だと思ってて、それは大事にしてるかな。例えばアルバイトでも1時間に対して950円返ってくるのも相違の納得の上であれば等価交換だし、自分が何かした行動に対して上澄みだけ良い思いしてやろうとすると後で債務として罪悪感や気持ち悪さが帳尻合わせにきて、気持ちが落ち着かなくなるのも等価交換だと常に思っていますね。

 ──全ての物事は等価交換でなければならないということでしょうか?

pavilion 物理的な等価交換のことではなく精神的な話です。
例えば、楽しく酒飲んで遊んだ次の日二日酔いで動けなかったら、楽しい/はしゃいだという感情に対して何か代償を払わなきゃいけないわけで、それが二日酔いとして来ている。それでバランス保ってると思っています。
あと、バランス悪くて良いというのはは自分の中で思っていますね。全てにおいて完璧じゃなくて良い。他の能力は全部0で良いから、1個だけパラメータ突出していたい、1個だけ最強になりたいと思っています。だから、バランス悪くて良いというのはずっと自分の頭の中にあります。それと、等価交換かな。その2つが自分にとっての座右の銘みたいなものです。

 ──ご自身の世界の捉え方が等価交換で、ご自身が生きる上で大切にしていることは全てが平均的というよりかは1つのことを極めていきたいということでしょうか?

pavilion そうですね。1つのこと極めたいです。
今、映像とかすごい興味があるんですよ。プログラミングとかも興味がある。だけど色んなことに手を出しすぎると全部が中途半端になってしまうから、今は音楽、音に突出したい、極めたいと思っています。そういうところで自分はアーティストというよりかは職人気質だなと思います。だから、かなりギャラが安くても納得いかないとギャラ割れするくらい時間をかけて作り込んじゃいます。

 ──ギャラに対して仕事量が見合っていないことに関してはどう釣り合いが取れているのでしょうか?

pavilion 例えば、ギャラが安いからといって手を抜いたら、その分罪悪感を感じるし、依頼者の期待を裏切ってしまうかもという葛藤が生まれるじゃないですか。そこでバランス取れていると思います。というのも、いくらギャラが安くても、自分が納得できるものができて、それを聴いた時に達成感があって、生きてる実感がわいて、相手にも喜んでもらえたら嬉しいじゃないですか。ギャラ以上の頑張りに対しては自分自身の達成感、相手が喜んでくれることで等価交換が成立していると思うから、お金に関してはバランス悪くても良いと思っています。全然気にしないです。


上質なNetflixのようなアルバム


 ──なるほど。ありがとうございます。次にご自身の活動の今後の展望は?

pavilion ポップでわかりやすくて、でもカッコ良くてトリッキーな音楽、「音楽聴いたことないけどなんかいいね」と言ってもらえるものをずっと追っています。私はクラブの音楽を生じゃなくてイヤホンで聴いてきた世代なので、イヤホンで聴いた時に最大限カッコ良いと思ってもらえる音楽を作りたいというのをずっと目標にしています。
サウンドエンジニアだから空間表現とか現場のサウンド系もやる時はありますけど、でもどちらかというと僕は家がメインの活動場所なんですよ。だからといって、ずっと家にいると現場感が薄れちゃうから、あえて街に行ってみたり、クラブに行ってみたりして現場感を補給してますね。
あとNetflixで上質なドラマってあるじゃないですか。Stranger ThingsとかBlack Miller, The Queen’s Gambitとか。そういうアルバムを作り上げたいなと思ってます。

 ──それは映像が浮かぶ音楽ということですか?

pavilion そうです。僕は生まれつき左目が見えないんですけど、その分音楽を聴くと最初は頭の中で風景として浮かび上がることが多くて、聴いていても映像が先に来るんです。
逆に音楽作る時は匂いでインスピレーション湧くことが多いんですよ。だから音楽で匂いとか表現したい。例えば湿ったサイコ感ある精神病棟っぽい、でもめちゃくちゃカッコ良いダンスミュージックを作りたい。とか。
だからSE(効果音)もすごい好きだし、そういうのを使って情景を表現できる音楽を作りたい。Netflixの上質なドラマのようなアルバムを創りたいそれが今の最終目標ですね。

 ──どれが欠けても成立しないアルバムが上質なNetflixのドラマみたいなアルバムということでしょうか?

pavilion うーん、単品でも良いけど。例えば今ってシングルが多いし、TikTokなんて15秒程度で捨てられちゃうじゃないですか。その中でアルバム作ることを考えた時に、面白い連続ドラマみたいに次が気になると思わせるアルバムを作りたいと思ったんです。

 ──連続ドラマみたいなアルバムというのは全部を聴いて意味がわかるアルバムということですか?

pavilion 全部聴かないと本当の意味がわからないみたいなのはすごくどうでも良いです。アルバム通してこれはスルメ盤だぜみたいなのはどうでも良い。

 ──アルバムの1曲1曲に統一感があって、かつ全部カッコ良いアルバムということでしょうか?

pavilion そうです。その中で楽曲を繋げたりしても良いと思うし、そういう遊び心はあるけど。それが僕の言っている連続ドラマということではなくて、世界観が統一されててなおかつ全部捨て曲がないアルバムが連続ドラマみたいなアルバムです。今までのカッコ良いの集合体をある1つのパッケージ/シリーズみたいに作っていきたい。

 ──そういうアルバムを何個も作っていきたいですか?

pavilion 最終的にはそうですね。でもまずは1つ作り上げたいです。

 ──話が戻りますが、情景が浮かぶ音楽を作るために意識していることはありますか?

pavilion あえて変な場所で音楽作ります。大型病院の待合室とか図書館で音楽作ったりとか。異質な場所で音楽作るのがめっちゃ好きですね。
例えば、蔦屋書店とかって入った瞬間にその場所の空気に飲み込まれて、自分が変わった感じがするじゃないですか。それぞれの場所に固有の異質感があって、それは家にいても生まれないから。家はあくまで持ち寄ったサンプルを安心して表現できる場所であって、五感で異質感を感じる場所でアイデアは湧きます。
だからよく図書館とかタリーズとかスタバとかで音楽を作っています。多分変な人だと思われてます(笑)

 ──ずっと家に篭ったりはしないのでしょうか?

pavilion 僕同じ場所に篭れないんですよ。3日いると発狂しちゃいます(笑)外が好きだからだからこそ徹底して色々なところで作業していますね。

 ──曲を作るときは元々作りたいもののイメージがあって、その作りたいものに合わせて場所を選ぶのでしょうか?それともフラッと考えなしに入った場所からインスピレーションを得て、作るものが決まるのでしょうか?

pavilion こういうものが作りたいと言ってその通りにできたことはあまりないですね。色々な映画見たり、色々な場所に行ったら、寝ている間にそこで感じたインスピレーションが自分の中に集積されて、最終的に形になるものだと思っているので、こういうものを作りたいとかは考えないですね。
というか、自分の中で計画的に作りたいものを決めたとしても、それを上回ってやろうと思ってしまうんですよ。仕事でも作って欲しいと頼まれたものを相手の想像の上をいくもの作ってビビらせてやろうと毎回思ってしまいます。植物と一緒で土台はあるんですけど、そのまま真っ直ぐ伸びるかもしれないし、障害物があるから捩れるかもしれないし。土台はあるけどそれ以外は好きに自分の発想に任せます。
作詞・作曲には正解がないから樹木みたいに作るんですけど、ミックスとか音作りは自分の中に絶対の正解の音があるから、その正解を彫刻みたいにどんどん削って浮き上がらせて作り出すものだと思っています。その正解の音を再現する技術を習得するためにひたすら職人的に満足いくまで時間を費やします。

 ──ミックスに関しては、自分の中にある正解を完璧に表現することを追求しているということでしょうか?

pavilion そうですね。だから楽曲作りと音作りでは脳の使い方が全く違います。ミックスとかマスタリングは完成形を目指して職人的に作り上げていくけど、作曲作詞は自分がビビるくらいじゃないと相手をビビらせることはできないと思うからアイデアというか感性重視です。これでいいのかな…と思うのは大体没になりますね。自分がビビるものを作ってから2,3日置いて、冷静になった時にそれをいかに商品化するか、パッケージ化するかっていう脳の使い方をしています。

 ──ありがとうございます。次にあなたのvital tuneを教えてください。

pavilion あえて1曲だったら、The Rapture“It Takes Time To Be a Men”ですかね。それは歌詞も楽曲も自分の完成形に近いし、一番衝撃くらった楽曲、自分の中の聖書です。音数がすごく少ないのに完璧なんですよ。
menになるには、一人前になるには時間がかかるね。絶対君は理想に辿り着けないだろう。でもやれよ。』っていう歌詞なんですよ。この曲は10000回以上聴いてますね。嘘です。是非歌詞と和訳を見て欲しいです。

 ──pavilion xoolさんにとってイケてるとは?

pavilion 自分に罪悪感がない状態じゃないかなぁ。自分を意識していない状態が1番イケてると思います。人が何かに集中している時間がめちゃくちゃ魅力的に見える時があるんです。
例えば、学校の授業中に周りを見ると普段は騒いでいる野球部とかうるさいギャルもみんな真剣な顔でノートを執っている。自分という自我がない状態で集中している状態があるじゃないですか。その状態が1番美しいなと思っています。本を読んでいる時とか漫画を読んでいる時とか、映画を観ている時って自分のことなんて考えていないと思うんですよ。本を読んでいるのに、自分は何故こんなにダメなんだろうとか、どあしてバズらないんだろうとか考えてたら、結局それって本を読んでいないじゃないですか。
行動と自分が一体化してる状態、自分について考えていない状態が1番イケてるんじゃないですかね。私自身も自分の自我がない時が一番イケてると思います。
俺はこれで生きていくんだって無理してツッパっているのも凄いとは思うけどイケてるとは思わない。頑張ってるなとは思うけど。結局自我が抜けてる状態が人間的に1番美しい状態じゃないかなと思うし、常にその状態ができるのが最高だなと思います。
だからこそ、楽曲作りもウケる楽曲作ろうとか、恣意的感情が入ると私の場合あまりうまくいかない。

 ──後ろめたさが生まれたりするのでしょうか?

pavilion それもあるし、結局無理が生じるから私はできないです。これも活動通してわかったことなのですが、ビジネス的に計算してとか、戦略的にとかやった瞬間に崩壊しますね。無理ですね。プロデューサーとかマネージャーがついている時は、その人がやってくれるので任せますけど、私自身では無理ですね。何かに集中してる時とか自分について考えてない時、自我が抜けてる状態が1番イケてる状態で、その状態で作品作ってるのがアーティストだと思います

 ──最後にpavilion xoolさんにとってカルチャーとは?

pavilion うーんと、難しいね(笑)私は歴史がめちゃくちゃ好きなんですけど、何かができたのには何か理由があるんですよ。
例えば、ヒップホップは変態の日本人の技術が1人でバンドできたら良いなって思ってサンプリングマシーンを作ったんですよ。でもバカ高かったから、見向きもされなかったんですよ。それが二束三文で外国に流れて、当時のあんまりお金なかった黒人たちが見つけて、これイケてるじゃんってことで本来とは違う形で使われだした。日本人の技術がなくて、それがウケなくて、二束三文で出回らなかったらhiphopは生まれなかったし、物事には何かの因果関係があるものだと思っています。人々が生きていく中で生じるちょっとしたズレ、衣食住に関係ないズレには絶対に因子があるのかなと思います。
ヒップホップでオーバーサイズの服を着るのはお金がなかったという事情がないと生まれないわけで、さらにそれがクールだと認識されないとあのスタイルは生まれなかったし、90年代当時の世紀末感とヒップホップとダンスミュージック、バンドが交差したからミクスチャーロックが生まれたよとか。物事には何かバタフライエフェクトがあるという捉え方。
だからカルチャーも何かしらのズレがあって生まれたんだろう、漠然とカッコ良いなというよりはその原因を探るのが楽しいですね。回答が少しずれちゃいましたね。

 ──ズレというのは具体的にどういうことでしょうか?

pavilion 毎日何事もなく、世界が平和だったとしたら、カルチャーなんて生まれないと思うんですよ。何かが起きて、暴動とかムーブメントが起きないとカルチャーというものができないと思います。

 ──ズレそのもの自体がカルチャーということですか?

pavilion そうです。
例えばですけど(笑)肉じゃがの文化も旧日本海軍の人たちが海外に派遣された時に食べたビーフシチューを食べたくて、でも作り方がわからないから日本の料理人に伝えて、結局試行錯誤して出来上がったのが肉じゃがだったとか。それもズレで生まれたものだし。

 ──よく知ってますね(笑)

pavilion 雑学がすごい好きです。なんで肉じゃがって生まれたんだろうとか。あれも文化じゃないですか。ズレがないとカルチャーは生まれないからそういうズレがカルチャーだと思います。全部がうまくいくわけじゃなくて、何かの錯覚とか勘違いとか、何かの鬱憤で生まれたとかそういうタイミングで生まれるのがカルチャーだと思います
こういうことがあったとか、疑問が生じた時は必ず理由があるんですよ。だから雑学が止まらないです。

 ──疑問が生じた瞬間にインターネットで調べたりするのでしょうか?

pavilion いやすぐにインターネットで調べないようにしています。すぐ答えがわかってしまうので。まず過程を熟考して、なるべく書物で調べて、ギブアップになった時にネットに頼ります。そうしたら調べていく中でまた色んな疑問が生まれてくるからすごい面白い。先ほども言いましたけど、ずっと裕福で満足だったら多分何もしないと思うんですよ。だから何かしら欠けてるときとかバランス悪い時とかズレがある時にカルチャーは生まれると思います。そのズレを探すのがめちゃくちゃ好きですね。

 ──ありがとうございました。

取材 Nozomi Tanaka
構成 Ryo Mizuguchi
撮影 Shotaro Charlie Ohno, Keisuke Minami, Ryo Mizuguchi

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